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1997/08/06 読売新聞朝刊
[社説]憲法論議への機は熟している
 
 世論調査というのは、設問の仕方や順序で答えの数字が違ってくることは、よくある。それにしても、憲法改正に「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合わせて七六%というのは高い数字だ。自民党憲法調査会の世論調査結果である。
 今年の憲法施行五十年に合わせて実施された各種の世論調査では、いずれも憲法改正「賛成」が「反対」を上回っている。読売新聞がここ数年継続している調査と併せて見れば、「賛成」論は、国民の多数意見として定着したと見ていいだろう。
 各種の調査を通じて、「憲法について議論すべきだ」とする人の割合も高い数字を示しているが、自民党調査では、七一%にのぼっている。読売新聞の三月の調査でも七五%だった。本格的な憲法論議を始める機は熟している。
 論議の場については、自民党調査だと、「民間の憲法臨時調査会のような機関」が六一%、「国会の常設機関」が一七%、「政府の憲法臨時調査会のような機関」一五%となっている。
 「国会」を挙げる人が少ないように見えるが、これは三つの中から一つだけを選ばせるという設問の仕方が不適当なのではないか。たとえば「民間」を挙げた人が「国会」にも賛成している、あるいは三つとも賛成だということもあるだろう。
 読売新聞は、さる五月に発表した「二十一世紀への構想」で、国会での常任委員会設置とともに、内閣にも憲法調査会を置くことを提言している。これも、憲法というものの性格上、最終的には国民的な論議が最も重要であることを、当然の前提としているものだ。
 自民党調査では、憲法を「ほとんど読んだことがない」と「全く読んでいない」とを合わせて七一%という数字も出ている。現行憲法に問題のあることをある程度感じてはいても、あまり詳細には知らないという人も多いことを示している。
 やはり、問題点を国民の目に最もよく見える形で論議し、提示するというのは、第一に国民の代表で構成されている国会の役割だろう。
 すでに、超党派の議員連盟が、国会に憲法問題を論議するための常任委員会の設置をめざして動き出している。できるだけ早く設置し、中身の濃い議論で国民的な論議をリードしてもらいたい。
 自民党調査で憲法改正に賛成した人は、三十歳代が八五%と、最も多かった。これについて評論家の桜田淳氏は、本紙への寄稿で、「戦後の『平和と繁栄』の恩恵を十二分に受けてきた一方で、我が国の今後に対する不安を最も強く抱いているのが、この世代であるからだ」と指摘している。
 世界と日本が急速に変化している中で、日本はいま、政治・経済・社会全般にわたる構造改革に迫られている。だが、抜本的な改革をしようとすれば憲法に突き当たるという問題も多い。
 逆に、憲法を論議するということは、当然、日本の将来を論議するということでもある。幅広い論議を進めたい。


 
 
 
 
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