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Introduction
イントロダクション
 この小冊子を今、手にしておられるあなたは、もしかすると身内に統合失調症の患者さんをかかえ、不安や苦しみと闘いながら、なんとかしたいと頑張っておられるのではありませんか。「どんな病気にかかつてしまったのか」、「治る見込みはあるのか」、「先行きはどうなるのか」――そんなあなたの疑問や不安は、どこかで、だれかに、きちんと受けとめられているでしょうか。
 統合失調症は治りにくい病気だと思っている方も多いかもしれません。しかし、新しいタイプの薬が登場しましたし、患者さんや家族を支えるさまざまなサポートシステムが充実してきましたので、地域で普通に生活することが最近ではあたりまえになっています。
 「わらにもすがりたい!」――これは発病間もない患者さんをかかえる多くの家族が口にする心境です。この小冊子は、せめてそんな「わら」の一本に、という思いで作られました。「わらしべ長者」という寓話がありますが、一本の「わら」が、患者さんと家族の、よりよい生活への道しるべとなればと願っています。
 
Lecture
レクチャー
統合失調症はどのような病気でしょうか。
 
その特徴
●脳(神経)のはたらきが関係していると考えられています。
●脳(神経)の働きが活発になりすぎて、車でたとえるとエンジンが「オーバーヒート」した状態です。
●治療では、この活発になり過ぎた状態を静めるために、薬が使われています
 
特殊な病気ではありません。
●16歳から40歳くらいまでの比較的若い年代に起きやすい病気です。成人100人に1人弱の割合で統合失調症をわずらった方がいるといわれています。
●地域、男女の違いなどで発病率にあまり差はありません。
●統合失調症の発症は「誰にでも起きうること」です。
 
個人差がありますが、徐々に回復に向かいます。
●病気の経過には個人差があります。
●一人ひとりが違うペースで徐々に回復に向かいます。
 
■統合失調症にはどのような症状があるのでしょうか?
 
前兆期
●症状が現れてくる前の段階です。
●はっきりした症状がでなくても、眠れなくなったり、あせりの気持ちがひどくなってつらい状態になることがあります。
●疲れやストレスがたまって休みたくてもゆっくり休めず、心と体のバランスがくずれた状態です。
●早めに気づくことができれば、じっくり休んだり、気分転換やストレス解消などの対処ができます。
●家族も本人も「こうなると具合が悪くなる」という状態を確認しておくと、再発予防などに役に立ちます。
 
急性期
●一般的には、入院前後は急性期にあたります。
●はっきりした症状が現れて、眠れなくなったり、音や気配に敏感になって起きたり、混乱した状態になります。
●入院や薬によって、症状をおさえることが必要です。
 
休息期(消耗期)
●休息期(消耗期)の特徴は、眠りすぎるほど眠る、意欲や根気はあまりない、時に食べ過ぎる、気持ちが子供がえりをして甘えたがる、などです。
●十分な休養と睡眠をとって、規則正しい生活のリズムになってきたら、やがて回復へと向かいます。
●歯がゆくても、「寝過ぎ」「ゴロゴロしすぎ」を大目に見ていただけると、あとのリハビリにつながります。
 
回復期
●回復のためには、気持ちのよい眠りとリラックスが必要です。
●徐々に気持ちにゆとりができてくれば、少しずつ何かに取り組めるようになります。再発予防に薬を利用して、自分のしたいことをゆっくりと広げていきます。
●自分がどんな時期にあるかを知ることで、その時期に必要なこと、自分でできることがわかります。
病気(統合失調症など)の経過の説明







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