2003/10/17 産経新聞東京朝刊
【社説検証】(下)憲法改正 産経新聞
■イラクと北で緊急性増す
イラク戦争、北朝鮮の核開発など、日本を取り巻く国際情勢は、自国の安全を「諸国民の公正と信義」に委ねようという憲法前文が、いかに現実離れしているか、をまざまざとみせつけている。
問題は日米同盟の強化なり、自国の備えを万全にする方策を迅速かつ的確に取れなくなっていることである。
憲法が想定していない事態を乗り切るため、憲法を含む国のかたちを見直すことが政治の構造改革であり、これこそ首相の最大の課題である。(5月3日)
■「押し返す保守」の時代
問題の本質はむしろ、戦後長い間、この国の秤(はかり)の針が正確な基準値を示さず、偏りが是正されないまま政治や外交が語られ、思想や言論を測ってきたことにこそある。常識的世界からみれば偏奇な風景だったといえよう。
しかし、巨視的にみれば、往時と異なるのは憲法改正論が国民の多数意見となり、自衛隊の海外派遣が実現し、国旗国歌法が制定され、教育基本法の改正も遠からず実現する状況になっていることである。
「押し返す保守」の時代の終戦記念日にあって、考えるべきは秤の針を正位置に戻し、左右にぶれ過ぎずに、常にバランス感覚を発揮することであろう。それが戦前と戦後を通しての最大の教訓であるに違いない。(8月15日)
■首相の指示を評価したい
昭和三十年、自主憲法制定を党是としたにもかかわらず、自民党は改正案の取りまとめにいたっていない。改正案を指示した首相がこれまでみられなかったことを考えれば、大きな前進だ。
首相は、半世紀以上も前の憲法制定当時と内外の情勢が大きく変わり、憲法を見直す必要があることを国民に率直かつ包括的に訴えなくてはならない。(8月27日)
■国のありかたを聞きたい
事実上、日本の首相を選ぶだけに、日本をどういう国にするかを語る責任がある。
憲法が制定されてから、日本の国内事情、国際環境は大きな変化をとげている。こうした変化に対応しうるように憲法の見直しを具体的に論じ合う総裁選を期待したい。
国のありようにメスを入れることこそ、首相が取り組むべき課題だ。二十一世紀日本の国家像を提示して論議を深めることに総裁選の意義がある。(9月7日)
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