KOKORO−NET日本語クラス
冨田栄子(日本語講師)
日本語クラスは1998年5月から始まりました。そもそもKOKORO−NETは、神戸に来ている外国人教員、研究者、留学生の主に家族を支援するために設立されたグループです。その活動の中で、日本という、世界の中では特殊な言語を使っていて、一般的には英語などの外国語が通じにくい国で生活するには、言葉が大きな問題であり、不安の要因であることが、よく解りました。留学生本人は、大学の課程の中や、来日前に日本語教育を受ける機会があり、専門によっては必須の条件にもなりますが、その家族となると、なかなか、その機会には恵まれません。また、教授、講師などの教員や研究者本人にとっても、その時間や機会を見つけるのは難しいようです。神戸でも大学外の公的な場所でいくつかの日本語クラスが運営されていたり、マントゥーマンで教えてもらえるボランティアの先生を紹介してもらえる制度も在りますが、利用に期間などの制限があったり、相手によって、相性の問題や当たり外れがあったりするようです。夜間の日本語クラスも、身軽な人には良いのですが、子供さんが居たりすると出かけるのが難しく、せっかくの機会を利用出来ないようです。
そういう事情のある中で、何か出来ないかと模索していた折、神戸大学のキャンパスの中で場所をお借りすることが出来るようになり、私達の手で、日本語クラスを始められるようになりました。講師は、30年以上日本語教育に携わっている現役の教師である三宅さんと、彼女ほど長年ではありませんが、現役で教えている私とで当たることになりました。二人とも、ボランティアで教えるのは、初めての経験でしたので、不安も大きかったです。2001年度からは、講師としては、三宅さんに代わり、やはり長年教えている一岡さんに加わってもらい、現在は二人で週一日、隔週で担当しています。という訳で、ボランティアのクラスとは言え、経験あるプロの教師が担当していますので、クラスの内容には自負を持っています。一岡さんには日本語クラス以外の、いろいろな行事にも参加してもらっています。一般の日本語クラスと違い、単に教室内での先生と生徒という関係だけでなく、他のいろいろな行事や文化紹介のプログラムを通して、友人として、時には生徒の国の文化や料理の紹介を受ける側として、その時々で立場も変わり、双方向の交流ができるところが、すばらしいところだと思います。当初は、当然予算も無く、それぞれ手持ちの教材や文具品を持ち寄ったり、文字表を手作りしたりしてスタートしました。
今年度は、毎週水曜日、午前2時間が初級II、午後2時間が初級Iという形態で、5月からの前期30回、10月からの後期30回のクラスを実施しました。幸い、今年度からは、財団からの援助を頂くことが出来、念願だった視覚教材なども、一部、揃えることが出来るようになりました。そして、一番の懸案事項であった、授業中のベビーシッターもお願いすることが出来るようになり、それまで日本語を勉強したくても子供さんが居る為に出来なかった方達に場を提供できるようになりました。シッターはボランティアの学生さん達にお願いしていますが、私達としては、ややこしい事をお願いしてと、申し訳なく思っていましたが、男女を問わず、意外に楽しんでやって下さっているようで、国際交流、世代交流にもなって、思わぬ成果で嬉しく思っています。最近は日本で出産する方も増えて、日本語の勉強の傍ら、妊娠、出産を経て、赤ちゃんを連れてクラスに帰って来るというケースも、もう来年度くらいには現実になりそうです。現在の状況では、ベビーシッティング専用に使える場所の確保が出来ていませんので、大学のキャンパス内では難しい問題ですが、解決できないものかと考えています。
生徒さんたちは、国籍は勿論、身分も多種多様で、教員や研究者本人と、その家族、そして留学生の家族です。家族は、夫や妻、また兄弟姉妹などが大学に来ている方達です。家族として日本に滞在していても、本来は自らも研究者であったり、それぞれ専門の分野の教員であったりする方達の割合が高いのが特徴かもしれません。日本語の学習経験もまちまちで、本国でかなり勉強してきた方もあれば、全く予備知識の無い方も居て、それらを初級二つのレベルのクラスだけで対応しなければなりません。また、初級を終了しても、もっと続けたいという要望にも対処できる状況ではありませんので、とりあえず、すぐに役立つ日本語を最優先に考えて割り切らざるを得ません。解決できない問題も多々ありますが、来るのが楽しいクラス、いい友達、いい日本人に出会えて、そして、いつの間にか日本語も上達していたという、行って良かったと思ってもらえるクラスを目指して、これからも最善の努力をしていくつもりです。
ココロカフェ
植田孝子
私は昔、小学生と中学生の娘を連れて英国で1年程生活した経験があります。日本では思ってもみなかった程良くして下さり、特に英国学校側が中学の娘には、言葉が分からない経験をした移民のお友達をつけてくださり、ボランティアの先生が個人的なレッスンを別にして下さり、英語の何も分からない娘たちが楽しく過ごせ、良い思い出をいただきました。娘のように、良い思い出を残して故国に帰っていただきたいという思いから、今、日本に来られている外国の方々のお役に立てたらと思っていました。留学生の方々が今、希望していることを聞いて出来るだけそれに添うように、また私たちが紹介したい日本文化や日本事情も加えてプログラムを立てました。
まず生活するのに困ることは買物。おとうふとチーズを間違えたという声があり、スーパーへの買物にスタッフの方々が同行、分らないものを説明(初めてのもの、ごぼうやれんこんの煮物などを買って試食して味わってもらう)、また病院も実地に見学し、困った時、どのようにするかなどを説明。また、日本の食べ物で、てんぷらとフライの違いを教えてとの声があり、実際に作って試食しながら説明し、幼稚園に持っていくお弁当はどのように作ればよいかとの声より、皆でいっしょにおにぎりなどを作り試食し、作り方を説明しました。
一方伝統文化の紹介ということで、お花、お茶、着物を着る会を開催しました。初めての体験で皆さん大喜びの様子でした。またバーベキューや淡路島のパールブリッジを渡っての一日バスツアーなどなど。日本語の勉強にとカラーのパンフレットを作り、皆さんに渡して説明をしました。母国に帰られる人にはフェアウエルパーティを開き、千代紙で折った千羽鶴と手作りの神戸の町の絵ハガキなどのおみやげを添えました。
これらの活動を通して、留学生家族の皆さんが日本に滞在して良かったと思っていただけたなら、昔の恩返しが出来たととても嬉しいのです。
|