日本財団 図書館


1990/08/29 毎日新聞朝刊
中東和平貢献のための自衛隊派遣で激論続く――自民党首脳ら
 
◇「法整備急げ」の声 河本派首脳が改憲容認論を強く批判
 中東和平をめぐるわが国の貢献策について自民党首脳らの発言が活発化しているが、同党では二十八日も役員会、総務会、外交関係部会合同会議などを舞台に論議が続いた。このうち総務会では、藤尾元政調会長が「憲法を含めた法改革」を求めたのに対し、後藤田元官房長官は「(憲法の枠内で)有事立法を考えたらどうか」と主張した。また、記者団と懇談した安倍元幹事長は「国連協力基本法」(仮称)の制定や自衛隊の海外派遣問題を検討する審議会の設置を提案した。このほか金丸元副総理と西岡総務会長は、それぞれ慎重な言い回しながら、憲法改正論議が不可避であるとの見解を表明。これに対し河本派首脳は「一時の興奮で勇ましい発言をすべきではない」と、イラク問題を契機に急浮上した改憲容認論に強い懸念を表明した。
 総務会で藤尾氏は「憲法があるから何もしないで済むというわけにはいかない。国際的な批判を受けるスキを与えてはいけない」と強調。これに対し、後藤田氏は「日本は一種の平和ボケだ。今の自衛隊が十分に働けるのか。超法規との声もあるが、それはおかしい。有事立法を考えたらどうか。国の基本を間違わないようにすべきだ」との見解を示した。
 これに先立って、開かれた役員会では、浜田幸一広報委員長が、党としての対処方針の確立を急ぐよう求めた。
 中山外相を招いて開かれた外交部会、外交調査会、対外経済調査会の合同会議では、浜田卓二郎衆院外務委員長代理が「現実に日本人がら致されているのだから、その身体生命や財産を守るために現地に自衛隊を派遣することは『侵略』ではなく、まさに『自衛』だ。この任務を民間に委託するというなら、自衛隊は何のためにあるのか」と述べ、湾岸地域への派遣要員としては、民間人ではなく自衛隊員を充てるべきだとの考えを強調した。
 一方、西岡総務会長も記者会見で「中期的には憲法を含めて取り組まなければならないとすれば、当然避けては通れない」と語った。
 こうした中で河本派首脳は同日、「戦後四十五年、日本は間違いなくやってきた。この業績を踏まえて冷静に判断しないといけない」と改憲容認論を厳しく批判。さらに同首脳は、小沢幹事長が、国連軍を通じて自衛隊を派遣することは現行法制下でも許されるとの見解を示したことについて「国連中心主義の考えはあるが、国内法を無視していいということにはならない。飛躍した論理だ」と述べた。


 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION