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1998/08/08 読売新聞朝刊
[社説]子どもの居場所のある学校を
 
 子供が減り続ける中で、不登校(登校拒否)の増加傾向には、一向に歯止めがかからない。文部省の学校基本調査によると、九七年度の小中学校の不登校が、初めて十万人の大台を超えた。
 特に中学校の場合、その数(約八万五千人)といい、全生徒に占める割合(1・89%)といい、高校中退に迫る勢いだ。
 この事態は重く受け止めなければならない。おおげさに言えば、義務教育にほころびが生じつつあることを意味する。
 不登校の態様やタイプは、昨今、きわめて多様になってきた。
 学校に行こうと思うのだが、当日になると行けない者、ひいては、そのまま閉じこもるタイプもいる。学校での小さなトラブルや、いじめがひきがねになる者もいる。増加傾向につれて「明るい不登校」と呼ばれるタイプも指摘されている。
 その要因も、家庭や学校のありよう、社会の風潮、本人自身の問題などが複雑に重なり合っていて、ひと言ではくくれない。従って「特効薬」は見いだし難い。
 それぞれの立場で、でき得ること、なすべきことを考え、小さな揺さぶりをかけることで解決につなげていきたい。
 不登校は、少子化傾向とも無関係ではない。家族の中の兄弟だけでなく、いとこもおじ・おばも少なくなっている。近所の遊び仲間も減ってきた。
 その上、生活体験や自然体験、社会体験も不足気味だから、本来、人間関係の中でもまれたりする中で身につく「生きる知恵と力」を弱めている感がする。
 不登校の子を対象にした野外キャンプなどで「自分たちのことは自分たちでやる」経験をした結果、学校に行き始める例が少なくない。一つのヒントだろう。
 今の学校システムに問題はないか。その視点の方がもっと重要だ。
 不登校のことを、教育界では「学校不適応現象」と呼ぶ。子供の側が学校に適応できないことを言う。だが、ひるがえって見ると、逆に学校の方が、多様化した子供の変化に適応できていない側面があることも否めないのではないか。
 「個性の重視」や「個に応じた指導」を口では言いつつ、横並びや集団への順応を優先させる傾向がまだ見られる。反面「主体性を尊重する」姿勢が、実は自分勝手を許すことにつながったりもする。バランスの取れた指導が必要だろう。
 今、戦後最大とも言える教育改革が進められようとしている。
 新しい教育課程の基準では、「生きる力と豊かな人間性・社会性」を軸に、選択を拡大し、教科の枠を超えた「総合的な学習の時間」が新設される。
 これらの実践を通じて新基準の言う「特色のある学校」の実現を目指したい。そしてさまざまなタイプの学校から、親や子供が選択する。そうすれば、不登校の子供たちの居場所作りにもつながるはずだ。
 通信制や単位制高校、民間のフリースペースなどに、不登校の子が意欲的に通っている事実には、学ぶべきものが多い。

 
 
 
 
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