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1991/12/08 毎日新聞朝刊
「開戦50年」に揺れる国会 戦後政治の打破狙い――小沢調査会
 
 戦後国際社会の中での日本の在り方を根本から問い直そうという自民党の「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」(小沢調査会、会長・小沢一郎元幹事長)の答申作成作業が大詰めを迎えている。国際的安全保障という概念の下に自衛隊のPKO参加はもとより、国連軍参加も可能という結論にまとまりつつある。
 同調査会は六月にスタート。答申の「たたき台」は「議論をあおるため意図的に突出した内容に作った」(船田元外交部会長)。(1)安全保障も含め経済力に相応した政治力の強化(2)国連の権威の下での多国籍軍、国連軍参加(3)PKO、国際緊急援助活動への参加のため自衛隊法改正――などが柱。
 自由討議の中では「自衛の範囲を必要最小限に限定する憲法解釈は誤りではないか」「集団的自衛権が違憲なら憲法改正すべきだ」「日米安保条約は双務性を持たせた方がよい」など安全保障問題を重視し、解釈改憲、憲法改正を視野に入れた論議も行われている。
 しかし「憲法の解釈変更には限界がある一方、改憲も難しい」(小沢会長)との判断から、調査会では、国連加盟国がすべての軍事力行使の権限を国連にゆだね、加盟国の安全を脅かす存在には国連の指揮の下で、加盟国の軍隊が制裁行動を行う、という国連憲章の「国際的安全保障」の概念を国際貢献の論拠にすることで意見が一致しているという。
 答申には「日本も安全保障での役割分担をしていく以上、過去の大戦に対する立場と認識を示しておかなければならない」(船田氏)との立場から「大戦の反省」も盛り込まれる予定だ。
 小沢氏は国会でのPKO論議について「PKOへの自衛隊参加は当然だが、今のようなあいまいな憲法解釈のもとで派遣するのは反対。言葉の遊びにすぎない」と批判。同氏は国会でも自公民体制路線を打ち出すなど戦後政治の打破を主張しており、答申は外交や安全保障の「戦後のタブー」から抜け出し、日本が国際社会で、新たな責任を負っていくことを正面から議論していく環境作りに当面の狙いがあるようだ。
 小沢調査会は党則に基づく総裁直属機関。憲法調査会(栗原祐幸会長)や外交部会などより上位機関として位置づけられている。湾岸戦争への対応の反省から今春、海部総裁(当時)の命で設置された。答申は党総裁の宮沢首相に手渡される。答申は自衛隊の海外派遣への道を本格的に開くものになる、と戦後派の若手議員を中心に期待感がある一方で、「小沢氏流の憲法解釈と国家観で自民党の基本政策をゆがめられては困る」と慎重さを求める声もある。


 
 
 
 
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