国際会議出席報告
本報告は、日本財団助成事業「国際学術協力に係わる海外派遣」として実施した国際会議の出席報告であり、広く会員に報告すると共に同財団に深く感謝の意を表します。 |
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国際船舶海洋構造物会議専門家委員会出席報告
正員 鈴木英之*
1 はじめに
私の参加している国際船舶海洋構造物会議(ISSC 2003)の専門家委員会(Specialist Committee)は浮遊式生産システム(Floating Production System)に関する委員会で、委員の出席しやすさから、6月23日(日)から28日(金)にかけてノルウェー・オスロにて開催されたOMAE 2002(International Conference on Offshore Mechanics and Arctic Engineering)に合わせて第3回中間会議会が開催された。OMAE 2002のレセプションのある6月23日(日)の午前から午後にかけて昼食を挟んで開催され、OMAE 2002のレジストレーションとレセプションの開始する4時直前に終了した。その後もOMAE 2002の開催期間中に個人ベースで情報交換を行った。
会合が持たれたオスロは、国土の面積が日本とほぼ同じでありながら人口が450万しかないノルウェーの首都で、人口は約50万人で日本の地方都市よりも小さいくらいである。さすがに首都だけあって、博物館や美術館はいくつもあるものの、多少迫力にかけるのは致し方ないと思われた。
高緯度のため6月末のオスロは、夜10時になってもまだ明るく、気候はカラッとしていて夜に少し肌寒くなるものの、日中は過ごしやすかった。梅雨どきの湿度の高い日本から来ると大変快適であったが、晴れているのに雨が降ることが頻繁にあり、道を歩いている最中や道路沿いのオープンテラスで食事中をとっている最中に雨に降られたのには閉口した。
面白いのは、市内の鉄道やバスさらにはホテルや会議場の食事などで、入場券を確認しないことである。電車・バスの切符の買い方を知らないまま、切符を持たずに会議場に電車とバスで通っていた豪の者もいた。物価も高く、欧州、米国からの参加者と話をするとひとしきり物価の高さについて話に花が咲くという状態であった。物価が高いのはただ乗り、ただ飯の人間の分も負担しているからでは無いかと言うと、米国からの参加者が笑いながらうなずいていた。果物も野菜も南のスペインやイタリアからの輸入がほとんどで、結局のところ石油が出るために、生活水準が高く維持できているとの結論になった。
写真1
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会場となったオスロ大、数学者アーベルの生誕200年を記念する垂れ幕が下がっている。
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写真2 会議終了後、委員長およびProf. Boonstraとの昼食
2 委員会
本委員会の担当内容は、浮遊式生産システムの設計に関するもので、浮体とライザー・係留の連成挙動、さらに、信頼性手法の利用にあたっての不確実性の特定と定量化である。
本委員会の中間会議は今回で3回目となる。第1回はISSC 2000の最終日に開催地の長崎で開催され、ISSC 2000に参加していたメンバーで顔合わせをしたというものであった。第2回はOMAE 2001の開催されたリオデジャネイロで開催された。このとき実質報告書の内容を打ち合わせ、各自の分担を決め散会している。第3回は報告書の荒原稿を持ち寄り最終原稿に向けた議論を行う予定で行われた。委員会は10名の委員から構成されている。
当日は出席者の確認と、欠席者からの事前連絡が報告され、ついで代理出席者のために、自己紹介が行われた。出席予定であったDr. Nettoが家族の健康問題から出国が遅れ、会合に間に合わなかったため、委員長Dr. Brown, Prof. Boonstra, Dr. Nedergaard, Prof. Chatjigeorgiou(Prof. S. Mavrakosの代理)と私の計5名であった。前回議事録の確認に続いて、報告書の最終的な姿について議論が行われ、原稿の内容について各章ごとに検討を行った。全体ボリュームが理事会から指示された量を大幅に超える状態にあり、圧縮する必要が指摘され、最終原稿の目標ページ数を各章ごとに決定した。さらに、環境影響の取り扱い、船級協会やISOなどの規則関係を新たに追加することにした。また、今後への提言に関しては、天然ガスの生産、輸送が今後注目されるであろうことを指摘することが打ち合わされた。この方面に関しては、日本におけるLNG浮遊生産システムの検討、メタンハイドレートでの輸送が研究されていることに関心が向けられた。
今後の日程としては12月上旬に原稿を理事会に報告する必要があることから、完成原稿を取りまとめた上で、第4回の中間会議を11月4日にロンドンにて開催することを決め、散会した。
*東京大学大学院工学系研究科
OMAE 2002報告
正員 林 昌奎*
2002年6月23日から28日まで、ノルウェーのオスロにて、第21回海洋工学と極地工学に関する国際会議(OMAE 2002 OSLO, NORWAY)が開催されました。会議の主催は、米国機械学会・海洋工学部会(OOAE, ASME International)とノルウェー技術士協会(Norwegian Society of Chartered Engineers)で、日本造船学会は32ある共催団体の一員です。会議には、世界36ヶ国以上から425名以上が参加し、日本からは31名が参加しました。参加者が一番多かった国は、主催国のノルウェーではなく米国で、90名以上が参加しました。海事流体力学の巨匠であるUniversity of California Berkeley校のJohn V Wehausen教授の特別シンポジウムか設けられていたこともありましたが、米国のノルウェー石油産業への注目度の高さを示す数字でもあります。最も意外だったことは、アフリカのナイジェリアから20名を超える参加者があったことです。論文の発表が無かったので、どの研究分野が盛んなのか、研究水準はどのくらいなのかを伺うことは出来ませんでしたが、近い将来、ナイジェリアは海洋工学、特に海洋石油開発分野においての新興勢力になるかもしれません。
会議には、8つのテクニカルシンポジウムと2つのワークショップが設けられ、400件以上もの研究発表がありました。各シンポジウム別発表論文件数を表1に示します。発表論文の内容については、前回のOMAE2001が開催されたブラジル同様、北海に巨大な海底油田をもち、海洋石油開発が盛んな国での開催ということもあって、Floating Production and offloading System (FPSO), SPAR, Tension Leg Platform (TLP), Single Point and Spread Mooring System (SPM), 4th generation semisubmersiblesなど海底油田開発に関連する研究発表が多数ありました。特に海洋ライザー及び海底パイプラインに関連するセッションはオープニングセッション以外の全日程に組み込まれていました。
本会議に先立て23日に行われた理事会では、次回OMAE 2003とその後のOMAE会議の準備状況等についての報告がありました。OMAE 2003は2003年6月8〜13日の日程でメキシコのCANCUNにて、OMAE 2004は2004年6月にカナダのバンクーバーで、OMAE 2005はヨーロッパでの開催を予定しています。また、東京大学生産技術研究所の木下健教授がOMAE 2003のOcean Space Utilization Symposium Co-Coordinatorに推薦されました。
24日午前に行われたオープニングセッションでは、ノルウェーの石油・エネルギー産業に関連する講演の後、2000年8月にバレンツ海で演習中の事故により沈没したロシア海軍の原子力巡航ミサイル潜水艦クルスク(KURSK)の一連の引き上げ作業を記録したビテオの上映が、午後には引き上げ作業を担当したオランダのサルベージ会社Mammoet Holding B.V.社社長Frans van Seumerenによる招待講演がありまして、クルスク引き上げ作業についての興味深い話を聞くことができました。
個人的な興味もあり、海洋ライザーに関連するセッションを中心に会場を回りました。VIV (Vortex Induced Vibration)に代表される振動現象をともなう海洋ライザーや海底パイプの挙動解析、複数ライザー間の衝突及び相互作用に関連する研究発表が主な話題でした、6月26日に行われた複数ライザー間の衝突や相互作用に関するワークショップでは、ライザーに係わるこれまでの研究成果を含む現状、利用可能な公開実験データ、今後の実験計画などについての意見交換がありました。ワークショップで上がったライザーに係わる諸問題をまとめると以下のようです。
1. How do transients contribute to periodic excitation and memory effects?
2. Why is vibrational response of a flexible beam significantly less than for a rigid cylinder under equivalent conditions?
3. What are the effects of in-line vibrations on crossflow motion; what is the ratio of I/L : C/F; how do these affect damage rates?
4. How can we predict when single mode or multi mode response will occur?
5. What are the effects of angle of flow incidence on induced riser motion?
6. How can we select and model suppression devices?
7. How can empirical models for VIV reproduce 3D effects and stochastic response?
8. Can we use field measurements to complement full-scale tests?
9. How do full-scale tests compare with model tests?
10. How do we describe the effects of high Reynolds number, flow shear, turbulence and riser surface roughness?
11. How can we represent the bottom boundary conditions for SCRs?
前述のとおり、OMAE 2002にはJohn V Wehausen先生の功績を記念した「J. V. Wehausen Symposium on Water Waves, Ship Waves and Marine Hydrodynamics」の特別シンポジウムか設けられました。今年89歳になるWehausen先生が全セッションに出席する中、大盛況で25日、26日の2日間の日程を終えました。他のシンポジウムとパラレルに行われたため、一部のセッションにしか出席できず、残念に思っています。
オスロには2回目であり、都市そのものにあまり魅力がないせいか、懐かしい感はありましたが、不思議にも新鮮味はまったくと言っても良い程感じられませんでした。6月下旬という1年中最も良い季節なのに毎日が雨でしたし、会場が大勢の参加者が泊まる市内中心部から離れたオスロ大学だったため、移動に時間と手間がかかりました。初めて国際会議に参加した時は、自分の研究を発表することが精一杯で、他の研究発表にはほとんど目が届きませんでしたが、今回はオスロの土地柄、主催側の配慮に加え、自分が興味をもつ分野の論文発表が多いこともありまして、オープニングから最後のセッションまで集中することが出来ました。次回OMAE 2003は、2003年6月8〜13日の日程にてメキシコのCANCUNで開催されます。
表1 OMAE2002シンポジウムの別発表論文数
シンポジウム名 |
発表件数 |
Offshore Technology |
102 |
Safety & Reliability |
88 |
Materials Technology |
85 |
Pipeline Technology |
26 |
Ocean Space Utilization |
16 |
Ocean Engineering |
51 |
Polar & Arctic Sciences |
8 |
J. V. Wehausen |
33 |
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*東京大学生産技術研究所
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