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おわりに
 宍道湖・中海の魚類生態の調査として、優占する3種の最近における移動のパターンと食性を若干調べて報告した。
 コノシロの大量死やスズキ(セイゴ)の大量発生はしばしば話題になるが、その現象を誘引する生態系の乱れに対する認識は十分とはいえない。かつては、多くの魚介類が季節を彩ってきた当水域の生態系は確実に乱れてきている。その乱れの様子は、今後、深刻な事態を引き起こしかねない状態である。
 調査を通じて、本水域の生態系の再生には、住民の環境保全意識の高まりとともに漁業の振興が不可欠であることを実感した。やはり、汽水の豊かな恵みを住民が享受するところに環境改善の道筋が開かれていくように思われる。
 そのためには、現在多く棲息する魚種の生態を把握することは、減少した魚種の原因の究明にもつながり、かつての豊穣な水域の復活を目指すための手ががりになるものと思う。
 
<謝辞>
 今回の調査を進めるにあたり、宍道湖・中海の漁業関係者の方々には親身なご協力をいただいた。特に松江市浜左陀町、門脇陽一・節子夫妻には刺網漁、安来市論田町、山本武志・澄江夫妻にはます網漁で並々ならぬお世話をいただいた。また、松江市本庄町の鮮魚商、三代裕司・富代夫妻には本庄水域のます網漁の出荷状況のまとめに多大なご協力をいただいた。ここに厚く感謝申し上げます。
 なお、本報は、財団法人宍道湖・中海汽水湖研究所が2001年度日本財団助成事業によりおこなった調査・研究の一部をまとめたものである。
 
<引用文献>
須永哲雄(1990)魚類とその分布. 「宍道湖・中海の魚介類」:1−13. (宍道湖・中海淡水化 に伴う水質管理及び生態変化に関する研究委員会)
越川敏樹(1998)出荷内容から見た中海本庄工区内における魚介類の生息状況.LAGUNA No. 6:157−164. (島根大学汽水域研究センター)
越川敏樹(2000)中海における魚介類の生息状況の変遷−小型定置網漁の10数年間の変化より―. ホシザキグリーン財団研究報告No. 4:203−214







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