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4.4.5 結言
 
4.4.5.1 成果の概要
(1)簡易試験
 煙火に対する国連試験の簡易試験方法として「小薬量殉爆試験」を煙火玉(3〜5号玉)で行った。比較的小さな煙火玉を試料として試験を行ったが、殉爆するものも確認された。また、5号玉までの煙火玉は検査所の試験施設にて実施可能であることが分かった。
 「小薬量殉爆試験」は、国連試験(6(a)、6(b)試験)を想定したものである。6(a)、6(b)試験では「大量爆発」であるか否かが判定される。今回の試験では各試料、各条件につき1回ずつ試験を行ったが、国連試験は3回実施する。よって、小薬量殉爆試験についても「3回」以上実施するのが適当であると考えられる。今回の試験結果から現時点では以下のことが言える。
(1)試料2個の試験にて1回も殉爆しないものは大量爆発しない。
 (危険区分1.1ではない)
(2)試料2個の試験にて1回でも殉爆したものは大量爆発となる可能性がある。
 (危険区分1.1候補)
(3)試行回数についてはさらに検討が必要である。
 
 煙火に対する国連試験では、6(c)試験の実施により危険区分が判定される。煙火玉が開発した際には、今回試料として用いた最も小さい3号玉においても星が燃焼しながら半径約30mの範囲に飛散する。6(c)試験の判定基準では、危険区分1.3の判定基準のひとつに「製品から飛び出した燃焼している飛散物が包装品の縁から15mより遠くへ飛散した場合」があり、煙火玉の危険区分が1.4となる可能性は低い。従って、煙火玉の危険区分は1.1〜1.3の範囲であることが推測される。そのため「飛散内容の検討試験」では、煙火玉の開発に伴う証拠スクリーンへのダメージ(主に貫通孔)を評価する試験方法が重要となる。
 これらのことより試料数2個の小薬量殉爆試験でもスクリーニング機能があることが分かったが、試行回数を明確にすることが必要である。
 
(2)殉爆メカニズムの解明
 煙火玉の殉爆メカニズム解明のため、煙火玉に圧力センサを取付け圧力計測試験を行った。今回初めてこれだけの多種類の煙火玉について圧力計測が行われ、非常に貴重なデータが得られた。
 
 3号〜5号の煙火玉を試料とした試験から次の結果が得られた。
(1)煙火の最大発生圧力は3号玉で約6〜7MPa、4号玉では約18.5MPa、5号玉は約22MPaであり、概して割薬量に依存すると思われる。
(2)煙火玉の殉爆と計測された時間−圧力曲線のピーク圧には関係があると思われる。
(3)時間−圧力曲線に肩の部分を有するものが見られ、この部分は煙火玉の開発に相当する。
(4)殉爆しない場合も、受爆玉内部では鋭いピークと緩やかな圧力上が組み合わされた圧力変化が確認された。鋭いピークは起爆玉の開発に伴い発生した衝撃波または圧力波ではないかと思われる。
(5)殉爆を起こした受爆玉の破片の変形痕から、受爆玉は起爆玉の開発時に発生する圧力によって変形後、開発するものと思われる。
 
 5号玉までの大きさの煙火玉では、開発時に発生する圧力に薬量効果があり、発生圧力が高い方が受爆玉の殉爆(発火)に至る可能性が高い。殉爆メカニズムの解明は、殉爆する場合の受爆玉の内部圧力計測を待つしかないが、起爆玉の開発時に発生するある程度以上の強い圧力波あるいは衝撃波が受爆玉に入り玉内部で星や割薬など多数の発火ポイントから発火するものと推測される。
 
4.4.5.2 今後の課題
 平成14年度は、「小薬量殉爆試験」と「圧力計測試験」を主に行ったが、次の課題があると考える。
(1)煙火玉の殉爆メカニズムの解明
(2)殉爆する場合の受爆玉内部の圧力計測
(3)小薬量殉爆試験がスクリーニング試験として有効であることの検証
(4)殉爆を防ぐための包装材、包装方法についての検討
(5)飛散内容の検討試験
 また、試験技術としては次の課題が残った。
・試料煙火玉に応じた圧力センサ保護具及びセンサケーブル保護方法の開発
・流通する完成品の煙火玉に後から取付け可能である圧力センサ取付具の開発
 
以上
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図1(a) 煙火玉(蝶々以外)の構造(左)
図1(b) 煙火玉(蝶々)の構造(右)
 
 
図2 小薬量殉爆試験 試料の設置状況
 
 
図3 圧力センサの煙火玉への設置状況
 
 
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図4 圧力計測システム







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