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II. コンピュータ間における電子交換合意形成
 従来のEDIにおいては、EDIを始めるにあたって、取引当事者双方がお互いのEDIインターフェイスを調整し、相互のアプリケーションが齟齬なく連動できるようにするため、相当の時間と労力を費やして電子取引のための接続仕様定義を行ってきた。
 ebXMLにおいては、その電子取引の合意形成の方法をルール化するとともに、それをシステムが認識でき、かつ合意形成そのものをシステム間で自動化できる仕組みを提供している。それが、CPP(コラボレーション・プロトコル・プロファイル)/CPA(コラボレーション・プロトコル・アグリーメント)技術仕様である。
 
1. 企業の電子取引仕様
 電子ビジネスの実施プロセスを支援するため、取引参加者は、自社システムが対応するビジネスプロセスに関する情報を、ビジネス情報交換能力に関する技術的な実装の詳細と併せて取引相手先に提示する。また、業界で共用できるレジストリサービスがあれば、当該情報をレジストリ上に公開する。これは、コラボレーションプロトコルプロファイル(CPP)を使用することによって達成される。CPPとは、取引参加者が、自社システムが対応するビジネスプロセスと取引サービスインターフェイスの要件を、ebXMLに準拠している他の全ての取引参加者が理解できる形に表現する文書である。
 CPPには取引参加者に関する必須の情報を含み、その情報は、連絡情報、産業分類、対応するビジネスプロセス、インターフェイス要件、メッセージ取扱サービス要件などを含む。CPPはその他にも、セキュリティの情報や、実装に関する情報を含む。ebXML準拠の取引参加者はそれぞれ、ebXML準拠のレジストリサービスの中で各自のCPPを登録することが望ましい。レジストリサービスでは、(1)取引相手の発見(2)他の取引参加者が対応しているビジネスプロセスの探索の実施ができる。
 CPPは取引参加者によってサポートされる1つ以上のビジネスプロセスの参照が必要とされる。CPPは、ビジネスプロセスの中でユーザが引き受けることのできる役割を参照しなければならない。“購入”ビジネスプロセスにおける“売手”と“買手”の概念は、役割の一例である。
 
2. 企業間電子取引合意
 コラボレーションプロトコルアグリーメント(CPA)と呼ばれるシステム上の取引合意は、取引当事者双方のCPPの共通部分から導き出される。CPAは、ebXMLによる取引業務を行いたい複数取引参加者間で交わされる、システムが理解できる正式合意である。
 CPAでは、(1)メッセージ取扱サービス(2)複数の取引参加者間で合意されるビジネスプロセス要件を記述する。ebXMLは概念上、部分集合を絞り込んで電子ビジネスを実行するCPAに至る3つの見方がある。一番外側は取引参加者が対応できる能力のすべてに関係し、取引参加者が選択できる実際に対応可能な部分集合を含んでいる。CPAの中には、メッセージ取扱サービスインターフェイスの要件のほかに、電子ビジネスを行うにあたって相互に合意されたビジネスプロセスに関する技術的な実装の詳細を含まなければならない。
 
図1 CPAの対応レベル
 
 取引コラボレーションは、ebXML取引参加者が主張できる第1位のサポート要請項目である。取引コラボレーションに関する“サポートの要請”は、ebXMLレジストリやその他のサービスなど、ディレクトリサービスでの公開のために定義される独自のプロファイルによって特定される。図2は、ebXMLの中でのコラボレーションプロトコル合意書の範囲である。
 
図2−CPAの範囲
 
 CPAは、取引参加者が利用する取引サービスインターフェイスを決定付け、取り決めを実行しようとする全取引参加者によって合意される一連のパラメータによって取引サービスインターフェイスを制約する。
 CPAは、取引参加者の能力(CPP)を実行するもの(CPA)に絞り込む相互交渉の結果である。CPAはCPPの探索・検索段階の後に協議され、基本的には、複数の取引参加者がビジネス情報交換にあたって使用に合意するメッセージ取扱サービスとビジネスプロセスの関係情報の骨格である。
 ebXMLの最終目標は、完全に自動化されたCPAの生成である。この目標を達成するため、CPA交渉プロセスのための正式な方法論を明確化する必要がある。







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