憲法調査委員会設置推進議員連盟主催の「憲法五十周年記念フォーラム」が十七日に開かれ、現憲法の草案づくりに当たったGHQ(連合国軍総司令部)の米国人スタッフ三人が招かれ、草案作成の状況について証言した。
現憲法の草案は、日本側作成の草案に不満をもったマッカーサー総司令官がGHQ民政局に命じ、わずか一週間、日本側への手交までを入れても十日間で作られたことが知られている。招かれた三人は、このときのスタッフの数少ない現存者である。これまでにも研究者の手で、ある程度、草案作成過程についての証言は得られていたが、日本で、しかも憲法改正の発議権を持つ国会議員の前で、直接証言したことの意味は大きい。
三人の中で、ベアテ・ゴードン氏は、現憲法に肯定的で「改正の必要はない」と断じた。しかし、リチャード・プール氏とミルトン・エスマン氏の二人はさまざまな問題点を指摘した。特に草案作成過程については「一週間で作れといわれ、正直言って驚いた」(プール氏)、「十日間でこういう文書を作るというのは適切ではないと思った」(エスマン氏)と、それぞれ強い疑問を抱いていたことを明らかにした。
しかし、こうして泥縄式に作られた草案について、エスマン氏は「外国人が作ったもので、日本の国民が受け入れてくれるとは思えず、占領が終わったら残らないだろうと思った」と語った。プール氏も「全く修正を加えられることなく、五十年続いたことに驚いている」と述べた。ともに、日本人の手でいずれ改正されるべきものとの認識を持っていたわけである。
「制定のいきさつはともかく、憲法の条文がよかったから、改正する必要はなかった」という考えもある。だが、現実に改正できなかったのは「衆参両院の三分の二以上の賛成で国民投票にかけられる」という改正条項の厳しさからであることは明らかである。第九条など現実に対応できない点は解釈によってしのいできたのだ。
それでも今年になって、四百人近い国会議員による憲法議連が発足するなど、機は熟してきている。各党とも、草案作成者たちの証言を素直に受け入れ、国会に憲法問題を本格的に論議する場を設ける努力をすべきである。
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