1996/11/03 毎日新聞朝刊
[特集]憲法50年・衆院議員アンケート 政党の憲法観、3極化
◇ベテランほど護憲意識強く
◇民主は「憲改反対」6割
毎日新聞社が3日の日本国憲法公布50年を機に実施した衆院議員アンケートでは、回答者の41%が憲法改正に賛成と答えたが、政党別にみると、自民、新進両党では、ともに2人に1人が改憲賛成という極めて類似した結果が出た。これに対し、共産、社民は改憲反対一色。民主は改憲反対派が多数の中、賛成派も一定の割合を占めるなど、政党を憲法意識で分けると「自民・新進」「民主」「共産・社民」という3極分化現象が明らかになった。
改憲派は自民、新進ともほぼ5割で、現行のままの憲法を維持すべきだとする回答者は自民で26%、新進は19%にとどまった。両党だけでみた場合、改憲反対派は全体の2割程度しかおらず、保守勢力の中で憲法改正を望む層が多数派を形成していることがはっきりした。ただ、新進では「その他」を選んだ人が回答者の32%にのぼっており、この中では「国民的論議を深めるのが先決だ」などの慎重な意見も目立った。
多くの議員が民主に流れた社民は、護憲派の土井たか子党首の復帰もあり、憲法意識は共産とほぼ同じ結果になった。民主は改憲反対が6割を占め、憲法観では自民、新進の保守2党と相いれない体質であることが浮き彫りになった。
一方、憲法改正の是非をめぐる意識を当選回数別にみてみると、当選1回から3回までの議員の間では改憲賛成派が43%で、反対派の32%を大きく上回った。また、当選4〜6回の中堅議員では、賛成43%に対して反対が38%と接近。これが当選7回以上のベテラン議員になると、逆に憲法改正反対が36%で、改憲賛成の35%を上回るという結果になっている。世代交代が進み、戦後生まれの議員が勢力を増しつつあるが、戦後憲法世代と言われる新人議員ほど改憲に抵抗感が薄く、戦争体験を持ち当選回数の多い議員ほど、現在の憲法を守ろうとする意識が強い皮肉な状況が生まれているといえそうだ。
その他として寄せられた意見の中には「日本語表現を手直しすべきだ」「結論先にありきではなく、まず論憲で」「環境権などの新たな権利を盛り込む必要がある」「国会を唯一の立法機関とした41条と内閣の議案提出権を認めた72条の矛盾を整理すべきだ」などの問題提起があった。
アンケートに回答した議員の比率を所属政党別にみてみると自民58%、新進76%、民主62%、共産92%、社民80%、その他・無所属62%となっている。
衆院議員全員アンケートは、質問用紙を10月25日から、前職議員には議員会館事務所に届け、新人議員、元職議員には郵送またはファクスなどで配布した。この結果、11月2日までに計332人からファクスで回答を得た。
事情があって「回答できない」などと記入して返送された用紙や、議員本人や事務所から回答できない理由の説明があった場合は、未回答とせず「一覧表」に掲載した。一方、回答が来なかった議員は、「未回答」としてその名前などを区分けして掲載した。
一覧表では、問1、2、3、4の回答を掲載。問3、4の回答は「理由」に一本化した。また、紙面の都合で、(1)選択肢の記述を簡略化した(2)憲法を改正すべきかどうかの問いの答えを「賛成」「反対」と表記するなどわかりやすく置き換えた(3)その理由の複数回答については「等」を付記した(4)回答のその他で意見を付記したケースが少なからずあったが、スペースの関係上省略した。
所属政党は2日現在
(この記事にはグラフ「憲法改正について」があります)
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