研究成果
1.1 基本計画
SMGTの全体目標達成のため、構成要素が達成すべき目標性能(設計値)を表1.1に示す。また、各部の形式を表1.2に示す。
高い熱効率実現のためにSMGTでは排熱回収をする再生サイクルを採用することにした。再生サイクルの検討結果を図1.1に示す。再生サイクルでη=38〜40%を達成するには、タービン入口温度(TIT)=1,200℃、圧力比(π)=8となる。
再生器は小型で高効率のためプレートフィン型とした。
低NOx燃焼方式は予蒸発予混合希薄燃焼方式とし、燃焼器形式は低NOx化構造に対し形状・寸法の設計自由度があり、整備性の良い缶型燃焼器とする。
圧縮機は高効率を狙って軸流4段+遠心1段、ガスジェネレータタービン(以下GGT)、パワータービン(以下PT)はいずれも軸流である。
SMGTは定格負荷での性能を重視する用途を想定したF型と部分負荷での性能も重視するV型の2種類を開発する。V型はPTの1段静翼と圧縮機の軸流4段の静翼を可変としたものである。ただし、V型、F型の軸流圧縮機、PTとも構造上は必要あれば互換できる形にしている。
図1.2、図1.3にSMGTの出力発生部の断面図を、図1.4に装備外観図を示す。
全体構造は機関室からの搬出入の容易さ、整備性の良さを考慮してモジュール分割できるものとする。
1.2 要素研究課題
上述の様に、SMGTの目標性能は同クラスの従来ガスタービンの水準を大きく超えるものであり、前出表1.1に示した各要素目標は、燃焼器、熱交換器、圧縮機・タービン等とも従来水準を超える目標性能が要求されている。
この目標達成のために設定した主な研究課題は次のとおりである。
本研究開発ではこれらを 1)環境負荷低減技術の研究 2)燃費改善技術の研究 3)船舶対応技術の研究の3つに大別している。
1.2.1 環境負荷低減技術の研究
これは低NOx燃焼器の研究である。
低NOx化の方法として水または蒸気を注入する湿式もあるが、清水を多量に要するため、舶用には適さないので乾式低NOx燃焼器を開発する。
このため従来の拡散燃焼方式に変えて、予蒸発・予混合による希薄燃焼方式による液体燃料(A重油)焚き低NOx燃焼器を開発研究する。
1.2.2 燃費改善技術の研究
1)プレートフィン型再生熱交換器;再生熱交換器はエンジン熱効率向上のポイントであり、当然、高効率が要求されるが、コンパクトであることが舶用として要求される。この要求を満たし、さらに耐久性・製作性等を検討した結果、再生熱交換器はプレートフィン型を採用し、この開発を行う。
2)高効率圧縮機;圧縮機効率がガスタービン熱効率に与える影響は大きい。従来の2,000kW級ガスタービンでは実績の多い遠心圧縮機を採用する例が多いが、より高効率化の期待できる圧縮機として、軸流型+遠心型の形式を採用し、この複合形式の高効率圧縮機を開発する。
3)高温化(冷却翼);熱効率向上のためタービン入口温度は同クラスの従来ガスタービンより高い1,200℃に設定した。このため、高温化を目指した冷却翼の開発が必要であり、このための研究を実施する。
4)部分負荷効率改善;舶用エンジンとして部分負荷時の熱効率向上も重要な課題である。この部分負荷効率改善を狙った可変型SMGTも開発する。これはパワータービン静翼を可変としたもので、これによって部分負荷時に流量制御し、熱交換器入口の排気ガス温度を定格運転時と同じに高く保つことにより熱効率向上を図るものである。可変型SMGTは同時に、軸流圧縮機も可変静翼とする。
1.2.3 船舶対応技術
舶用エンジン固有の課題として、塩分や燃料成分による材料腐食対策、波浪等による急激な負荷変動に対する適切なエンジン制御、また、船体動揺がガスタービンに与える影響対策がある。これらの対応技術として、各種材料(コーティング含む)の耐食性評価試験、最適制御システムの研究開発、船体動揺によりガスタービン各部に生ずる変形・応力解析による評価を行う。
また、船内メンテナンス作業軽減やメンテナンス・サポートの円滑化を図るためSMGTの故障診断・運転支援システムの研究開発も行うこととした。
表1.1 目標性能(設計値)
項目 |
単位 |
定格点目標性能 |
F型 |
V型 |
出力 |
kW |
2,590 |
2,530 |
熱効率 |
% |
39.1 |
38.4 |
空気流量 |
kg/s |
9.5 |
圧縮機 |
回転数 |
rpm |
21,000 |
圧力比 |
|
8.0 |
断熱効率 |
% |
84.0 |
83.7 |
熱交換器 |
温度効率 |
% |
83.0 |
燃焼器 |
燃焼効率 |
% |
99.0 |
ガスジェネレータ・タービン |
回転数 |
rpm |
21,000 |
入口ガス温度 |
℃ |
1,200 |
断熱効率 |
% |
87.5 |
パワータービン |
回転数 |
rpm |
13,000 |
断熱効率 |
% |
90.2 |
89.2 |
NOx値 |
g/kWh |
1.0≒200ppm(O2=0%) |
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表1.2 各部形式
要素名 |
F型SMGT |
V型SMGT |
パワーセクション |
形式 |
再生開放2軸式 |
圧縮機 |
軸流 |
4段 |
遠心 |
1段 |
燃焼器 |
4缶式 |
ガスジェネレータ・タービン |
軸流2段 |
パワータービン |
軸流2段 |
軸流2段 |
熱交換器 |
形式 |
プレートフィン型 |
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図1.1 再生サイクル検討
図1.2 SMGT断面図(F型)
図1.3 SMGT断面図(V型)
図1.4 SMGT外観図
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