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「十勝川の自然と成り立ち」
帯広環境教育研究所長 太田 昇
■サケの会の取り組み
「原体験」
・・・
知ることが大切
ふるさと帯広市の川の姿を知る
 
 帯広市立第八中学校などでは、15年ほど前から「サケの稚魚放流祭(毎年5月5日開催)」に取り組んでいる。
 
■十勝川源流部探訪
 ビデオの中では、新得山岳会会員の案内によって十勝岳(2,077m)の源流部を訪ねる模様がドキュメントタッチで描かれていた。
 十勝川源流部は、標高1,000mくらいまでハイマツの茂る森林地帯であり、それ以上になると火山灰や火砕流で枯死したハイマツの転がる活火山の様相を呈している。このあたりにはヒグマも生息している。
 十勝川の源流は万年雪の雪渓を越えたあたりにあった。
 
■十勝川水系の川の恵み
 利別川水系螺湾地区特産のラワンブキなどユニークな特産物も川の恵みである。
 
■流域の貴重な自然 〜ケショウヤナギ
 語り:吉田勇治氏(札内川流域環境研究所所長)
 ケショウヤナギの生育条件として、根圏に通気性があることが必要
 「ケショウヤナギの林は人間が造るいかなる護岸よりも頑強だ」
 
■川にまつわる言い伝え
 御影のニレの木 〜「十勝川のご神木」 推定樹齢250年
 三世代のニレが育つ 落雷や洪水にあっても生き延びてきた
 音更川グラウンドワーク研究会の植樹祭に使用(6本を移植)
 
2. 十勝エコロジーパークの自然
■エコロジーとは何か
 生態学 生き物の生活を考える学問
■四季の見どころ(自然観察ガイドブック)
◎植物
オオウバユリ 10年かかって育って1度だけ花を付ける
エゾタチツボスミレ 「坪」とは庭のこと
ヘビイチゴ、ナワシロイチゴ(食べたらうまい)
◎鳥
留鳥(移動しない)、漂鳥(国内で移動)
夏鳥(子育てをする、囀る=メスヘの求愛、なわばりの主張)
オオジシギ、アリスイなど
◎夏の十勝エコロジーパーク
コゴミ(クサソテツ)
夏は虫 子供たちはなんといっても虫が好き
自分たちで調べさせることが興味をわかせることができる
ニレの木 クワガタの宝庫
 「もう終わりだよ」といってもやめないくらい夢中になる
◎秋の十勝エコロジーパーク
木の実、冬に備える動物たち
エゾリス オニグルミ〜河畔林の大きな特徴といえる
エゾシマリスが減った
エゾヤチネズミ、エゾアカネズミ、エゾトガリネズミ
トガリネズミの悲しい性
 トラップにかかったら朝までは生きられない
 (2時間以上食物にありつけないと死んでしまう)
 巣箱にスズメバチが巣を造っていた
◎冬の十勝エコロジーパーク
冬芽の観察
ドロノキ 芽の先端が尖っている
冬芽のおもしろさ 羊の顔に似るなど
野鳥の観察にもってこい 八千代ではゴジュウカラがみられた
ヒバシリ(下を向いても留まれる)
シロエナガ(エナガの亜種)
ミヤマカケス(カケスの仲間;カケスは頭が白黒)
動物の足跡 冬の遊びの大きな楽しみ(足跡〜肉球)
表面が解けて再び固まった雪原では前足の跡が残らずに後ろ足だけが残る場合がある。
 
十勝川中流域の自然
1. 自然の理解
■十勝川の概要
200程度の支流が流れ込んでいる
流路延長156km 石狩川、天塩川に続いて道内第3番目の長さ
 南十勝3町は歴船川水系
◎十勝エコロジーパーク
その一部が道立広域公園(410ha)としても認定されるようになった
◎千代田新水路計画 3年後に通水
原川はそのまま残し、洪水時のみ新水路に流す構造
自然を破壊しないようにする配慮
市民が考えながら参画する 「現地でエコロジーパークを語る会」
■自然とは
自然 〜人の手が加えられていないもの
気候、土地、いろいろな生き物が棲
■河畔林
森、林の区別は・・・?
人工林、天然林とは
◎河畔林〜川の影響を受けて成立している森林
子供の頃の遊び場であった。
護岸や直線化などで生き物が住めなくなってしまった
「生態学的混播法」 〜やがて人工の河畔林が整備されてくる。
■気候と生き物
生物 気候や他の生き物の影響を受ける
北海道は、亜寒帯気候下に属する
道内にも棲み分けの線がある
ブナ 黒松内の北限
クリ 石狩低地帯に多い
(十勝に植えられているクリは人が持ち込んだもの)
ブラキストン線(津軽海峡) クマゲラ、ヒグマ、ナキウサギ等
■土壌と植物
土壌と植物の関係 帯広市野草園(350種;エコパークにも350種)
ウツベツ川の河畔植生が保存されている
1. 乾性火山灰土
2. 適潤性
3. 湿性
4. 低位泥炭土
 カシワ林(更別村では天然記念物に指定)、スズラン、エゾヤマハギ、ハルニレ、ミズナラ、ヤチダモ、ドロヤナギ
■食物連鎖と共生
アリとアブラムシ
根粒菌 マメ科の植物の窒素固定
天敵 ウサギとキツネの話
ウサギとキツネの個体数変化には密接な関わりがある
■川の蛇行
河川の持つ3つの作用 「浸食」、「運搬」、「堆積」
砂を入れた板の上から水を流すと必ず蛇行する
蛇行するのが川の自然な形 瀬と淵ができる
瀬(瀞)  淵(早瀬、平瀬)
蛇行していることが洪水時には大きな被害をもたらす元凶となる(と考えられていた)
■多自然型工法
直線化された河川敷内で、可能な限り蛇行させ生き物が棲めるようにする
〜釧路川の取り組み(1月6日新聞:モデル事業として取り組む)
■植生と遷移(succession)
◎パイロットプラント 乾性土壌であればシラカバ
純林を形成 短寿命 やがて他の樹種の進入に伴い混交林化していく
ヤナギ 列状に生えているところは水衝部 →比較的新しい土壌
タチヤナギ 〜樹幹まで冠水しても数週間(?)は生きられる
◎隔離分布 氷河期の生き残り
ヤチカンバ 更別のイタラタラキ(?)などに分布
ケショウヤナギ 十勝、上高地







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