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2002/02/03 読売新聞朝刊
[社説]習熟度別学習 誤った平等主義からの脱却を
 
 子どもたちの学力に応じた習熟度別学習を、小中学校に導入するかどうか。
 宮崎市で先週行われた日教組教研集会における最大の論争点だった。
 教研では、主要教科の授業を少人数で行う実践報告が多かった。しかし、単に名簿順にクラスを割るだけで、学力に応じたクラス分けは少数派だった。
 「子どもに優越感や劣等感を生む」のが習熟度別否定の理由だ。誤った平等主義と言わざるを得ない。
 導入に踏み切った教員からの報告も、教研であった。習熟度別の否定論は実体験に基づかない思い込みであるとして、「工夫すれば問題は起きない」と訴え、論議になった。
 子どもの学力問題に取り組むには、習熟度別学習は避けて通れない。
 各種の国際学力調査によると、日本の子どもは平均点は高いものの、最上位の層が目立って少ない。これでは、「知の競争時代」を生き抜けない。
 授業時間、教科内容を削減して四月から実施される新学習指導要領に批判が寄せられ、文部科学省はできる子には発展的な学習を指導するよう求めている。
 学習の遅れている子にも、習熟度別によって手厚い指導が可能になる。
 教員が習熟度別導入をためらう背景には戦後長い間、「生徒に差をつけてはいけない」とされていたことがある。
 同省が習熟度別導入の方針を打ち出す度に、日教組は「能力主義にもとづく」とか「差別、選別の教育を進める」との反対声明を出してきた。
 学力の差を認めない教育観は、評価の否定にもつながった。学習指導要録に一律に「特記事項なし」とゴム印を押す地域すらあった。
 子どもは学ぶ機会を平等に与えられねばならない。しかし、数学などの体系的な教科は、学年が上がるにつれ理解度の差は大きくなる。子どもの差を正しくとらえ、それぞれに合った授業をしてこそ、個人の違いを尊重した教育となる。
 教育の機会の平等は結果の平等とは異なることを、認めるべきだ。
 習熟度別学習が定着しているイギリスでは、全国一斉テストも数学などでは、同じ学年でレベルの違う五段階もの出題がされている。
 習熟度別をタブー視するのでなく、実施教科や時期、できない子への授業のあり方などの研究と体制作りに取り組まねばならない。どのクラスで学ぶか、生徒に選ばせることがあってもよい。
 教育観を見直す時期を迎えている。日教組にも方向転換が求められる。

 
 
 
 
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