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はじめに
 当団体は、障害者・高齢者の就労、社会参加の推進を中心に活動してきました。その活動の中で感じたことは、障害者が地域社会の中で住民として生活を送るときに、様々な障壁が目の前に立ちふさがるということです。その一つが社会における障害者への偏見だと思われます。
 たまたま、活動にご協力を頂いた落語家の方から「古典落語の中には差別用語を使用しているために上演禁止の演目が多くある」と伺いました。そこで、3年前に当団体の障害者・関係者等を対象として、上演禁止作品の落語会と検討会を行いました。そこでは色々な意見があり、統一した見解は見られなかったものの『偏見差別を考える』きっかけとなりました。
 そもそも落語は、社会の底辺の民衆により支えられてきた「差別からもっとも遠い芸」である、といわれています。しかしながら、現在、古典落語の半数(約100話)近くが上演出来なくなっているのは、「障害者等に関する差別用語の使用だけなのだろうか」という疑問に行き当たりました。
 その後、日本財団からの支援をいただき、古典落語をひとつの題材として、上演禁止作品の落語会・検討会・アンケート調査をこの2年間実施してきました。自主上演を含めた6回の上演・検討会は、地域差も考え中部地方(名古屋)でも行っています。そこに集まり、語られた障害当事者や関係者からの意見の多くは、「その言葉があることで落語が生きていた」「差別は感じない」という声が殆どでした。その結果を受け、上演禁止の背景の把握と『人権における真の偏見差別を考える』ためにマスコミの方々・落語に語られている障害の当事者の方・落語家の方・関係者の方の座談会を、今年1月に行っています。
 その結果、これまで実施してきた中で明瞭になってきたことは、上演禁止の背景が障害者当事者から発せられた不快感ではなく、『障害者が不快であろうというイメージで判断されている』ということです。当事者からの声ではない偏見等によって判断されてゆくことは、一般の社会に多く流布している構造であるとも言えます。今回の冊子作成に当たって、情報の伝達機関として影響が大きいマスメディアの方に是非ご覧頂きたく結果をまとめてみました。そして、障害者と関わる方々にも、自己を振り返る為にご活用いただきたいと思います。また、座談会を中心に障害者や関係者から発言のあったもの20項目を、自己点検マニュアルとして最終ページに掲載しました。是非ご覧ください。
 今後の課題として、落語興隆の地であり、差別問題に長い歴史を持つ関西方面での調査や、落語協会、有識者の方々の見解などがあります。可能であればその調査も行い、さらに検討を深めていきたいと考えております。
 これまで行った6回の上演会で最も有益であったのは、立場の異なる人が一同に会して共通のテーマについて話し合えたこと、そして多くの人と人とが出遇うことが出来たことです。『古典落語を通した差別表現に関する調査〜東京・名古屋編〜』をまとめるにあたり、座談会にご出席の方々、また快く会場の提供・準備にご協力いただきました団体の皆様、落語会にご参加いただきました多くの皆様に改めて御礼申し上げます。
2002年3月3日
特定非営利活動法人
障害者自立生活支援センターあゆみかん
 
落語鑑賞会
全編手話付き
師匠 熱演
 
私達の主張
I 落語上演会
実施目的
 障害者等に関する差別用語が多く、上演出来なくなっている古典落語を、障害者およびその関係者等を対象に上演し、その作品についての人権等の差別について、参加者の生の声を聞くことを中心にアンケート記入と検討会を実施しました。
 
実施状況
 以下の開催地および日程で行いました。
 
・第1回 東京都北区
・・・
滝野川会館
 
 
 
1999年10月14日(木)
上演 14:30〜17:00
 
 
 
検討会 17:30〜19:00
・第2回 東京都北区
・・・
上十条区民センター
 
 〔日本財団助成〕
 
2000年6月23日(金)
上演 14:30〜17:00
 
 
 
検討会 17:30〜19:00
・第3回 東京都新宿区
・・・
区障害者福祉センター
 
 〔 同 〕
 
2000年11月7日(火)
上演 10:30〜12:00
 
 
 
13:00〜15:00
 
 
 
検討会 15:30〜17:00
・第4回 東京都小平市
・・・
国立精神・神経センター武蔵病院
 
 〔 同 〕
 
2000年12月9日(土)
上演 13:30〜15:30
 
 
 
検討会 15:10〜15:55
 
 
 
上演 16:00から16:30
・第5回 名古屋市中区
・・・
栄ガスビルホール
 
 〔 同 〕
 
2001年9月30日(日)
上演 13:30〜15:30
 
 
 
検討会 15:30〜16:00
 
 
 
上演 16:10〜16:50
・第6回 東京都渋谷区
・・
日本アムウェイ(株)
 
 〔 同 〕
 
2001年11月22日(木)
上演 13:00〜16:30
 
 
 
検討会 16:30〜17:30
 
実施回数 1 2 3 4 5 6
参加者 38 63 43
53
44 76 48 365
アンケート提出 精神障害   10 0 2 4 6 21
知的障害   0 12 0 0 0 12
身体障害   2 20 0 4 0 26
障害不明   0 0 0 2 1 3
家族   6 3 16 9 1 35
関係職員   11 3 4 2 1 21
ボラ   3 2 0 4 5 14
市民   7 1 1 25 2 36
所属不明   0 0 0 8 6 14
  39 41 23 58 22 183
*アンケート集計に関しては、関係職員等の欄に(関係職員・ボラ・市民)を含めています。
 
演目 参加者 ひどいと思う どちらともいえない ひどいと思わない
かぼちゃや 精神障害 0 3 10
知的障害 0 0 5
身体障害 1 1 5
障害不明 2 0 1
家族 1 7 20
関係職員等 0 8 37
所属不明 1 5 8
合計 5 24 86
・知的障害者が登場。
 
演目 参加者 ひどいと思う どちらともいえない ひどいと思わない
金明竹 精神障害 2 5 14
知的障害 0 0 4
身体障害 1 2 6
障害不明 1 1 1
家族 0 8 25
関係職員等 2 17 44
所属不明 1 1 10
合計 7 34 109
・知的障害者が登場。
 
演目 参加者 ひどいと思う どちらともいえない ひどいと思わない
牛ほめ 精神障害 0 0 0
知的障害 0 0 0
身体障害 1 1 13
障害不明 0 0 0
家族 0 0 3
関係職員等 0 0 4
所属不明 0 0 0
合計 1 1 20
・知的障害者が登場。
 
演目 参加者 ひどいと思う どちらともいえない ひどいと思わない
道具屋 精神障害 1 3 6
知的障害 0 0 0
身体障害 1 4 13
障害不明 0 0 0
家族 0 2 7
関係職員等 0 10 9
所属不明 0 0 0
合計 2 19 35
・知的障害者が登場。
 
演目 参加者 ひどいと思う どちらともいえない ひどいと思わない
心眼 精神障害 2 5 14
知的障害 0 0 0
身体障害 2 10 11
障害不明 1 1 1
家族 4 6 20
関係職員等 5 19 39
所属不明 1 3 9
合計 15 44 94
・視覚障害者が登場。







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