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4.3. 陸上試験
 陸上試験ではF型実験機およびV型実験機による作動確認試験と性能試験を実施した。図4.3−1に運転試験経過を示す。総運転時間は約140時間、起動回数は150回であった。
(1)作動確認試験
 作動確認試験では下記の内容について確認を実施した。
 
(1)ガスタービンの着火や起動調整、加速制御を行って自立運転を行う。
(2)抽気弁及びIGVの開度制御、ガスジェネレータの回転数制御を行う。
(3)無負荷や負荷をかけて慣らし運転を行い、機械的健全性の確認を実施する。
 
1)着火、起動
 着火試験において、空燃比、燃料噴射圧力等の確実に着火できる条件を得ることができた。そして、排気温度が急上昇しないスムーズな起動条件(燃料流量など)を把握することができた。
2)振動
 運転試験により機械的健全性確認を実施した。その一例としてガスジェネレータロータおよびパワータービンロータの振動について試験結果を以下に示す。
 ガスジェネレータロータは、起動中に一次及び二次の危険回転数を通過する。図4.3−2にガスジェネレータロータの軸振動計測結果を示す。試験結果によれば一次ではピークが若干出るが軸振動値は十分に小さく、二次では殆ど軸振動に変化が現れず、運転に支障がないことが確認できた。
 一方、パワータービンロータは定格回転数(100%rpm)までに一次及び二次の危険回転数を通過する。図4.3−3にパワータービンロータの軸振動計測結果を示す。試験結果では一次のピークは軸振動値の許容値内、二次はほとんど軸振動に変化が現れず、パワータービンロータについても軸振動振幅は十分に小さく運転に支障がないことが確認できた。
3)制御
 起動制御、ガスジェネレータ回転数制御等の基本制御を正常に行うことができた(3.1項参照)。また、圧縮機のサージングを回避するため、抽気弁とIGV、可変静翼の開度をエンジン回転数に応じて適切に制御する必要があるが、運転試験では圧縮機組み合わせ試験で得られたデータをもとに抽気弁とIGV、可変静翼制御スケジュールを設定し、運転試験により作動を確認することができた。また、V型パワータービンにおいても可変静翼の作動を確認することができた。
4)慣らし運転
 F型実験機、V型実験機ともに.アイドル運転およびN1(ガスジェネレータ回転数)、N2(パワータービン回転数)ともに無負荷と負荷をかけた状態で100%回転数まで問題なく運転を行い、振動も小さく、機械的健全性の確認を実施した。
(2)性能試験
(1)定格性能試験(V型圧縮機とF型パワータービンの組み合わせ)
 性能試験は成果をSMGT2(「実船搭載型舶用推進プラント」をいう。以下同じ。)につなげる必要があることから、主にV型圧縮機とF型パワータービンの組み合わせで実施した。性能試験結果を表4.3−1に示す。
 図4.3−4に定格性能運転時の運転操作盤メータを示す。
 性能試験の結果、出力、効率及びNOx値の全てにおいて開発目標を満足する結果を得ることができた。この陸上運転試験は全てA重油だけを使用しており、A重油の適合性についても確認することができた。図4.3−5にSMGT性能を示す。
(2)F型の性能試験
 F型の性能試験は2002年5月に実施した。出力は2,527kWと目標を達成したが、熱効率は目標を下回っていた。これは運転試験のときは、吸気温度が高かったためと排気ガス温度の制限によりガスジェネの回転数が修正100%まで運転できなかったこと、さらに図2.3−6にも示すように、エンジン内部へのオイル漏れ等による熱交換器の汚れにより温度効率が62%程度しかなかったことによる。このため吸気温度が標準状態、熱交換器の温度効率が前述の定格性能試験時の値へ戻れば熱効率についても目標を達成していたと考えられる。その後、熱交換器の温度効率が回復してから再度試験を実施する予定であったが、試験日程に余裕が無く、F型の最終性能は実施できなかった。
(3)V型の性能試験
 V型の性能試験は2003年1月に実施した。出力は2,530kWと目標を達成したが、熱効率は目標を下回っていた。これは、2.2.2項でも述べたように、ガスジェネとV型パワータービンのマッチングのずれ等によるものである。各要因の対策により目標性能達成の可能性は十分に有ったと考えられるが、V型の主要な研究項目である部分負荷性能の性能確認を重点的に行ったため、V型の最終性能は実施できなかった。
 V型の運転試験においては、V型パワータービンの可変静翼の角度を変えて部分負荷性能の確認を行う試験を中心に実施した。その結果、出力は目標を達成することができ、部分負荷領域で可変静翼の翼角度を制御して熱交入口ガス温度を一定に保つことにより、静翼角度一定の場合と較べて効率の低下量が少ないことが確認できた。図4.3−6に静翼可変の場合と、固定の場合の性能比較を示す。
(3)分解点検
 陸上試験時および陸上試験終了後に点検を行った。分解後の点検において燃焼器、圧縮機、タービン等の各要素部品やガスタービンの機能部品である軸受けやシャフト類等についても特に異状は認められなかった。熱交換器は微少な漏れが認められたがその他は特に異状が認められなかった。
(4)まとめ
 陸上運転試験において、着火、自立運転、圧縮機制御確認、慣らし運転、制御の確認、調整、部品の健全性確認等を実施し、F型及びV型実験機の作動確認を行った。性能運転試験を実施して、出力、効率、NOx性能とも目標を達成することができた。なお、陸上運転試験は全てA重油を用いて運転を行い、A重油の適応性も確認できた。
 
表4.3−1 性能試験結果
項目 単位 開発目標 試験結果
出力 kW 2,500以上 2,680
熱効率 38以上 38.2
NOx排出量 g/kWh 1以下 0.97
 
図4.3−1 運転試験経過
 
図4.3−4 定格性能運転状態







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