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1998/12/20 毎日新聞朝刊
教育改革、「新学習指導要領」7割が賛成――毎日新聞本社・世論調査
 
◇「ゆとり生まれる」と評価−−小中学校
◇通学区自由化案も「支持」増え50%に
 毎日新聞は今月上旬、「新学習指導要領」と、教育改革にからんで論議されている「大学入試の資格試験化案」「公立小、中学校の通学区自由化案」の3項目について全国世論調査(面接)をした。学習内容を大幅に減らす新学習指導要領については賛成派が7割を占め、多くの人が子供にゆとりある学校生活や基礎学力の充実を望んでいることを示した。また、通学区自由化は5割が支持、反対を上回った。
 新学習指導要領は、学校完全週5日制導入に合わせ2002年度から小、中学校(高校は2003年度から)で実施される。学習内容を3割程度削減して基礎・基本学習を重視し、各学校が独自に内容を決めて体験学習などをする「総合的な学習の時間」を創設する。
 世論調査結果では、「賛成」と「どちらかといえば賛成」の賛成派が計71%に達し、「反対」「どちらかといえば反対」の反対派は計25%にとどまった。
 賛成派に複数回答で理由を聞くと、「子供にゆとりが生まれる」が69%とトップで、「基礎を繰り返し学力が伸びる」の43%が続いた。一方、反対派は「受験のための塾通いが増える」が50%、「学力が落ち、人材育成に不安」が48%と学力低下や学校外での受験競争過熱につながることを主な理由にしている。基礎学力試験をパスするなどして一定の条件を満たせば志望大学に入る資格を与え、卒業は厳しくするという「大学入試資格試験化案」と、公立小、中学校も通学先を選べるようにする「通学区自由化案」については、政府の規制緩和策検討などの中で論議されてきた。毎日新聞は1996年12月にもこの2項目について同様の世論調査をした。
 今回、資格試験化は、賛成派が84%で前回を3ポイント上回り、大半の支持を得た。
 また通学区自由化は、賛成派が前回より6ポイント高い計50%になって反対派(計46%)を抑え、前回と逆転して賛成派が上回った。
 【教育取材班】
 
◇改革に向け審議中
 大学入試改革では、中央教育審議会と大学審議会が「1点刻みで受験生をふるいにかける」と批判の強い大学入試センター試験などについて審議を始め、学力評価方法の転換を模索している。また大学審は今秋、「大学卒業認定の厳格化」を求める答申を出した。
 公立の通学区について、文部省は、線引きを緩和する方向を打ち出している。
 
◇質問と回答◇
 数字は%、複数回答の合計は100%を超える。その他、無回答は省略。
 
◆a)2002年度から従来の知識偏重の教育を転換するため学習指導要領が改まり、子供の学習内容が大幅に減ります。あなたは賛成ですか、反対ですか。  
賛成 39
どちらかといえば賛成 32
どちらかといえば反対 19
反対 6
◆<a)で「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた方だけに>その理由は何ですか。(二つまで)  
子供にゆとりが生まれる 69
授業についていけない子供が減る 35
教師にゆとりが生まれる 18
基礎を繰り返し勉強することによって学力が伸びる 43
入試問題もやさしくなり、受験勉強が緩和される 13
◆<a)で「どちらかといえば反対」「反対」と答えた方だけに>その理由は何ですか。(二つまで)  
子供の学力が落ち、将来の人材育成に不安がある 48
公立と有名受験校の私立の学力格差が広がる 25
受験学力をつけるため塾通いがますます増える 50
勉強が得意な子には授業が退屈になり、学校離れが進む 21
努力する子が減る 31
◆基礎的な学力を試す資格試験にパスするなど一定の条件を満たせば、だれでも志望大学に入れるようにし、その代わり卒業は厳しくするという大学入試改革案があります。あなたはこの改革案に賛成ですか、反対ですか。  
賛成 52
どちらかといえば賛成 32
どちらかといえば反対 8
反対 5
◆a)居住地によって通う学校を指定されている公立の小、中学校の学区制をなくし、学校を自由に選べるようにしたらよいという意見について、あなたは賛成ですか、反対ですか。  
賛成 31
どちらかといえば賛成 19
どちらかといえば反対 29
反対 17
◆<a)で「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた方だけに>その理由は何ですか。(二つまで)  
今のままでは公立の不人気が続き、私立受験が過熱する 21
公立校も学校の特徴を磨くようになる 56
教師が教育熱心になる 25
子供にやる気が出る 44
登校拒否が減る 24
◆<a)で「どちらかといえば反対」「反対」と答えた方だけに>その理由は何ですか。(二つまで)  
学校現場が混乱する 29
学校の格差がますます広がる 58
「不人気校」が荒れ、教育できなくなる 26
子供に通学の負担が増える 35
経済的余裕のある家庭の子供が有利になり、不平等になる 36
 
◇調査の方法 12月4日から6日までの3日間、「層別多段無作為抽出方法」で選んだ全国の有権者2010人を対象に調査員が直接面接して聞いた。回収率は71%。


 
 
 
 
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