給食に出たニンジンなどを教師に投げつけ「ナイフじゃなくて良かったな」と毒づく。教室でいすや机を投げ合い、教師が入ると「何しに来たんや、出ていけ」――。24日閉幕した日教組の教育研究全国集会で、小学校での「学級崩壊」の実態が生々しく報告された。精神的に追い込まれ体に変調をきたす教師、苦闘の末に克服した教師。新たな課題への取り組みは始まったばかりだ。【岡崎康次、伊地知克介、神谷素生】
「学級崩壊には活動型と無行動型がある。活動型は騒がしいのですぐ分かるが、怖いのは静かに進行する無行動型だ」。大阪府の小学校教師の問題提起に「うちにもある」などの声が相次いだ。表面的には静かで一見問題はないが、積極的にだれも授業中に発言せず、子供同士の関心も薄い。「担任が、おとなしくていいクラスだ、と思ってしまうだけ問題は深刻だ」との指摘も。
石川県の女性教師は「学級は表面上、問題はないが、日直の子に黒板を消して、と言うと『したくないからしない』と言われた。当たり前と感じてきたことが壊れてしまう恐怖を感じた」と話した。
学級崩壊したクラスの担任教師の多くが校長や他の教師に状況を話し、協力を得ていた。しかし福島県の男性教師は「授業が成立していないことを、他の教師が半年も知らなかったケースがあった」と報告した。小学校は、担任が大半の授業を担当するため“学級王国”と呼ばれるが、それがマイナスに作用して、校内でも実態が見えにくい現実を示した。
一方で、他の教師との連携の困難さを訴える声も多く出た。長崎県の女性教師は「よく騒ぐクラスを担当しているが、相談を持ち掛けても、教頭が職員会議で頭ごなしに怒るだけ」と、孤立しがちな教師の姿を報告。「学級崩壊の前に職員室(の人間関係)が崩壊しているのではないか」という意見に、参加した教師の多くがうなずいた。
学級崩壊を食い止めた成功例からは、いくつかの共通項が浮かび上がった。授業にならない時は無理に続けず、思い切ってみんなで校庭に出て遊ぶ▽荒れている子供をしかるのではなく、まず良い点をほめ、認められているという安心感を子供に与える――などだ。
特に「遊び」の重要性に注目が集まった。「今、集団での遊びの場は学校以外にない。都会だけでなく地方でも、子供たちは塾通いやコンピューターゲームなどに忙しく、地域で遊ばない」などの指摘があり、崩壊を克服した東北地方の女性教師は「集団遊びの中で子供は『ルールがないと面白くない』と学んでくれた」と体験を披露した。
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