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3. 船舶対応技術の研究
3.1 負荷変動対応技術の研究
(1)技術課題
 舶用主機向けの2軸再生式ガスタービンの運転制御システムとして最適な制御システムの構築を目的として、主に以下の課題を対象に研究・開発を実施した。
(1)負荷変動対応制御方式
 無負荷から定格負荷までの広い運転領域に対して安定した制御性を有し、かつ急激な負荷変動にも対応できる制御方式の確立
(2)部分負荷最適制御方式
 部分負荷時の効率向上のため、圧縮機入口可変翼やパワータービン入口可変ノズルを用いた最適制御方式の開発
(3)舶用対応制御システム
 舶用機器としての実船搭載を見据え、船級対応、冗長化対応を意識した制御システム設計
(2)制御ロジックの設計
 舶用主機向けの2軸再生式ガスタービンの特性をかなり詳細に模擬できるシミュレーションモデルを構築し、シミュレーションを実施し、負荷変動対応制御方式、部分負荷最適制御方式、舶用対応制御システムの最適化を実施した。
(3)陸上試験用制御システムの設計及び製作
 制御ロジックの設計結果を反映して、陸上試験用制御システムに関する制御盤本体の設計・製作を進め、制御ソフトウェアの製作・実装を行った。
(1)ハードウェア設計・製作
 陸上試験実験機向け制御装置の制御盤本体の製作を行って(図3.1−1)、陸上試験設備に搬入・設置し、I/O信号のループチェック、シーケンス動作チェックなどの、各種機能試験を実施して、陸上試験に使用した。
 また、本制御装置は陸上試験における監視・調整を支援するための運転監視装置を有しており、制御盤本体と運転操作盤に設置した(図3.1−2)。
(2)ソフトウェア設計・製作
 制御ソフトウェアについては、これまでに行った具体的な制御ロジックの基本設計とこれをソフトウェアヘ展開していくための制御ソフトウェア製作仕様に基づいてソフトウェア製作を行うとともに、制御装置(PLC:Programmable Logic Controller)へ実装した。
 制御ソフトウェアの機能については、制御ソフトウェアを実装した制御装置をリアルタイムシミュレータと結合し、陸上運転試験の開始に先立って、各種制御機能の動作検証を実施した。
(4)陸上試験および制御機能の調整・評価
 実験機による陸上試験において制御装置についても各種制御機能の調整や性能の検証に着手し、起動制御機能および負荷運転に移行した後の基本制御動作であるG/G(ガスジェネレータ)回転数制御機能等について、基本的な調整と性能の検証を実施した。
(1)起動制御機能
 本ガスタービンの起動制御では、前半はスケジュール的な燃料の制御により着火性と燃焼の安定化を優先させ、後半は安定した昇速を行うためにフィードバックによる昇速制御を行っている。制御機能上の主な調整内容は、起動前半の燃料スケジュール、起動後半のフィードバック制御のパラメータなどである。
 これらの調整値は段階的に何度か起動試験を行って調整を重ね、最終的には想定した起動特性になるように調整した。図3.1−3に上記の調整結果による起動試験の実機データをトレンドグラフにて示す。この結果より、起動前半は燃料スケジュールにより確実な着火が行われ、その後スムーズに自立回転数までの昇速が行われていることが確認された。
(2)G/G回転数制御機能
 G/G回転数制御機能においては、安定して回転数を制御することが要求されるとともに、陸上運転試験設備ではエンジン性能試験のために、G/G回転数設定を操作して任意の動作点に設定する操作も頻繁に行われるため、G/G回転数設定値に対する追従性も必要である。G/G回転数制御の制御パラメータは、これらの要求を満たすことができるように、制御動作の応答を見ながら何度か調整を繰り返し、最終的な調整値を決定した。
 図3.1−4には、運転操作盤よりG/G回転数設定値を操作し、G/G回転数制御の追従性を確認した結果を示す。この結果より、設定値に対してほぼ遅れなく回転数が追従していることも確認され、必要とされる制御性能を運転することができた。
 
図3.1−1 陸上実証試験用ガスタービン制御盤
(a)制御盤・外観
 
(b)制御盤・内部
 
(c)PLC用リモートI/O(運転操作盤内部に設置)
 
 
図3.1−2 陸上実証試験用運転監視装置・画面例
(a)監視画面例
 
(b)調整画面例
 
図3.1−3 起動制御調整結果
(拡大画面:22KB)
 
図3.1−4 G/G回転数制御調整結果(設定値追従性)
(拡大画面:19KB)







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