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2000/02/27 産経新聞朝刊
【主張】卒業式 自然に粛々とすすめよう
 
 日の丸を国旗、君が代を国歌とする国旗国歌法の成立後、初の卒業式シーズンを迎える。法制化により、国旗・国歌の指導のあり方が大きく変わったわけではない。校長は気負わず、おもねらず、従来通りの学習指導要領に沿った毅然とした指導を行うべきだ。
 昨年から今年にかけ、問題を抱えていた学校や地域も、おおむね正常化に向かっている。毎年のように校長と生徒会が対立していた埼玉県立所沢高校では、日の丸・君が代に反対する生徒会決議が九年ぶりに廃止された。昨春、校長が教育委員会と教職員組合の板ばさみに悩んで自殺した広島県でも、県教委の粘り強い指導で校長たちが自信を取り戻しつつある。
 一月下旬、金沢市で開かれた日教組教研集会でも、委員長のあいさつは日の丸・君が代問題に触れず、暗に組合員の自制を求めているように思えた。一部に、今春の卒業式を日の丸・君が代反対闘争の正念場ととらえ、身構えている単組もみられたが、もうそのような時代ではない。
 二十一世紀は科学技術や経済など、世界的な競争が一層激しくなる。日本人としてのアイデンティティーを確立しながら、その競争社会を生き抜き、国際貢献も求められる時代である。子供たちが将来、そのような国際社会で活躍するためには、外国の国旗と国歌に敬意をはらう態度が大切なことはいうまでもない。逆にいえば、日本の国旗や国歌を知らず敬意もはらわぬ日本人がいたら、外国人の目には奇妙に映るだろう。
 国旗国歌法には、指導要領だけでなく、成文法によっても校長の指導を支え、広島のような悲劇を二度と繰り返してはならないというねらいがある。また、法制化を機に、子供たちが日本の歴史と文化の伝統に誇りをもち、同時に外国の歴史と文化にも理解を示せるような心豊かな人間に育ってほしいという願いもある。
 従って、卒業式と入学式の当日、形だけの国旗掲揚と国歌斉唱を実施すればよいというものではない。昨春、反対グループに気兼ねし、会場以外の校長室などに日の丸を掲げ、君が代のテープだけを流す学校もあったが、それでは実施したことにならない。
 ふだんの社会科や音楽の授業で、国旗、国歌について教える。そして卒業・入学式では、児童・生徒が自然な気持ちで日の丸を仰ぎ、保護者や教職員とともに君が代を歌う。こうした国旗掲揚、国歌斉唱は行事のさい、どこの国でもみられる普通の光景であり、全体主義とも軍国主義とも関係がない。これまでが異常だったのである。


 
 
 
 
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