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1988/01/06 毎日新聞朝刊
文部省が「教育改革の推進−−現状と課題」をまとめて発表した
 
 文部省は五日、教育改革実施本部(本部長=中島文相)を同省内で開き、“教育改革白書”とも呼べる「教育改革の推進−−現状と課題」を初めてまとめ、公表した。これは、昨年夏に臨教審の最終答申を受けた同省が今後、取り組む教育改革の指針を行政当局として示したもので、臨教審答申の柱のひとつだった「生涯学習体系への移行」を最大課題と位置付けるとともに、学校も生涯学習の一機関と割り切り、学歴社会是正のために脱・学校中心教育の姿勢を鮮明にしている。この“教育改革白書”は、同省が約五年おきに出している「教育白書−−わが国の教育水準」の代わりに臨時刊行された。
 “白書”は臨教審の四次にわたる答申をベースにまとめられており、教育改革の基本方向を1)これまでの学校中心の教育体系から生涯学習体系への移行2)児童生徒の個性を尊重しつつ、「心」と「身体」の健康を確保・増進する教育環境の整備3)高等教育の充実と学術、特に基礎研究の振興4)情報化への対応、国際社会への貢献など時代の変化への適切な対応−−の四点に集約。中でも、文部省が新年度に社会教育局を生涯学習局へ改組して本格的に取り組むことにしている生涯学習体制づくりでは、具体的な課題として、民間教育事業と連携するための社会教育関連法令の見直し、高齢者の学習活動・社会参加の機会充実、家庭・地域社会の教育力の回復・活性化などを指摘。生涯を通じての自己啓発の成果が正当に評価される社会の形成を目標のひとつに掲げている。
 特に、学校教育の果たすべき役割については文部省としての改革の方向を明示。臨教審は、学校教育への過度の依存から生じる学歴社会の弊害をなくすために「学校教育の自己完結的な考え方からの脱却」(答申文)を提唱していたが、“白書”は、受験競争をあおる高校・大学の入試方法の改善の必要性を訴えるとともに「生涯学習の機会・場としては家庭、学校、地域社会の三者がある。学校も生涯学習のための機関。生涯の各時期で自主的な学習機会を提供する社会教育が極めて重要」と、学校教育から社会教育への比重の移動を宣言。小・中・高校を中心とした初・中等教育は「これからは自ら学ぶ意欲を育てるなど生涯学習の基礎を培うものとしての役割を明確にする必要がある」と言い切っている。
 また、幼稚園から大学までの秋季(九月)入学制への移行については「二十一世紀に向けての我が国の社会を取り巻く諸情勢の大きな変化を考えた時に、積極的に取り組んでいかなければならない課題」と前向きにとらえている。


 
 
 
 
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