日本財団 図書館


1993/01/27 毎日新聞朝刊
自民憲法調査会、きょう1年ぶり再開 見直し論議に拍車
 
 自民党は宮沢喜一総裁(首相)直属の憲法調査会(栗原祐幸会長)を約一年ぶりに再開することを決め、二十七日、梶山静六幹事長ら党四役と栗原会長が憲法見直し問題について今後の段取りを協議する。三塚博政調会長が二十六日、首相に報告し了承された。調査会は今国会の会期末までに憲法見直しの検討項目を整理し、結論が得られしだい野党側に協議を申し入れる。調査会の活動再開で党内の憲法見直し論議に拍車がかかりそうだ。
 憲法見直しは、三塚氏が二十五日の国会代表質問で取り上げ、与野党協議機関の設置を提唱した。調査会での検討項目は三塚、栗原両氏が協議するが、三塚氏はこれまでに具体的論点として(1)憲法前文への地球環境問題や核兵器廃絶の明記(2)国連平和維持活動(PKO)への自衛隊参加など平和目的の自衛隊海外派遣が議論の余地なく実現できるような第九条(戦争の放棄)の改正(3)道州制創設を含めた地方自治拡充のための第八章(第九二―九五条)の見直し(4)私学に国費支出している実情に合わせた第八九条(公財産の支出制限)の改正(5)重要問題に関する国民投票実施のための規定新設の検討――を挙げている。
 三塚氏は与野党協議機関が設置された場合、その場で憲法前文と条文を網羅的に検討し、ほとんどの政党が改正に賛成する条文について国会の発議と国民投票による改正手続きを取ることを提案する考えだ。調査会での検討は、見直しについて党内合意を得ると同時に、野党側に協議機関設置を正式提案するための環境づくりの狙いがある。
 憲法見直しについて首相は国会答弁で、憲法論議そのものには理解を示しつつ「世論の成熟はみられないので憲法改正は考えていない」と、護憲の立場を鮮明にした。野党側は協議機関設置提案について「反対」(社会、共産)、「時期尚早」(公明、民社)と否定的だが、公民両党は党内に検討機関をつくるなどして憲法見直しに積極的に対応する姿勢をみせている。
 
◇自民党憲法調査会◇
 保守合同で自民党が結成された1955年12月に設置された。結党時に採択した「党の政綱」で改憲をうたって以来、自主憲法制定が党是となっており、この検討を行う機関。現在の栗原祐幸会長は16代目。最近では91年に「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」(会長・小沢元幹事長)が自衛隊の国連軍参加の是非などを検討している時に、憲法と国連憲章との関係を議論したことがあるが、同年12月の会合を最後に開かれていない。


 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION