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2.3 水質シミュレーションの計算条件
1)基本条件
対象海域をはじめ格子分割、鉛直層区分、再現期間など基本条件は流動シミュレーションの設定と同じとした。なお、植物プランクトンについて宍道湖に優占する藍藻類と中海に優占する珪藻類の2つの群集を考慮した。
モデルの概念図を図2.13に示し、水質シミュレーションの計算条件を表2.2にまとめた。
表2.2 水質シュミレーションの計算条件一覧
| 項目 |
設定値 |
| 基本条件 |
流動シミュレーションと同様 |
| 計算の時間刻み |
200秒 |
| 湖内の流れ |
流動シミュレーション結果から得られた速度成分を利用. |
| 湾口境界条件 |
観測値より日毎の水質を推定. |
| ・DO,CODについては、美保湾内の公共用水域水質調査結果(鳥取県衛生研究所)を利用. |
| ・その他の項目については、宍道湖・中海水質月報(島根大学)から美保湾に近いSt.8の観測値を利用. |
| 流入汚濁負荷量 |
宍道湖・中海へ流入する34地点からの排水を考慮. |
| ・斐伊川については、各月水質調査結果(国土交通省 中国地方整備局 出雲工事事務所)よりL−Q曲線を作成し、日毎の負荷量を推定(図2.14). |
| ・その他中小河川や事業所等からの負荷量については、既存資料から斐伊川との流量比を乗じ設定. |
底泥栄養塩溶出量
および酸素消費量 |
底質の調査結果より温度応答関数を算出. |
| ・リン溶出速度=α×exp(0.2602・T−0.3・DO) |
| ・窒素溶出速度=α×exp(0.1796・T) |
| ・酸素消費速度=α×exp(0.0693・T) |
| ここで単位はmg/m2/day、:Tは水温、DOは酸素濃度. |
| αについては水深に応じて値を設定(図2.15). |
| 水平渦拡散係数 |
9.21×104cm2 /s |
| 鉛直渦拡散係数 |
流況シミュレーションで得られた渦拡散係数を入力. |
| 生物パラメータ |
文献やシミュレーション事例により設定. 一部試行錯誤による調整により決定(表2.3). |
| 貝の代謝パラメータ |
宍道湖はヤマトシジミ、中海はホトトギスガイによる代謝を考慮(表2.4). |
|
図2.13 水質シュミレーションモデルの概念図
(拡大画面:43KB) |
 |
図2.14 斐伊川の流水汚濁負荷量の日変化較
表2.3(1)植物プランクトンのパラメータ
| パラメータ |
単位 |
設定値 |
| 藍藻類 |
珪藻類 |
| |
|
宍道湖 |
|
| 最大可能成長速度 |
day−1 |
0.70exp(0.0633T)
中海 |
0.59exp(0.0633T) |
| |
|
0.40exp(0.0633T) |
|
| 呼吸速度 |
day−1 |
0.02exp(0.0524T) |
0.02exp(0.0524T) |
| リンの最大吸収速度 |
day−1 |
12.0 |
12.0 |
| 窒素の最大吸収速度 |
day−1 |
12.0 |
12.0 |
| P04摂取の半飽和値 |
μg−atm/L |
2.0 |
2.0 |
| NH4摂取の半飽和値 |
μg−atm/L |
1.0 |
1.0 |
| N03摂取の半飽和値 |
μg−atm/L |
2.0 |
2.0 |
| 窒素選択摂取のパラメータ |
(μg−atm/L)−1 |
0.7 |
0.7 |
| リンクォータの最大比収量 |
− |
8.0 |
8.0 |
| 窒素クォータの最大比収量 |
− |
6.0 |
6.0 |
| 沈降速度 |
cm/s |
1.0×10−4 |
2.0×10−4 |
| 枯死速度 |
(mgC/m3)−1 ・day−1 |
1.0×10−5 exp(0.0693T) |
2.0×10−5 exp(0.0693T) |
| 光合成の最適光強度 |
cal/cm2 /day |
100 |
100 |
| C/Chl−a比 |
重量比 |
50.93 |
50.93 |
| C/P比 |
重量比 |
161.30 |
161.30 |
| C/N比 |
重量比 |
15.90 |
15.90 |
| TOD/C比 |
重量比 |
3.60 |
3.60 |
| COD/C比 |
重量比 |
1.372 |
1.372 |
|
表2.3(2)動物プランクトンのパラメータ
| パラメータ |
単位 |
設定値 |
| 最大摂食速度 |
day−1 |
0.18exp(0.0588T) |
| 飼料制限係数(Ivlev指数) |
(mgC/m3)−1 |
0.01 |
| 捕食の閾値 |
mgC/m3 |
0.0 |
| 消化効率 |
% |
70.0 |
| 総成長効率 |
% |
30.0 |
| 基礎代謝速度 |
day−1 |
0.0214exp(0.0637T) |
| 死亡速度 |
day−1 |
5.0×10−4exp(0.0693T) |
| C/P比 |
重量比 |
50.0 |
| C/N比 |
重量比 |
6.0 |
| TOD/C比 |
重量比 |
3.31 |
| COD/C比 |
重量比 |
1.46 |
|
表2.3(3)その他のパラメータ
| パラメータ |
単位 |
設定値 |
| 光消散係数 |
m−1 |
透明度から次式を近似(図2.16). |
| 0.464−0.026・Chla+0.211・Chla2/3 |
| デトリタスの無機化速度 |
day−1 |
0.010exp(0.0693T) |
| デトリタスの沈降速度 |
cm/s |
5.0×10−4 |
| 溶存態有機物の無機化速度 |
day−1 |
0.005exp(0.0693T) |
| 分解余剰物の生成割合 |
% |
25.0 |
| デトリタス中の |
|
|
| C/P比 |
重量比 |
63.90 |
| C/N比 |
重量比 |
7.2 |
| TOD/C比 |
重量比 |
3.01 |
| COD/C比 |
重量比 |
1.33 |
| 溶存態有機物中の |
|
|
| C/P比 |
重量比 |
124.98 |
| C/N比 |
重量比 |
10.0 |
| TOD/C比 |
重量比 |
2.82 |
| COD/C比 |
重量比 |
1.25 |
| 硝化速度(NH4→N02) |
day−1 |
0.002exp(0.0693T) |
| 硝化速度(N02→N03) |
day−1 |
0.025exp(0.0693T) |
| 海面再曝気係数 |
day−1 |
海上風速の関数として設定. |
|
図2.16 水中の光消散係数とクロロフィルa濃度との関係
データは1998年度の観測結果による。光消散係数は透明度の測定値から算出。 |
2)貝の代謝パラメータ
宍道湖についてはヤマトシジミ、中海についてはホトトギスガイによる代謝を考慮し水質シミュレーションを実施した。過去の生物実験結果や既存資料等を利用して、貝による濾水と呼吸についての特性を解析した。濾水速度は次のように表される;
濾水速度(L/g乾重量/hr)=4×Fmax×θ(1−θ)
ここでFmaxは最大可能濾水速度(L/g乾重量/hr)で、θは次のように表される;
ここでTは水温(℃)、Tminは年間の最低水温(℃)、Tmax、は年間の最高水温(℃)、bは定数である。また、呼吸速度は次のように表される;
呼吸速度(L/g乾重量/hr)=α×exp(β・T)+η×濾水速度
ここでは0℃での静止呼吸速度(L/g乾重量/hr)、βは温度係数(℃−1 )、ηは活動呼吸の割合である。ヤマトシジミ、ホトトギスガイについて、設定した代謝パラメータを表2.4に示した。
表2.4 代謝パラメータ一覧
| パラメータ |
単位 |
ヤマトシジミ |
ホトトギスガイ |
| 最大可能濾水速度 |
L/g乾重量/hr |
7.08 |
8.73 |
| 定数b |
− |
2.0 |
2.50 |
| 年間最低水温 |
℃ |
−5 |
−5 |
| 年間最高水温 |
℃ |
40 |
40 |
| 0℃における静止呼吸速度 |
L/g乾重量/day |
0.005 |
0.005 |
| 静止呼吸の温度応答係数 |
℃−1 |
0.0693 |
0.0693 |
| 活動呼吸の割合 |
% |
20 |
20 |
| C/P比 |
重量比 |
35 |
35 |
| C/N比 |
重量比 |
5 |
5 |
| O/C比 |
重量比 |
3.15 |
3.15 |
|
宍道湖におけるヤマトシジミの分布は、「有用水産動物生態調査シジミ資源量調査(1998年6月、9月、11月に100地点で実施)」の結果を参考にし、個体成長モデルを用いて水深別の資源量の日変化を算出した。この結果を基に水平分布を割り当て、日毎の分布を決定した。一方、中海におけるホトトギスガイの分布については、1996〜1998年にかけて実施された分布調査結果を参考にした。資源量の日変化はヤマトシジミの変化を参考にした。シミュレーションに適用した、6月初旬、9月初旬及び11月中旬の分布(軟体部乾燥重量)を図2.17に示した。
図2.15 シミレーションに設定した底泥フラックス量
0℃におけるリン、窒素溶出および酸素消費速度の分布
(拡大画面:97KB) |
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図2.17 シミレーションに設定した二枚貝類の分布
ヤマトシジミ(宍道湖)とホトトギスガイ(中海)の軟体部乾燥重量 |
(拡大画面:106KB) |
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