教育改革の一つの手順がようやく示された。中央教育審議会の一次答申は「ゆとり」のなかで「生きる力」をはぐくむことを教育の基本にするという考えに立ち、二十一世紀初頭をめどに学校五日制の完全実施を目指すべきであると提言した。これを受けて文部省は実現に向けた作業に着手するが、教育内容の厳選が一番の大仕事だ。現行教科の厳選にとどまらず、教科の統廃合を含めた教科構成などの再編に踏み込んでもらいたい。
教科はまず、学問の進歩や社会の変化に応じて柔軟に組み替えることが大事だ。戦後五十年間、教科構成は基本的には変わっていないが、学問の世界は「知識爆発の時代」といわれるように、さまざまな知識や技術のほか、新たな学問領域も生まれた。また、社会の動きも激しい。こうした状況に対応する教科の枠組みはどうあるべきか。国際理解、情報、環境、ボランティアなどについて、答申は「総合学習の時間」での学習を提言しているが、全体の教科構成の観点からとらえ直す必要があるのではないか。
情報化の進展で多くの知識がメディアによってもたらされるようになり、知識伝達は学校の独壇場でなくなった。学校に求められる役割も判断力や思考力、学ぶ意欲などの育成が中心になる。こうした視点からも教科のあり方を考える必要がある。それは「生きる力」をはぐくむ教科構成に通じる。
教科構成については、国立教育研究所などで調査・研究が進められ、文部省の研究開発校でも「総合科」「記号科」「環境科」「人間科」「表現科」など新教科を含む教科の枠組み再編の試みが見られる。教育課程審議会の役割は重大だ。現行教科の存続と時間数確保にこだわる「教科エゴ」を排して教科などの抜本再編に取り組んでもらいたい。常設委員会も速やかに発足させ、強力な体制で臨んでほしい。
五日制の完全実施までの間をどうするかという問題も重要だ。土曜休業分の授業を他曜日に上乗せする学校が少なくないのが現状で、ゆとりが生まれるどころか、多忙感を募らせる子供や教師が目立つ。こうした状況を克服するには、現行学習指導要領の弾力的運用が欠かせない。これに限らず教育の規制緩和は現場の創意工夫、活性化につながるはずだ。もっとも現場も「指示待ち」から抜け出す必要がある。
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