日本財団 図書館


2000/12/29 産経新聞東京朝刊
【主張】改憲試案 実現に向け具体的論議を
 
 自民党の橋本派が憲法改正の基本方針案を打ち出した。先には自由党が改正に向けた一次草案を作成しており、こうした動きを歓迎する。「論憲」の域を脱して、改正への具体的な政治的手続きに着手すべき段階を迎えているといえる。
 橋本派内の政策局憲法分科会がまとめたもので、今後、派内でさらに煮詰めることにしている。自民党の一派閥内部の試案とはいえ、政策立案や政局動向に大きな影響力をもつ最大派閥が憲法改正への積極的な姿勢を示した意味合いは小さくない。
 改正案では、改正を必要とする理由として、(1)現行憲法は占領下で連合国軍総司令部(GHQ)によって与えられたもので、文章も日本語としてこなれていない(2)少子化、国際化の進展、多様な価値が共生する社会への転換といった変化のなかで、新しい国家像、国民目標が求められている−などと指摘している。
 また、前文に、「国際社会への積極的貢献」「民族の歴史と伝統の尊重」などを盛り込むべきだとしている。そうした基本的な視点は、われわれも共有するものだ。
 具体的な改正点として(1)自衛のための軍隊の保持(2)集団的自衛権の行使、国連などの集団安全保障への軍隊の派遣(3)天皇の「元首」化(4)緊急事態のさいの権利制限−などを明記するよう求めている。国会の二院制の是非、地方の連邦制、憲法裁判所の設置などについては、さらに議論が必要だとして両論併記のかたちを取っている。憲法改正の重要なポイントは、ほとんど網羅されているといっていい。
 自由党も党内の国家基本問題に関する委員会が、「自由で創造性あふれる自立国家日本」をめざすとした改正試案をまとめている。安全保障について、二十一世紀には旧世紀の戦争観にとらわれない新しい概念の創造が必要として国連中心主義を打ち出している点など、橋本派の試案とはややトーンを異にする。だが、いずれの案も憲法改正の中核的テーマである「九条問題」を回避せず、真正面から切り込んでいるところを評価したい。
 衆参両院の憲法調査会は、改正を前提としないということでスタートしたが、改正を容認する国民が多数派になったというのに、政治の側が逡巡しているのは怠慢という以外にない。
 自民党内には、連立を組む公明党への配慮から、橋本派試案に慎重論も出ているという。当面の政局安定を優先させて時代が要請する最大の政治課題に向き合わないというのでは、責任ある政権政党とはいえない。


 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION