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2002/04/20 読売新聞朝刊
[社説]中教審報告 「奉仕活動」の明確な位置付けを
 
 教育改革国民会議の提言が骨抜きにされかねない。
 青少年の「奉仕・体験活動」の推進方策について中教審がまとめた中間報告のことだ。
 様々な奉仕・体験活動に参加することによって、青少年は社会の構成員としての規範意識や他人を思いやる心を培える、と強調している。入試で活動体験を評価することや、多彩なプログラムの開発を求めている。
 だが、これで学校の活動が活発になるとは期待できない。活動を学校教育にどう位置付けるのか、あいまいなままだからだ。求めている方策も、すでに実施されている成功例の後追いが多い。
 中教審は最終報告で、奉仕活動がすべての学校にとって必須の課題であることを明確にし、推進のための具体的な制度整備策を提言すべきである。
 学校教育の一環としての奉仕活動は二〇〇〇年十二月、首相の私的諮問機関である教育改革国民会議が打ち出した。
 小・中学校では二週間、高校では一か月、共同生活などによる奉仕活動を行うことを求めた。十八歳後の青年が一定期間、様々な分野で奉仕活動を行うことも検討課題とした。
 中間報告には、そうした実施期間などは記されていない。
 国民会議の提言に「奉仕活動の義務化は、特定の価値観の押しつけになる」とかつての道徳教育反対論とも通底する反発があったためだ。昨年の学校教育法改正で、すでに活動は学校の「努力目標」にトーンダウンされている。
 ボランティア活動には個人の自発性が尊重される。奉仕活動では社会に貢献する意識が重視される。だが、ボランティアの自発性も、家庭や地域、学校などの幅広い教育によって育てられる。
 自発的に活動に参加する「内なる義務感」を子どもたちに育てることは、学校の責務でもある。そのことを忘れてはならない。
 子どもたちに社会性、規範性を育てることは先進諸国共通の課題だ。
 イギリスでは九月から、「シティズンシップ(市民精神)」が中学生の必修科目になる。
 移民による文化の多様性を受け、「同じ市民」としての感覚を養うことなどが目的とされ、様々な体験活動もそこに明確に位置付けられている。これを「押しつけ」とは言えない。
 子どもたちに公共的な感覚を育てる手立てを尽くさねばならない。学校での取り組みが不十分であれば、学習指導要領を改訂し、奉仕活動を教育課程に規定することも視野に入れるべきである。

 
 
 
 
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