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パンチカードを使った植物観察
(講師:大川ち津る)
山梨県八ヶ岳山麓 泉郷の植物
カードによる種名検索
I 自然観察と植物検索
 
1. 植物検索は、自然に対する観察眼を養う。
植物名は形質(特徴:Character)の組み合わせで決まるので、形質を正しく観察することにより、正しい植物名を知ることができる。つまり、植物名を知ることにより、自然に対する観察眼が養われる。
2. 植物検索は、自然に対する親近感を養う。
名前が分かった植物に対して親近感を抱くようになる。
3. 植物検索は、自然に対する関心を高める。
植物を通して自然環境に対する関心を高めることができる。
4. 植物検索は、環境問題に対する関心を高める。
植物検索によって自然環境に対する関心を高めると同時に、種々の環境問題に対する関心を高めることができるようになる。
 
II 植物検索教材の作成
 
1. 検索対象にする植物を決める(例 種子植物)。
2. 検索のために注目する形質を決める。
例 種名検索:51形質(図1)、科名検索:70形質、国立市谷保天神・城山公園の植物:22形質(表2)等。
3. 各植物を各形質について調べて植物検索教材の植物データ(植物名と各植物の形質)とする。
4. 植物データを表の形にした形質一覧表そのものが検索教材になる。表を使って植物検索を行うことができる。この表を「一覧式植物検索表」、単に「植物検索表」という。ここに一覧式とは、二分式に対する語で、植物の目に付く形質を「いくつでも」、「どんな順にでも」選んでよい検索方式をいう。
5. 植物データをカードに移すと、「植物検索カード」になる。
6. 植物データをコンピュータプログラムに移すと、「植物検索プログラム」になる。
 
III 植物検索表、カード、プログラム
 
1. 植物検索表、カード、プログラム(MS-DOS版)のデータの一部を図2に示す。
2. 植物検索表、カード、プログラムの使い方の比較を表1に示す。
 
図1 種子植物の種名検索用51形質表
(拡大画面:368KB)
 
 
図2 植物検索表、カード、プログラム(MS-DOS版)のデータ
(拡大画面:380KB)
 
 
表1 植物検索表、カード、プログラムの使い方の比較
手順 植物検索表
(一覧式検索表)
植物検索カード 
(ボディーパンチカード)
植物検索コンピュータ
プログラム
1 白紙を形質番号の下にあて、項目ごとに仕切をつける。検索する植物の目に付く形質番号の下に、いくつでも、どんな順でもよいから、○印を付ける。 検索する植物の目に付く形質カードを、何枚でも、どんな順でもよいから、取り出す。 検索する植物の目に付く形質番号を、いくつでも、どんな順でもよいから、入力する。
2 白紙を下にずらし、○印を全部含む植物を検索候補とする。 植物一覧カードを上に重ね、穴が通った位置にある植物を検索候補とする。 入力した形質番号を持つ植物がコンピュータの情報検索機能により調べられて、画面に表示される。
3 検索結果を植物図鑑で確認する。
〈注〉・「一覧式検索表」では、検索する形質を検索者自身が選ぶ。「二分式検索表」で形質が与えられるのとは大きな違いがある。
・二分式検索表の一例(大川2002、生物教育より)
 
1.
花序の基部に総苞片がない。花弁は白色。
 
2.葉は互生。・・・
 
ミズキ
 
2.葉は対生。・・・
 
クマノミズキ
1.
花序の基部に総苞片がある。花弁は黄色、または黄緑色。
 
2.
花弁は黄色。早春、葉の出る前に咲く。
総苞片は花序より小さく、目立たない。・・・
 
サンシュユ
 
2.
花弁は黄緑色。春〜夏に咲く。総苞片は花序よりはるか
に大きく、普通白色、時にうす赤色。
 
 
 
 
3. 総苞片は白色、時にうす赤色、先が尖る。6〜7月開花。
 
3. 最新の植物検索表
 2002年6月、7月、国立市の幼稚園の先生を対象に、谷保天神・城山公園で、自然観察会を行うことになり、それに向けてカードを作成したが、表2はカードを作成する元になった植物検索表である。春から夏にかけての草23種類の検索を、図1の51形質から選んだ22形質で行おうとするものである。
 表のままでも検索できるが、表のデータをカードに移すと、一層能率よく、野外で、歩きながら探索を行うことができる。
 
表2 23種の草の検索表[春〜夏]
(拡大画面:275KB)
 
*植物検索表を使う検索方法
(1)白紙を形質番号:1101〜5004の下にあて項目ごとに仕切りをつける。
(2)種名を調べる植物の形質を確かめ、白紙の形質番号の下に○をつける。
(3)紙を下にずらし、「○印を含む植物」を探す。それが種名を調べようとする候補の植物である。
 (1)の「項目ごとにしきり」は、下にずらす時、横にずれないようにするためである。
(4)○印を含む植物が2つ以上の場合はもちろん、1つの場合でも植物図鑑で確かめる。
(5)図鑑で調べて正しいことが分かったら、レポート用紙に記入する。
 おかしいと思ったら形質の選び方を変えてやり直す。
 
*類似植物(   はグループ名、:以下は似ている植物のグループ)
カタバミ:カタバミ、ムラサキカタバミ、イモカタバミ
キツネノボタン:キツネノボタン、ウマノアシガタ
タンポポ:カントウタンポポ、セイヨウタンポポ
ツユクサ:ツユクサ、トキワツユクサ
ノゲシ:ノゲシ、オニノゲシ
ハコベ:ハコベ、ウシハコベ、ミミナグサ
ヒメジョオン:ヒメジョオン、ハルジオン
マツヨイグサ:メマツヨイグサ、コマツヨイグサ







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