最近問題になる「大学生の学力低下」。大学入試センターが国立大の教官に行ったアンケートでも6割が、新入生の論理的思考力、理解力、表現力が「低下している」「やや低下している」と回答した。ホントのところはどうなのか? 毎日新聞大阪、東京の夕刊編集室が京阪神と首都圏のキャンパス周辺で実態調査してみた。【高橋慶浩、國枝すみれ】
表の問題は夕刊編集室が作成した。最近の学生は数学、国語、生物が苦手と聞くので、分数計算、四文字熟語、中学・高校で教わる生物問題を交ぜてある。対象にしたのは東京6大学(東京、早稲田、慶応、法政、明治、立教)と京阪神の7大学(京都、同志社、立命館、大阪、関西、関西学院、神戸)の学部生各10人。学生のたまり場などで協力者を募ったため、学生の成績=大学の平均レベルではないことを理解していただきたい、念のため。
世界の人口は1億3000万人(関西)から800億人(同)と幅広い誤答があった。それならと源氏物語の帖数に目を向けたが、こちらも12(関学)から113(京都)までとかなりの幅がある。
「紅葉狩り」は「もみじ拾い」(慶応)。「子知らず」は「親の苦労」「親の背」。「親の恥」(立教)という答えも、気持ちは分かる。信長を殺したのは「豊臣秀吉」(同志社)の珍答もあるが、「明智五郎」(関西)って一体だれ?
プラザ合意で冷戦終結(立教)、NATOは国際連合軍(明治)、雪国の作者は井上靖(東京)▽志賀直哉(大阪)▽高村光太郎(神戸)。モナリザを描いたのはミケランジェロ(早稲田)ならまだ許せるが、ロダン(立命館)やミロ(神戸)まで登場する。それは彫刻!
中国の国家主席は毛沢東(大阪)▽李登輝(神戸)▽金正日(関西)の名が。東京裁判は「国連が東条英機を裁いた」(法政)「天皇が東条英機を裁いた」(早稲田)などの回答が出た。「最高裁判所が……」と言いかけたある学生はこちらの顔が凍りついたのを見て、その先を言うのをやめた。あらを探せばキリがない。
大半は気軽に応じてくれたが「そうやってマスコミは大学生をバカにするんでしょ」と猛烈に反論された上に断られるケースがあった。なるほど、試された上に批判されるだけでは面白くない。そこで協力してくれた京阪神の学生70人に、学力低下への意見をじっくり話してもらった。
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