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2002/03/22 読売新聞朝刊
[社説]新指導要領 考える力育てる教育の道筋示せ
 
 不安と戸惑いを抱えたままの船出だ。
 新しい学習指導要領が新学期から、全国の小、中学校で実施される。
 毎週土曜日を休みにする完全五日制と一体で、教える内容は三割削減される。代わりに、体験学習を重視した総合的な学習の時間が設けられる。
 「自ら学び、考える力」を育てるのが狙いだ。だが、学力低下を招くのではないか、との懸念が示されている。
 考える力が大切なことを否定する人はいない。肝心なのはその道筋だ。
 文部科学省はこれまで、子供の関心、意欲、態度を、知識、理解より重視する「新学力観」を学校教育の中心に据えてきた。受験のための知識詰め込みから転換を図る狙いがあった。それが、体系的な学習を軽んじる風潮も生んだ。
 学力低下の批判を受け、文科省は実施直前になって、宿題や補習の実施を学校に求めるアピールを発表した。そのこと自体、問題の深刻さを示している。
 同省はまた、要領は「教えるべき最低基準」との見解も示した。伸びる子には要領の範囲を超えて教えることができるようになった。
 その一方で、私立の小中高校に完全五日制実施を求める通知を出した。完全五日制を実施する私立校が55%にとどまるためだ。同省のぶれの大きさを示すとともに、定見を疑わせる。
 同省がなすべきは、子供に基礎学力を身につけさせ、その基盤の上に考える力を構築する方向を示すことだ。
 公立の高校でも土曜補習をする動きが進学校を中心に広がっている。授業時間が長ければ学力がつくというものでもないが、親や子に様々な選択の道が開かれていることが望ましい。
 指導要領を最低基準としたことは、進度の遅い子も要領のレベルに引き上げねばならないことも意味する。習熟度別などの手厚い授業が必要だ。それが「塾へ行けない子はどうなる」という、保護者の不安を払拭(ふっしょく)することにつながる。
 基礎学力の重視が、詰め込みばかりの一斉授業への回帰であってはならない。大切なのは、これまでの「ゆとり」教育が、ただ理念に流れていたのを見直し、地域の実情や子供一人ひとりに合った授業の工夫を重ねることだ。
 「考える力」を測るペーパーテストの開発、ただ体験に終わらない総合的学習の実現など、なすべきことは多い。
 要領が最低基準となったことで、教科書を超える独自教材の作成など、自治体独自の施策も次々に打ち出された。そうした新しい芽を大切にしたい。

 
 
 
 
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