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2002/12/24 読売新聞朝刊
[社説]教員評価制度 資質向上と学校活性化につなげ
 
 戦後教育の見直しが、ここでも進んでいる。
 教員の指導力、実績などを校長や教育委員会がチェックし、昇給などに反映させる「教員評価制度」が広がりつつある。
 東京都は二〇〇〇年度から、この制度を導入している。授業のあり方や生活指導、進路指導などについて、各教員に達成目標を申告させ、五段階の業績評価をしている。評価の高い教員は、昇給期間短縮などの処遇を受けている。
 来年度からは、校長、教頭だけが評価していたのを改め、教務、生活指導、進路指導主任も評価担当者にする。
 大阪府教委も先月、教員の自己申告とそれに基づく校長の指導・助言制度を試験的に始めた。来年度からはさらに多くの自治体で、教員評価制度を導入する動きがある。
 的確な判断のできる評価制度を確立し教員の資質向上と学校運営の活性化につないでいくことを期待したい。
 問題は、多くの自治体で、この制度が指導・助言の方策にとどまっていることだ。昇給の判定を含む人事考課とすることに教組の反対が強いためだが、指導・助言だけでは目的は達せられない。
 一九五〇年代後半、教員の勤務評定は日教組の激しい反対を受けた。いわゆる勤評反対闘争である。
 勤評とともに当時、教育界の争点だった全国学力テストは今年、学力低下論議の中で形を変えて実施された。やはり反対の強かった道徳の時間も、定着しつつある。教員評価だけがタブーとして残り、すべての教員を同列に扱う人事考課がまかり通ってきた。
 その結果、教員給与は勤続年数だけを基準とするものとなり、教員の世界には悪平等主義がはびこった。独創的な教育実践を他の教員が妨げる、陰湿な雰囲気も生んだ。
 教員評価の不在は、戦後教育の負の遺産とも言える。それを改め、教員が能力実績に基づいて正しく評価、処遇される制度の導入を急ぐべきである。
 教員評価には「学校に競争が持ち込まれると、教員が協力し合えない」などの反対意見がある。「反対のための反対」と言わざるを得ない。
 制度の導入によって、自分のことだけ考え、協力しない教員は、厳しく評価されることになる。チームティーチングなど、教員の共同作業が求められるから、なおさらだ。
 校長のリーダーシップの下に学校の方針を定め、教員がそれぞれの役割を果たす。その業績を正しく評価し、人事考課に結びつける。当然のことである。

 
 
 
 
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