日本太鼓と学校教育―(10)
今年度4月より、中学校の音楽時間において日本太鼓をはじめとする和楽器教育が実施されています。
各地におかれては、学校の太鼓指導に取組まれていることと存じます。
今回は、(財)日本太鼓連盟副会長、御諏訪太鼓保存会宗家である小口大八氏よりお忙しいなか、寄稿いただきましたのでご紹介します。
和楽器太鼓教育に向けて (財)日本太鼓連盟長野県支部 支部長 小口 大八
戦後60年を経て、高度成長の中での繁栄は衣食住足りて、まさに飽食の使い捨て時代を迎えているが、逆にその歪として、毎日のように目を覆うような事件や問題が頻発している。特に青少年の非行や犯罪が驚異的な数字で発生していることは憂慮に絶えない現状であり、各方面より重大な問題として取り上げられていることは周知の事実である。
人間には二つの食糧が必要とされ、その一つには肉体に与えられる食糧、それは「ご飯」であり「パン」である。もう一つは心、魂、精神に対して与えられる栄養、それは、何かしらに趣味を持ち、それを身につけることにより満たされる精神の糧である。
肉体の空腹は耐えられないから、黙っていても誰でも摂取するが、心の空腹は何もせずとも生命に関わる様な事は無いから、ついおろそかにしがちである。その結果、「心や魂」が栄養失調に陥り、前述の通り意味も無く人々を殺傷したり、無軌道な行為に走り、社会に害を及ぼす自己制御のきかない者が現れてくる。
そこで、私は、日本人の心の糧の一つに太鼓があると強く信じ「国民皆打説(こくみんかいだせつ)」を唱えて、一人でも多くの人が太鼓に触れ、その素晴らしさを心の糧にしてもらうことに願いを込めて、昭和20年代より60年にわたって日本中をかけずり廻り、その技の普及に心血を注いできた。
「太鼓は昔から日本人の心、魂である」と言われ、その発生は、遠く縄文時代の頃(今から5,000年程前)から合図、信号の道具として生活の中に生きてきた。後に信仰の対象ともなって神社、仏閣に供え付けられ、神仏との対話ができる唯一の楽器、呪具として、今日に息づいている我が国の伝統文化遺産の一つなのである。
そして、昭和26年、御諏訪太鼓によって創案完成された複式打法は、近代太鼓打芸の先駆けとなり、全く新しい独創的な集団太鼓音楽として打奏することが可能となり、音楽的打芸演奏の確立がなされ、僅か50年の歴史の中で国の内外にわたって広く普及し、大きなブームを呼ぶに至ったのである。
さて、この太鼓は、人々の心を奮い立たせ、又逆に気持ちを和やかにすることの出来る、他に類を見ない楽器である。見せて聞かせ、聞かせて見せる、あたかもスポーツと音楽を同時にするという特殊な打芸である。人前で自分の持てる「ちから」の全てを出し切り、前向きに行動する心身の発揚、そして古代より太鼓は神仏の住まいと考えられている。このため、打奏することは神仏との対話、接点であり、常に真摯、敬虔な心でこれにあたらなければならない。「ふれ愛」、「話し愛」、「助け愛い」の三愛精神を身につけ、人間社会生活の基盤となる連帯精神を実践することにより、心身が浄化され、健全な思想が創造されるのである。文部科学省では、こうした太鼓の持つ特殊な力を重視し、今回「中学校学習指導要領」にも取り上げたのである。
このことからも、太鼓が人間本来の「生きる原点、心と生命力」を創造育成する重要な要素を持っていることが認められ、大いなる期待が寄せられていることが伺い知れる。
今、精神の歪みや弱さ、不安定を直し、心の空腹を満たし積極果敢、不屈の根性と魂を創り上げることの出来るもの、それは太鼓をおいて他には無いのである。だから、青少年はもとより社会人にとっても太鼓は最も重要な心の糧であり、栄養である。
我々は互いに手を携えて、より多くの人々が太鼓の素晴らしさを会得してもらうため、この普及振興に全力を尽くして当たらなければならないと強く感じるものである。
(子供たちを指導する小口支部長)
次回(20号)は、群馬県支部(上原徳夫支部長)が、8月1日(木)に約100名の先生を集めて開催する群馬県教職員和太鼓実技研修会の模様を掲載する予定です。 |
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理事会・評議員会・代議員会を開催
〜第4期理事、監事の改選(任期2002年7月1日〜2004年6月30日)〜
<評議員会>
第9回評議員会が6月11日に開催され、次の事項が可決されました。
「任期満了に伴う理事・監事の選任について」
第4期理事・監事の選任については、重任となったが、新たに関西地区の充実を図る重要性から兵庫県支部長である児玉利夫氏が就任することとなった。
「2001年度事業報告及び決算について」
「2002年度事業計画及び収支予算の一部変更について」
<理事会>
第10回理事会が6月11日に開催され、次の事項が可決されました。
「役員改正に伴う会長、副会長、常務理事の選任について」
役員改正に伴う会長、副会長、常務理事の選任については、会長津田正氏、副会長は伝統太鼓担当として池田庄作氏、創作太鼓担当として小口大八氏、運営担当として塩見和子氏、また常務理事には小野巽氏がそれぞれ重任となった。
「2001年度事業報告及び決算について」
「2002年度事業計画及び収支予算の一部変更について」
<代議員会>
第5回代議員会が6月29日に開催され、代理出席を含め36名の代議員が出席、次の事項が承認されました。
「2001年度事業報告並びに決算報告について」
「2002年度事業計画並びに収支決算について」
「支部の開設について」
北海道道西支部、鳥取県支部の開設については、8頁を参照。
「2002年度支部及び会員の現状について」
塩見副会長から、「支部が順調に開設しているのに比べ、会員数が増加していない。これは、退会する会員が多いためでもあるが、各支部においても退会理由を把握し、対応することによって支部体制を固めて欲しい。」旨の発言があった。なお、新設の2支部を加え37支部となるが、残る未開設の12府県についても引き続き支部開設に向けて努力していくこととし、各支部の協力を要請した。
「会費納入状況について」
前年度に比べ、未納の支部が減少しているが、本来の会費納入期日である5月末日を厳守して欲しい旨の要請をした。また、未納の3支部、特別会員並びに賛助会員については、早急に納入されたいとの要請をした。
「その他」
事務局より、外部監査について次のとおり説明があった。「所管官庁である文化庁はじめ各省庁の所管団体のうち、資産額100億円以上、または収支決算が10億円以上の公益法人に対して公認会計士等による監査を受けるよう要請があった。当財団は、いずれにも該当していないが、会員に対して公正に業務を行っていることを示すためにも監査を依頼することとした。なお、監査の結果、適正に運営されているとの報告があったが、会計については、各支部会計、県連会計の区分を明確にするよう指摘があった。」
兵庫県支部 児玉利夫支部長を理事に選任
このたび、評議員会において、関西地区の充実を図る重要性から、(財)日本太鼓連盟兵庫県支部支部長児玉利夫氏が新たに理事に選任されました。 |
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支部事業・支部経理の明確化について
外部監査の結果、支部事業並びに支部経理を明確にするため、各支部におかれては、本年度から次のように対応されるようお願いいたします。
1. 支部事業を、財団主催事業(全国フェスティバル、ジュニアコンクール、障害者大会、全国講習会)並びに共催、後援事業(ジュニアコンクール予選、支部講習会、財団助成金交付事業)とする。
2. 支部経理を、上記支部事業に関わる収支並びに財団の年会費及び入会金とする。支部に銀行または郵便口座を支部長(または事務局長)名で設置する。
3. 支部規約及び支部役員構成、支部加盟団体等の資料を整備する。支部の最高議決機関(総会または理事会)を明確にし、開催のうえ議事録等を保管する。
4. 支部帳簿に記帳し、証憑類を保管する。
5. 財団に対し、定められた報告を遅滞なく行う。 |
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第16回運営委員会を開催
第16回運営委員会が5月21日に開催され、次の事項が審議、承認されました。
「2001年度事業報告について」
○退会メンバーの対応について
退会理由の内、メンバーの減少による解散が多数あるため、その対応を検討した。結果、退会の理由がチームの解散であって、メンバーが継続を希望する場合には、他団体への移行を推奨することとした。
「2002年度事業実施について」
○日本太鼓助成金交付事業
助成金交付20事業については、前回の運営委員会で18事業を決定したが、島根県支部が申請事業を取り止めているため、新規申請6事業に対し3事業を追加承認することとして審議を行った。その結果、下記の通り承認された。
*なお、今後、優先事業であっても、締切期日に間に合わない場合や申請書類が不備の場合には見送ることとした。
○第6回日本太鼓全国フェスティバル
6月29日に神奈川県で開催する第6回日本太鼓全国フェスティバルの実施内容を報告した。また、第7回フェスティバル開催地については、引き続き審議していくこととした。
「支部開設について」
○北海道道西支部開設について
事務局より資料を基に説明を行い、審議の結果、承認されたため会員組織規程に基づき理事会に諮ることとした。
○鳥取県支部開設について
先日、鳥取県太鼓連盟総会に出席した小野委員より資料を基に次のような説明があった。
「鳥取県では財団へ加盟を希望する団体は特別会員からの移行を含め4団体であった。しかしながら、希望団体が増える可能性が高いので、開設の条件となっている5団体となった時点で正式申請を受けることとしたい。」
これについて、検討した結果、承認は委員長へ一任、運営委員には速やかに報告し、承認後は理事会に諮ることとした。
「賛助会員の入会について」
事務局は資料を基に賛助会員として申請のある団体について詳細に説明を行った。検討の結果、同社の太鼓に関する方向性などを確認したうえ、次回の委員会で審議することとした。
「その他」
塩見委員長より、外部監査について次のとおり説明があった。
「所管官庁である文化庁はじめ各省庁の所管団体のうち、資産額100億円以上、または収支決算が10億円以上の公益法人に対して公認会計士等による監査を受けるよう要請があった。当財団は、いずれにも該当していないが、会員に対して公正に業務を行っていることを示すためにも監査を依頼することとした。なお、監査の結果、適正に運営されているとの報告があったが、会計については、各支部会計、県連会計の区分を明確にするよう指摘があった。」
追加日本太鼓助成金交付事業決定のお知らせ
運営委員会において審議の結果、下記の3事業が承認され、決定いたしました。承認された事業には助成金20万円が交付されます。
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第5回日本太鼓ジュニアコンクール山形県大会兼環日本海和太鼓フェスティバル(山形県支部)
7月28日(日)大浜海岸特設ステージ(山形県酒田市) |
(2) |
群馬県教職員和太鼓実技研修会(群馬県支部)
8月1日(木)群馬県総合教育センター(群馬県伊勢崎市) |
(3) |
第1回合同演奏会(奈良県支部)
10月6日(日)やまと郡山城ホール(奈良県大和郡山市) |
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各地のたより
(1)2002年8月3日(土)創作太鼓駒の会 第13回定期演奏会(宮城県小牛田町)
<主催:創作太鼓駒の会 会場:小牛田町文化会館>
お問合せ:桂田一彦 Tel/Fax.0229-32-3732
(2)2002年8月10日(土)第17回霧島高原太鼓まつり(鹿児島県蛤良郡)
<主催:霧島高原まつり実行委員会 会場:みやまコンセール野外音楽堂>
お問合せ:霧島高原太鼓まつり実行委員会 Tel/Fax.0995-78-2115 |
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日本太鼓が各地で関係団体に協力
第3回競艇名人戦競走
4月9日(水)大阪府住之江競艇場で開催された第3回競艇名人戦競走のオープニングとレースの合間に日本太鼓を演奏しました。
今回は石川県の大場潟乃太鼓が演奏し、力強いバチさばきで、大勢の競艇ファンを釘付けにしていました。演奏終了後、メンバーに観客が握手を求めるなど、大変な人気でした。
(大場潟乃太鼓)
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memento mori 北海道2002
6月2日(日)北海道旭川市民文化会館において、日本財団主催による「memento mori 旭川2002」が開催されました。これは、限りある人生を自分らしく、より良く生きるために、各専門家の方々の講演を聞きながら、死を考えるという主旨のものです。今回は記念演奏として北海道のジュニアチーム夕張太鼓保存会「竜花」が出演しました。
(夕張太鼓保存会「竜花」)
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東京シティロードレース2002
5月19日(日)東京シティロードレース実行委員会(構成団体:笹川スポーツ財団、東京新聞等)主催による「東京シティロードレース2002」が国立競技場において開催されました。
今回は東京都・荏原流れ太鼓ひびき会と千葉県・上総ノ国 房州太鼓が出演し、約6,000人のランナーへ応援演奏を行いました。
(荏原流れ太鼓ひびき会)
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北海道道西・鳥取県に支部が開設
このたび、新たに財団法人日本太鼓連盟の北海道道西支部、鳥取県支部がそれぞれ開設いたしました。これで、35都道府県に37支部が設置されたことになります。
財団法人日本太鼓連盟北海道道西支部
林 富美雄支部長(躍進滝川太鼓保存会会長)
新緑の映える2002年6月11日、北海道道西支部を開設することができました。私共会員一同、常に支部の活性化を図りながら、素晴らしき日本太鼓の伝統芸能を継承し、地域社会の活動、又、各団体の更なる発展を願いつつ活力ある支部運営に取組む所存であります。今後とも皆様の変わらぬご支援、ご協力を賜りますよう心からお願い申し上げ、ご挨拶といたします。
<加盟団体 10チーム>
赤平火太鼓保存会、岩見沢百餅太鼓、艶美火舞羅、
栗沢太鼓同志会、長沼百年太鼓保存会、
躍進滝川太鼓保存会、ほろむい太鼓同好会、
南町わらべ太鼓、夕張太鼓保存会「竜花」、
夕張南部幌南太鼓獅子舞保存会
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財団法人日本太鼓連盟鳥取県支部
福田 武規支部長(倉吉打吹太鼓振興会会長)
和太鼓の和は心の和であり、人の和だと思います。人と人との交流を軸に技術の向上と地域に密着した活動をしています。この太鼓の響きで、人創り、町創り、夢創りが基本です。人情と思いやりの仲間が沢山います。
本年は鳥取県で国民文化祭が開催されます。感謝とおもてなしの心でお待ちしています。そして、(財)日本太鼓連盟に加盟させて頂き、知恵と勇気をお借りし、夢と感動ある太鼓を目指し、挑戦したいと思います。よろしくお願い申し上げます。
<加盟団体 6チーム>
米子がいな太鼓、倉吉打吹太鼓振興会、
逢鷺太鼓連、岸本風神太鼓振興会、八東平成太鼓、
名和長年太鼓保存会
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