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1993/02/04 産経新聞朝刊
国際情勢見据えた新たな展開―憲法見直し論議
 
 新たな国際秩序の中で、日本の国際貢献はどうあるべきか、を軸とする憲法の見直し論議がここにきて盛り上がりを見せている。
 昨年末、日本新党が発表した「政策大綱・要綱」で、憲法を国連中心主義に調和させるよう見直しを求めたことが発端となったもので、先月二十五日の衆院本会議の代表質問でも自民党の三塚政調会長、社会党の山花委員長、公明党の石田委員長が憲法問題を取り上げるなど、久々に政治の表舞台に登場した。
 これに対し宮沢首相は、改正の意思がないことを改めて表明。事態の沈静化を図るため、先月二十九日、閣僚懇談会で改憲発言の自粛を申し合わせ、議論の場を自民党憲法調査会(会長=栗原祐幸・元防衛庁長官)に移して、今国会会期末の六月までに中間報告をまとめることになった。
 一九四六年に制定された日本国憲法は、一度も改正されたことがない。かつて、鳩山内閣(一九五四年十二月−五六年十二月)、岸内閣(五七年二月−六〇年七月)時代に、自主憲法制定を求める政府と社会党との間で激しい論戦が繰り広げられた。しかし、鳩山政権は五六年七月の参議院選挙で敗北、また岸政権も六〇年の安保闘争で世論から厳しい批判を受け、改憲は“挫折”し、政府側に後遺症が残った。
 さらに、これまでの改憲論議は「アメリカの押し付け憲法 独立国家としての自主憲法制定」「ソ連の脅威 自衛権確立のための九条改正」といった図式がベースとなっていたため、日本の再軍備化など復古的色合いが濃かったことが世論の反発を呼んだ。
 しかし九〇年に入り、冷戦構造が崩壊する一方で、湾岸戦争をはじめとする新たな地域紛争が多発し、日本は国際貢献の在り方を問われるようになってきた。財政面での援助に加え、紛争解決のために大国のひとつとして積極的な責務を果たす必要に迫られている。
 「冷戦構造下で日本の再軍備化が中心を占めた過去の改憲論議に対して、今問われているのは国連主導のもとでの国際平和の維持に、日本がどうかかわるか、という点。その意味では明らかに異なってきている」と指摘するのは小林節慶応大教授(憲法)。
 昨年、国連平和維持活動(PKO)協力法の成立で、自衛隊の制限付き海外派遣が実現したが、「現行憲法の解釈では、これが国際貢献のギリギリの範囲」といわれる。
 海外では、米国は二十七回、ドイツは三十七回、フランスは六回の憲法改正を行っている。新しい世界秩序、激変する国際情勢に対応するには憲法はいつまでも「不磨(ふま)の大典」でいることはできない。
 議論の場が移る党憲法調査会は今回、メンバーをこれまでの二十一人から四十五人に広げ、ベテランから若手、積極派から慎重派まで取り入れ、新たに再構成された。これまでのような観念的な堂々巡りの論戦ではなく、二十一世紀を見据えた実りある憲法論議に期待したい。


 
 
 
 
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