2. 吸気冷却システムおよび排熱回収システムの研究開発
2.1 吸気冷却システムの開発
SMGT2では大気温度が高い場合においても出力低下が少ない吸気冷却システムを採用することとした。本年度は基本設計及び機器仕様の検討を行った。
1)吸気冷却システムの基本設計
ガスタービンは、吸気温度が高くなると出力が低下するという特性があるため、機関計画においては、夏場の大気温度が高いときの出力が機関出力となり、舶用主機に多く適用されているディーゼルエンジンに比べてデメリットとなっている。
そこで、次頁に示すように夏場を想定して大気温度は30℃、また、SMGT2を実際にシステムに組み込む場合を想定して吸気圧力損失、排気圧力損失を考慮した条件でケーススタディを実施した。その結果、SMGT2では吸気冷却により大気温度が30℃の時でもエンジン吸気温度を15℃に下げることで、夏場でも大気温度が15℃の時と同じ出力、効率を得ることができる吸気冷却システムを採用することとした。SMGT2の吸気冷却有無の場合における大気温度による出力および効率の変化を図2.1−1に示す。また、SMGT2の吸気冷却システムは図2.1−2の概略系統図に示すように、吸気式冷凍機によって作られた冷水を吸気冷却器に供給して、エンジンの吸気を冷却するシステムである。
2)吸気冷却システム機器仕様(案)
吸気冷却システムの機器仕様(案)について、以下に示す。
(1)吸収式冷凍機
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(1) |
数量 |
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1基 |
(2) |
形式 |
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一重効用タイプ |
(3) |
冷凍能力 |
116USRT |
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(4) |
熱源 |
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0.15MPaG飽和蒸気1.0ton/hr |
(5) |
冷水温度 |
[入口]12℃、[出口]7℃ |
(6) |
冷水流量 |
70ton/hr |
(7) |
冷却水温度 |
[入口]32℃、[出口]7℃ |
(8) |
冷却水流量 |
217ton/hr |
(2)吸気冷却器
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(1) |
形式 |
フィンチュープ型 |
(2) |
冷却器入口空気 |
30℃、湿度60% |
(3) |
冷却器出口空気 |
15℃、湿度9% |
(4) |
冷水温度 |
[入口]7℃、[出口]12℃ |
(5) |
冷水流量 |
70ton/hr |
図2. 1−1 吸気冷却による機関出力及び効率の変化
【注】 |
吸気圧=1.0332kg/cm2
吸気圧損=100mmAq 排気圧損=300mmAq |
図2. 1−2 吸気冷却システムの概略系統図
(拡大画面:17KB) |
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(注) |
上記数値は、エコノマイザ発生蒸気を0.9MpaG飽和蒸気とした場合の数値である。 |
2.2 排熱回収システムの研究
再生サイクルを採用しているSMGT2ガスタービンの排気温度は、410℃程度と一般的なシンプルサイクルのガスタービンに比べ100℃程度低いが、ディーゼルエンジンの排気温度に比べれば150℃程度高いため、その排熱エネルギーを有効に利用することで熱効率の向上を図ることができる。そこで、本項では、SMGT2の排熱回収システムとして、蒸気注入やミニコンバインドシステム等の複合サイクルを採用した場合のケーススタディを実施し、機関出力、総合効率、付帯設備を指標とし、SMGT2のシステムとして最適なサイクルを検討する。
ケーススタディの結果のまとめを表2.2−1に示す。
ケーススタディの結果としては、出力及び効率からみるとケースCの排熱回収と吸気冷却を組み合わせたシステムが最も優位性があると考えられる。理由としては、他のケースに比べ機関出力は最も高く、また総合効率については、ケースBの排熱回収サイクルに次ぐ高い数値であるとともに目標値(50%)を超えることができるためである。ケースBの排熱回収サイクルは、総合効率では最も高いが、夏場の機関出力および機関効率はかなり低くなり、舶用に適していない。
よって、SMGT2に採用するシステムとしては、夏場でも機関効率が高く、機関出力が大きく、さらに総合効率も50%を超えることができるケースCの排熱回収と吸気冷却を組み合わせたシステムが最適と思われる。
表2. 2−1 ケーススタディ結果まとめ
ケース |
サイクル |
機器構成概略 |
機関 出力 (注) |
機関 効率 (注) |
総合 効率 (注) |
メリット |
デメリット |
A |
シンプル
サイクル |
ガスタービン
(熱交を含む) |
- |
- |
- |
・ガスタービン以外の構成機器が不要。 |
・総合効率が低い。
・出力が低い。 |
B |
排熱回収 |
ガスタービン 排熱ボイラ |
× |
× |
○ |
・総合効率が最も高い。 |
・出力が低い。
・船種が限られる。 |
C |
排熱回収
&吸気冷却 |
ガスタービン
排熱ボイラ 吸収式冷凍機 吸気冷却器 |
○ |
○ |
○ |
・機関出力が最も高い。
・機関効率が最も高い。 ・総合効率が高い。 |
・付帯設備が多い。 |
D |
排熱回収
&蒸気注入 |
ガスタービン
排熱ボイラ 造水器 |
△ |
○ |
△ |
・発生蒸気がすべて有効利用できる。
・機関効率が高い。 |
・ガスタービン部品の設計変更が必要 |
E |
コンバインド
サイクル |
ガスタービン
排熱ボイラ 蒸気タービン |
△ |
○ |
△ |
・機関効率が最も高い。 |
・付帯設備が多い。
・設備に対し、出力、効率の増加量が小さい。 |
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(注) |
結果の評価についてはケースAを基準として ○;効率大、△;やや効果あり、×;効果無しで表す。 |
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