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1996/08/08 毎日新聞朝刊
[特集]データは語る・日本の学校はいま――96年度・学校基本調査(その2)
 
◇不登校の増加 急がれる「弾力化」−−高校総合学科の導入柱に
●「学校嫌い」●
 単線から複々線へ。あるいは引き込み線から再び本線へ――。「学校は行くべきところ」という考え方が時には子供たちに大きな負担になる。「学校に固執した教育システムを改め、やり直しが可能な道を用意すべきだ」との指摘も少なくない。
 不登校(登校拒否)の児童、生徒の増加傾向はさらに進んだ。「学校嫌い」の理由で昨年度、30日以上欠席した小、中学生が過去最高を記録。このうち、50日以上の欠席者をみても85年度に比べ、小学生は約3倍、中学生は約2倍に増えている。特に、中学生は21年連続の増加だ。
 当初、これは例外的な問題とみがちだった文部省は「どの子にも起こりうる問題」と認識を改め、92年9月、公立の適応指導教室や民間のフリースクールなどに通う不登校児童・生徒の出席扱いを学校長判断で認めるよう通知した。
 全国に適応指導教室は500カ所以上、民間施設は同省把握分だけで約300、実際には1000以上とみられるが、施設を「学校復帰を前提とする」(同省)と条件付けたため、各地方教委は「学校復帰を目指す指導をしていない」などの理由から通知の趣旨を生かしていないケースが多い。
 「いじめ」を重要課題に挙げた中教審は第1次答申で、中学校卒業程度認定試験を不登校の子供たちに弾力的に適用するよう提言した。重い病気や特別な事情で義務教育を受けられなかった人が対象の制度で、試験に通れば高校進学もできるシステムだ。「義務教育=学校教育」という価値観が揺らぐことになるが、教育改革の大きなポイントでもある。
 中教審、いじめの協力者会議が相次ぎ打ち出した「学校弾力化策」が現状を追随した要素が強いことは、実際のデータが雄弁に語っている。
 形がい化し、魅力を失いつつある現在の「学校」システムを打破しようという試みの一つが高校の総合学科だろう。文部省が「脱偏差値の高校改革の目玉」と位置付ける。普通科、専門(職業)学科に続く第3の学科で、高校改革の柱として新設が進んでいる。生徒自身で進路や興味に応じて科目を選択し、時間割を作る。94年度は7校に開設、96年度で29都府県45校に開設、生徒数は前年より9000人増え1万4000人に増えている。97年度はさらに10県が開設の準備を進めている。
 総合学科の背景には、9万6401人、全高校生の2%(94年度)にのぼる高校中退者数がある。その理由は(1)就職や転校、専門学校への入学など「進路変更」43・2%(2)学校や授業に興味が持てない「学校生活・学業不適応」26・9%が大半を占め、「生徒と進学先のミスマッチ」が目立つ。それだけに、中学卒業時点で「普通科か職業科か」の結論を出せない生徒が高校で進路を選択できる総合学科は、「不本意入学」をなくし、硬直した教育システムを打開する可能性がある。
 
◇「学校嫌い」を理由に年間30日以上欠席した児童生徒数◇
<注>カッコ内は全児童生徒中の比率(%)
 
年度 小学校 中学校
1991 1万2645(0.14) 5万4172(1.04)
92 1万3710(0.15) 5万8421(1.16)
93 1万4769(0.17) 6万0039(1.24)
94 1万5786(0.18) 6万1663(1.32)
95 1万6566(0.20) 6万4996(1.42)
 
◇学校の現況◇
 
  校数 在学者数 教員数
幼稚園 1万4790 179万8061 10万3518
小学校 2万4482 810万5628 42万5728
中学校 1万1269 452万7399 27万0964
高校 5496 454万7458 27万8874
盲学校 71 4442 3523
ろう学校 107 6999 4830
養護学校 797 7万4852 4万4372
高専 62 5万6396 4345
短大 598 47万2823 2万0294
大学 576 259万6679 13万9606
専修学校 3510 79万9968 3万7119
各種学校 2714 30万6684 1万5797
合計 6万4472 2329万7389 134万8970
(この記事にはグラフ「大学生(学部生)の地域別分布比率」「専門分野別の大学生(学部生)構成比」があります)


 
 
 
 
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