1995/05/05 産経新聞朝刊
【憲法を考える】安全保障 憲法第九条、最近の主な改正案
憲法見直しの最大の焦点が第九条だ。さまざまな改正案が出されているが、最近の主な提案をまとめた。
【小林節・慶大教授】
九条一項を「日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、侵略の手段としては、永久にこれを放棄するが、自国の独立と世界平和を維持するためにはこれを放棄しない」と改める。さらに、二項以下に「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、自衛軍として保持する。同じく国の交戦権は、これを放棄しない」「国民は国防の義務を負う」などを明記する。(平成三年一月『憲法守って国滅ぶ』)
【評論家・西部邁氏】
「日本市民には日本国家の独立と安全を保つ義務が課せられる。その義務を全うするため国防軍を形成し保持しなければならない。国防軍は他国に対する侵略的な目的のためにその戦力を使用してはならない。また国防軍は、自衛のための軍事行動を準備し実行するに当たり、集団的自衛権や国際的警察を含めて最大限の配慮をしなければならない」(平成三年六月『私の憲法論』)
【三塚博・自民党政調会長(当時)】
国連決議に基づく自衛隊の平和維持活動は第九条の例外とすることを明記する。(平成四年十二月、改正意見を表明)
【自主憲法期成議員同盟・自主憲法制定国民会議】
九条に三項を設け、「前二項の規定は、国際法上許されない侵略戦争ならびに武力による威嚇または武力の行使を禁じたものであって、自衛のために必要な限度の軍事力を持ち、これを行使することまで禁じたものではない」。(平成五年四月『日本国憲法改正草案』)
【小沢一郎・新進党幹事長】
一、二項は現行憲法と同じ。三項として「ただし前二項の規定は、平和創出のために自衛隊を保有すること、また、要請をうけて国連の指揮下で活動するため国際連合待機軍を保有すること、さらに国連の指揮下においてこの国際連合待機軍が活動することを妨げない」。(平成五年五月『日本改造計画』)
【日本を守る国民会議】
平和主義を宣言するとともに、国軍の保持、国軍に対する政治優位の原則を明記する。「わが国の平和と独立を守り、併せて国際平和に寄与するため、適切な規模の国軍を保持する」。さらに国際協力の章を設け、自然保護と産業開発の調和、地球環境の保全など積極的な国際貢献への取り組みを盛り込む。(平成五年五月、新憲法試案大綱)
【読売新聞社】
安全保障、国際協力の章を設ける。戦争の否認、大量殺傷兵器の禁止などを盛り込んだうえで、「日本国は、自らの平和と独立を守り、その安全を保つため、自衛のための組織を持つことができる」「自衛のための組織の最高の指揮監督権は、内閣総理大臣に属する」「国民は、自衛のための組織に、参加を強制されない」。さらに、国際協力の理念をうたい、「日本国は、確立された国際的機構の活動に、積極的に協力する。必要な場合には、公務員を派遣し、平和の維持及び促進並びに人道的支援の活動に、自衛のための組織の一部を提供することができる」。(平成六年十一月、憲法改正試案)
【西修・駒沢大教授】
「日本国は、国際の平和と安全を維持するために、平和に対する脅威の防止と除去に努め、侵略行為その他の国際平和の破壊行為に対しては、国際連合憲章の目的にしたがい、必要な措置を講ずるものとする」「日本国の独立と安全を保持し、かつ国際平和に寄与するため、自衛隊を置く」(平成六年十一月、平成憲法草案)
◆現行憲法第九条
(1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
(2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。
|