憲法改正に賛成するとした答えが四七・四%で、反対の二〇・八%を二六・六ポイントも引き離している。一九九七年(平成九年)以降の各種調査でも賛成が反対を上回っており、いまや改正賛成多数が完全に定着したといってよい。年代別にみれば、若い世代には改正への抵抗感がなく、六十歳以上の男性には戦時中の意識が強く残っているようだ。
改正すべき理由として「現状に合わなくなっているから」が最も多いのは、現行憲法が施行されてから五十余年が経過しているのだから、当然の見方だ。憲法規範と現実との乖離(かいり)現象は、いろいろなところに出ている。にもかかわらず、“進歩的”と称せられてきた人々が護憲を主張し、この憲法を“保守”しようとしているのは完全に時代離れしている。
また、男性の六十歳以上の二二・二%が「押しつけられた憲法だから」を改正理由に挙げているのに対し、二十歳代、三十歳代および四十歳代の四分の一以上が「国際的に通用しないから」をあげているのは興味深い。おそらく三十歳代以下は日本国憲法の原案が連合国軍総司令部(GHQ)で作られたことをよく認識していないのではないか。認識していたとしても、憲法の出自にこだわりをもっていないのだろう。
「改正すべきではない」とした理由では「平和主義をうたった憲法だから」が断トツだが、平和主義をうたう憲法を持つ国は百二十数カ国に上る。日本国憲法のみが平和主義憲法でないということが、いまだに浸透していないようだ。
「改正すべき点」については、「第九条」が「国会」よりも少なく、さらに「天皇陛下の象徴としての地位」について見直すべきとの意見が非常に少ないのが特徴的。かつて憲法改正といえば、九条と天皇陛下の地位が主流だった。
とくに九条については、他の世論調査でも一位にはなっていない。このことが何を意味するのかといえば、九条は自衛隊の存在を否定しておらず、国連平和維持活動(PKO)への参加も可能という解釈で合意がなされているのではないか。
これに対し、国民の国会に対する不満は非常に大きい。とくに二院制はまったく機能していない。現在の参院は衆院と同様、政争の場となっている。潜在的に国会議員に対する不信も根強いことが、国会規定を改正すべきという数字にあらわれたのではないか。
今回の世論調査結果は、従来の改憲議論が、実際は大きく様変わりしていることを明示している。こうした世論をふまえ、さらに議論を深めるために国会に「憲法調査会」を設置することは義務といえる。(談)
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