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2001/04/10 産経新聞朝刊
【主張】三重県教組 返還がなぜ「寄付」なのか
 
 三重県の学校教職員が勤務時間中に組合活動を行っていた問題で、過払い給与約十億円を「寄付」名目で返還することに、同県教職員組合(三教組)と県教委が合意した。返さないよりはよいが、不当利得の返還がなぜ「寄付」になるのか疑問が残る。
 この問題は一昨年秋に表面化した。県教委が約三年間さかのぼって調査した結果、全教職員の半数以上が勤務時間中に正式な手続きをとらずに組合活動を行い、不正勤務の総計は六十一万時間に達した。その間、支払われた給与がどう扱われるかが焦点だった。
 当初、県教委は約十億円の全額返還を求めたが、組合側が強硬に拒否したため、(1)「寄付」という形で返還する(2)県教委も寄付金を一部負担する(3)地方公務員法違反には問わない−という折衷案を示し、これに組合側も同意したというのが実情である。
 三重県の公立学校の教職員は八割以上が日教組傘下の三教組に属する。平成七年に現在の北川正恭知事の県政が誕生するまでは、三教組などの推薦を受けた革新色の強い知事の県政が六期二十三年間続き、勤務時間中の組合活動を校長らも黙認していた実態がある。この経緯から、県教委が過払い給与の一部を負担するのは理解できる。
 しかし、寄付という形は、たとえそれが教育振興のためであっても、にわかに納得できない。組合の強硬姿勢を前に、現実的な解決を目指したのかもしれないが、安易な妥協策という面は否定できない。公立学校の先生の給与は、国と地方自治体が半分ずつ賄っている。その税金が不当に支出されていたのであれば、いったんは国と自治体に返すのが筋ではないか。
 地方公務員法違反に問わない−という措置も問題だ。組合幹部の中には、平日の午後ほとんど授業に出てこない教員も多かったという。校長に連絡せずに学校を離れるのは、同法三五条の職務専念義務に違反し、それが度重なれば当然、処分されるべきだ。
 勤務時間中の組合活動は多くの自治体で問題になっているが、今回の三重県方式を前例にしてはならない。ただ、同県でこの問題が発覚して以降、組合員が勝手に学校を離れることが少なくなり、授業と組合活動のけじめが徐々についてきたことは進歩である。


 
 
 
 
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