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1999/05/20 産経新聞朝刊
【主張】教育再興ネット 首都から改革のうねりを
 
 「徳目の充実」などを掲げる石原慎太郎・東京都知事の教育政策を支援する都民組織「東京教育再興ネットワーク」が発足する。東京だけでなく、日本全体を視野に入れ、戦後教育を根本から見直すような思い切った提言を期待したい。
 同ネットワークは(1)親孝行や夫婦愛などをはぐくむ道徳教育(2)日本の歴史の正しい伝承などによる健全な愛国心の育成(3)男女が互いの特長を尊重しあう正しい男女観の確立−など七本の柱を掲げている。戦後教育がなおざりにしてきたものが多い。
 道徳の時間は昭和三十三年から週一時間、設けられるようになったが、日教組の反対闘争の後遺症もあって形がい化している。戦前の家族制度を否定するあまり、普通の家族愛や欧米で一般的な「家族の価値(ファミリー・バリュー)」まで希薄になり、それが親の乳幼児虐待や子供の家庭内暴力にもつながっている。
 男女平等にしても、最近は「男らしさ」「女らしさ」まで否定する過激なフェミニズムが教育現場に浸透している。東京都の外郭団体「東京女性財団」が学校向けに発行した冊子やビデオによると、「男のくせに泣くな」「女なのだから気配りを」という指導は“前世紀の遺物”とされ、男女混合の出席簿や運動会を推奨する。男女の区別と差別を混同した考え方である。
 ほかにも、「自由」や「平和」など戦後民主主義の理念をはき違えた偏向教育が多くの学校で行われていることは、本紙の昨年の「教育再興」シリーズでも指摘してきたとおりだ。
 石原知事は「徳目の教育を東京こそが、率先して始めるべきだ」と言っている。そこには、首都・東京の教育を変えることによって国の教育も変えたい−という狙いがある。ネットワークには、かつて「戦後教育の総決算」を目指した臨時教育審議会(臨教審)の元メンバーらも代表委員として参加している。石原都政の下で、臨教審が積み残した課題を再検討してみることも必要ではないか。
 東京以外では、今春、校長が日の丸・君が代問題を苦に自殺するという悲劇的な事態を招いた広島県で、公教育の是正に取り組む県民ネットワーク「広島県教育会議」が設立された。大阪府では、児童・生徒の保護者らで組織する「大阪の教育を正す府民の会」が独自に卒業式での国旗掲揚、国歌斉唱の実態調査を行い、教育委員会に報告された数字と実態がかけ離れていることを指摘した。こうした地方の民間組織とも連携すれば、大きなうねりとなるはずだ。


 
 
 
 
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