いまの月一回でも、休みで減った授業時間をどこで確保するかで頭を痛めている学校が少なくない。二回ともなれば、やりくり算段は大変だろう。研究協力校の報告でも、他の曜日への授業上乗せをした学校が多い。上乗せや行事削減に頼らない教育課程の運用こそが筋ではないか。授業の枠どりに現場の努力の大半が割かれるのはちょっと寂しい。これでは、五日制の目指す新しい学校像が見えてこない。
日本の学校五日制は、ゆとりある生活の中で個性と創造性豊かな子供を育てよう、という教育改革の観点から導入された。その使命は学校依存の度合いを弱め、子供の生活時間のうち、家庭、地域での時間の比重を高めるとともに、学校、家庭、地域の三者がそれぞれの持ち味を生かした教育力を発揮することである。したがって五日制の推進は学校はもちろん、家庭、地域社会、企業社会に変革をもたらすものでなければならない。
月一回だけの五日制でも家庭や地域の風景に変化が見られる。親子の共通体験や対話が増えた。年齢を超えた交わりや行事が目立つようになった。家庭も地域もわれ関せずの「会社人間」の時代は終わり、人々の目が家庭、地域にも向けられはじめた。五日制で家庭、地域の教育力がよみがえる兆しと見ていいだろう。
学校はどうだろうか。知識の量より思考力、判断力を重視する「新学力観」に立つ教育が定着へ向かっている。しかし、体験・問題解決型学習は、知識伝達型授業に比べて時間増になりがちだ。そこへもってきて、五日制拡大で授業時間を減らすとなると、十分な教育効果が望めるだろうか。
教育内容の精選が不可欠である。わたしたちはこれまでも度々、文部省が教育課程の抜本見直し作業に着手するよう主張してきた。何を教え、何を捨てるかは生易しい作業ではない。だが、社会や価値観の変化に応じて学問の世界もリストラの波に洗われている。こうした学問領域の再編に合わせた教育課程の見直しが求められる。
学習指導要領の改訂はこれまで、ほぼ十年ごとに行われてきたが、これにこだわる理由はない。社会変化に対応し、先を見通した教育を目指す以上、改訂作業を急ぐのは当然ではないか。文部省は来年から準備に入る方針のようだが、テンポを速めてもらいたい。
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