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田んぼの生物指標1
■ 田んぼのカエルを調べよう
 
 カエルは両生類と呼ばれ水と陸地の両方の環境がないとすめません。日本の場合カエルの減少は特に水田で起こっています。かつての水田は雨が降ると冬でも水がたまるような場所がたくさんありました。しかし大型機械を導入し水の利用を効率化するために一枚の田の面積を大きくし、コンクリートの水路を作って必要な時だけ水を入れて、水がいらない時は極端に田んぼを乾燥させてしまいます。圃場整備は水田に暮らす生物のことは考慮されていないのです。アカガエルの仲間は、圃場整備されてしまうと春先の産卵場所がなくなってしまいます。また、水田で一生を過ごすダルマガエルは水田が乾燥することで生きていけなくなります。しかし今、どこでどのくらいカエルが減っているとか、なぜ減っているのかなど、そうしたことははっきりと分かっていません。今、水田のカエルの調査をすることはとても大切なことです。
水田のカエル図鑑
■ アマガエル (Hyla japonica)
 成体の大きさは、♂22−39mm、♀26−45mm。前足後足ともに指先は吸盤状になっています。体色は、緑色から灰白色で、周囲の環境により変化します。背中や後足には、不規則な黒暗色の模様があります。さらに鼻から目そして鼓膜を通る帯状の暗色模様がとくちょうです。
 
生態; 春(4月から6月)になると水田などの浅い止水(流れがないかきわめて緩やかな水辺)で繁殖します。乾燥に強く、繁殖期以外は水辺を必要としないうえ、狭い緑地でも生息可能なために都市部にも多く生息します。開発が進んでも最後まで生き残れる種かも知れません。
 
分布域:北海道、本州、四国、九州、佐渡島、対馬。
 
■ シュレーゲルアオガエル (Rhacophorus shlegelli)
 体長は、♂32−43mm、♀43−53mm。緑色で、個体によっては背に黄色の小斑点が散在します。雄はアマガエルと混同されやすいのですが、シュレーゲルアオガエルには鼓膜から鼻にかけての黒い線がないことから区別できます。
 
生態:昆虫類を食べます。6月から8月に変態します。
 
分布域:本州、四国、九州、五島列島。
 
■ トウキョウダルマガエル (Rana porosa porosa)
体が緑色から金色または灰暗色をしている
 
 体長♂35−75mm、♀45−85mm。背中には小さなミミズ状の細長い隆起が散在し、背側線(鼻先から瞼(まぶた)を通ってお尻まで続く線模様)はトノサマガエルほどハッキリしない個体が多く見ることができます。全体が緑色から金色または灰暗色をしており背中の中央に1本の緑色や黄色の縦縞を持ちます。この縦縞は途中で細くなったり途切れることもあります。背中の黒い斑紋(模様)が独立していること、分布域があまり重複しないことでトノサマガエルと区別できます。
 
生態:水辺から離れることはあまりありません。日中もよく活動し、昆虫類やクモなどを食べます。ニホンアカガエルなどと同様に水田や周囲の緑地がなければ生きていけません。小川や農業用のため池が減ったために生息地が減り、農薬の散布で数も減ってきています。
 
分布域:本州の関東から仙台にかけての地域と信濃川流域、新潟や長野などの一部地域でトノサマガエルと分布が重なっているところもある。
 
■ トノサマガエル (Rana nigromaculata)
 体長は♂55−80mm、♀60−90mm。後足だけにある指の間のみずかきはよく発達しています。背中にはミミズ状の細長い盛り上がりがあり背側線(鼻先から瞼(まぶた)を通ってお尻まで続く線模様)は太く盛り上がります。背中の真ん中に1本の緑色や黄色の縦縞を持ち、背中の中央の縦縞もないか細くなっています。黒色の丸みを帯びた斑紋がつながってみえます。トウキョウダルマガエルは背中に黒色の丸みを帯びた斑紋が独立しています。
 
生態:いつも水の中や岸辺にいて、水辺から離れることはあまりありません。日中もよく活動し、昆虫類やクモなどを食べます。水田に水が入ると繁殖が始まります。水田や周囲の緑地が必要です。小川や農業用のため池が減ったために生息地が減り、農薬の散布で数も減ってきています。
 
分布域:本州(関東から仙台にかけての地域と信濃川流域を除く)、四国、九州、中国大陸にも分布。
 
■ ニホンアカガエル (Rana japonica)
 体長は♂34−63mm、♀43−67mm。体の色は、赤褐色から茶色、黄土色に近い個体もいます。背中の左右には、それぞれ鼻先から瞼(まぶた)を通ってお尻まで続く背側線と呼ばれる明色の線模様があり、この背側線は途中で曲がったり、途切れたりしません。
 
生態:おもに地上で活動し、水田付近の草地や道を歩いているとよく出会います。餌は昆虫類やクモなどです。繁殖期は早春(2月から3月)。おもに水田を産卵場所とオタマジャクシの生活場所としています。水田、小川や農業用ため池が少なくなり急にその数が減っています。
 
分布域:本州、四国、九州、大隅諸島、隠岐、八丈島(移入)、中国大陸にも分布。
 
■ ヤマアカガエル (Rana ornativentris)
 分布域が重なるニホンアカガエルと比べると山地に多くなっています。♂40mm−60mm、♀40mm−90mm。吸盤は持たず後足に水かきがあります。体の色は赤茶色から灰黒色に近いような焦げ茶色。背側線が途中で途切れたり、目元で外側に大きく曲がっていて、それがニホンアカガエルとの識別点になります。
 
生態:普段は、林床で昆虫などの小さな生き物を食べて暮らし、水の中に入ることはあまりありません。繁殖期(2月から4月)になると、山から水田など水辺にやってきて産卵します。山地にはまだ産卵できる場所が残っており、ニホンアカガエルほどに生息数が急に少なくなっているわけではないと考えられているが実際のところはわかりません。
 
分布域:本州、四国、九州、佐渡島。







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