教育現場での組合支配が問題になっている広島県で、また労使の癒着が明るみに出た。組合活動で学校を離れても出勤扱いとなる“破り年休”といわれる慣行である。長年の慣れが教師としての職責意識や倫理観をここまでマヒさせたといえる。
県議会で明らかになったところによると、同県高等学校教職員組合(広高教組)などの分会長や書記長ら幹部が勤務時間中に組合の会議などに出席する際、校長や教頭にいったん有給休暇願にあたる年休届を出し、備考欄に「組合出張」などと書いておけば、後日、年休届が返却され、出勤として扱われるという。
組合出張はとても公務とは認められまい。勤務時間中なら年休を消化して行うべきだし、それがいやなら、組合の会議を勤務時間後にずらすべきだ。しかも、広島県では組合出張の間、代わりの先生に授業を頼むなどの手当てをしていないケースも多いという。肝心の授業をなおざりにして組合活動を行うなど、教師として許される行為ではない。
広高教組など同県の日教組系組合は今春、卒業式での国旗掲揚・国歌斉唱に対する組織的な抵抗を繰り返し、それが県立世羅高校の校長を自殺に追い込んだ一因ともいわれる。「日の丸・君が代の強制に反対」「県教委の職務命令が校長を死に追いやった」などと自己主張する前に、少しは自分たちの行動を反省したらどうか。
県教委は現在、“破り年休”について各校長から聞き取り調査を行っているという。広島県ではこれまでも、(1)組合が教員人事に介入することを許す校長との“人事念書”の存在(2)授業中に有料の進学指導模試「中国ブロックテスト」を行い、組合員教師がアルバイト料を稼いでいた実態−など労使癒着の悪慣行が次々と明るみに出た。この際、長年のウミを一気にしぼり出すべく徹底した調査を行うべきだ。
広島県だけの問題ではない。東京都では、勤務・休憩時間に関する“東京都方式”といわれる労使間の了解事項があり、先生の午後四時の帰宅が許されている。他の自治体の教育委員会や文部省も、こうした悪慣行をチェックしてほしい。
公務員の中でも教員は昭和四十九年の人材確保法により、手厚い処遇を受けている。しかし、それに甘えてはいけない。教師という職業は、次代の日本を支える子供たちの教育という大切な使命を担っている。そのためには、何よりも授業を最優先すべきである。“破り年休”などといった姑息なやり方は、教師にふさわしくない。
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。