(3)4台のエンジンを搭載した大型機
DC−4およびDC−6をはじめとする4台のエンジンを搭載した大型機は、農薬散布には使われないため、油分散剤散布用の機器が装備されていることが多い。飛行距離の長いこれらの航空機は、1,500〜3,000ガロン(5,700〜11,000リットル)の分散剤を散布することができる。
Lockheed(ロッキード)C−130は、現在使用されている最大の航空機で、飛行距離も長く、耐荷重も大きい。また油分散剤散布のための特別な装備も必要ない。
Airborne Dispersant Delivery System(ADDS=分散剤空中散布システム。ADDSPACKとも呼ばれている)が採用されているからである。この携帯式のロールオン・システムは、飛行中に開けておくことのできるカーゴ・ドアが後部についているC−130であれば、どの機体でも使用することができる。
このADDSシステムの薬液の容量は5,500ガロン(21,000リットル)で、ブームの幅は40フィート(12.5メートル)である。散布できる割合は、1エーカー当たり0.04〜9.6ガロン(1ヘクタール当たり0.4〜90リットル)と幅広い。このシステムは、陸上および海上で幅広くテストされており、油流出事故の対応業務において効果的に使用されている。ADDSを使用できる航空機は、フロリダ、シンガポールおよびイギリスで待機しており、世界のほとんどすべての地域にすぐに派遣できる状態にある。
写真−V.1.3: |
油分散剤散布用のADDSパックを装備したHercules型機(1993年4月、テキサス) |
写真−V.1.4:油分散剤散布用のADDSパック(拡大)
図−V.1.3:ADDSパック搭載のC−130型機
(拡大画面:51KB) |
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(4)ヘリコプター
ヘリコプターは、特定の型式のヘリコプター専用に設計された統合式噴霧ユニット(integral spray unit)を取り付け可能である。
または、噴霧用ブームとポンプを備えたslung bucketを使用する方法も可能である。
〔1〕胴体の取り付け型
多くの場合、ヘリコプター上の散布装置は、胴体にタンクと散布桿を取り付けたもので、固定翼機に取り付けられたものと同様である。
また、機内にスプレー・ユニットを組み込むものもある。
〔2〕「バケット」型
バケット式装置は汎用性が大きく、時間のかかる取り付け作業が不要であり、ヘリコプターの型式も選ばないという利点がある。
イ. 油分散剤の積込量
バケット式装置には100〜800U.S.ガロン(378〜3000リットル)の範囲でいくつかのサイズがある。しかしながら、実際に積み込み可能な油分散剤の量は、ヘリコプターの有効搭載量制限に左右されることになる(並びに、燃料補給基地から散布作業現場までの距離)。
ロ. 散布中の速度
ヘリコプターは、散布中は油塊の上空でホバリングせず、約60〜80ノット(時速69〜92マイル、111〜148km/時)の速度で前進することになる。
ハ. 散布操作
散布操作は、操縦席から直接制御される。このような「バケット」型散布装置の2組を交互に用いることによって作業効率を高めることができる。この方式は、また、ローターによる下方への空気流による散布パターンへの影響を受けにくい利点をもっているが、胴体の下に吊り下げるシステムを用いると、短いワイア環索を用いない限り、必要な低高度を維持するのが困難になる。しかしながら、「バケット」を安全に切り離すためには、少なくとも、1.5m(5フィート)のワイア吊輪を用いなければならない。
ニ. 渦流の影響
ヘリコプターがホバリング中、または低速で飛行中は、回転翼からの洗流が大きな渦流を発生させ、油分散剤の降下を阻害することになる。しかし、前方移動し、移動速度が高まると、回転翼は本質的に固定翼と同じように作用し、渦流は劇的に減少し、正常通りの散布作業が可能となる。
ホ. ノズルの選択
ノズルの選択と、使用するノズル数は、ヘリコプター散布システムの最適化のために特に重要なファクターである。100ノットを下回る速度の場合、空気せん断の作用はそれほど重要なものとはならない。ノズル吐出口の直径は、一般に、D10〜46(0.39cm、0.156インチ)が必要となる。
ヘ. 低温、高粘度油分散剤の使用
slung bucketをヘリコプターに搭載して、非常に低温(0°F、−18℃)で散布するとき、粘度の高い油分散剤を使用する場合は散布装置の再カリブレーションが必要となる可能性がある。
写真−V.1.5:slung bucket型スプレーシステム
図−V.1.4: |
吊り下げ型散布用バケット。この構成要素は、油分散剤貯蔵タンク、ポンプ、散布用アームである。 |
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