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 4.3.4 考察
 
4.3.4.1 爆燃性
 爆燃性の国連評価試験としては、テストシリーズCの試験であるタイム/プレッシャー試験および爆燃性試験を比較対照とがある。今回は、密閉型爆燃製試験の問題点であった、再現性の問題と、爆燃製試験結果の再現、即ち、線燃焼速度の推定の可能性について検討を行った。
(1)小型爆燃性試験結果との比較
 前年度試みた、小型爆燃性試験結果は、必ずしもデータの再現性が良くなく、特に最大圧力発生速度については、飛びぬけて大きい値が出ることも合って、試験法自体の検討が必要と思われた。解析法による問題の可能性も考慮し、解析法の修正も試みたが、大きな改善は見られなかった。
 今回は、試料容器として、円筒形のセルを用いることで、再現性の改善と、線燃焼速度の推定の可能性について検討を行った。
 予備的検討の結果、最大圧力発生速度に関しては、小型爆燃性試験と同様に、データ処理の仕方に大きく依存する可能性が懸念されることが確認されたのに対し、時間-圧力曲線を見て、取捨選択を行えば、特異データは排除できるものと考えられた。この取捨選択を容易にする手段として、得られた時間ー圧力曲線のスムージングを試みた。スムージングは、9点平均、19点平均、29点平均で行い、オリジナルの曲線と比較検討したが、定性的には、29ポイントが、ピークトップの形状を損ねることなく、かつ滑らかになることが確認されたので、以後の圧力発生速度の算出には、全て29点平均のデータを用いた。圧力発生速度に関しては、最大圧力発生速度よりも、平均速度を採用した方がバラツキが抑えられると考え、圧力上昇の0%-100%、10%-90%、20%-80%、30%-70%間の平均速度をそれぞれ計算し、比較検討を行った。
 まず、平均速度の算出結果では、0%-100%、10%-90%、20%-80%、30%-70%の順番に、速度が大きくなり、同時にバラツキも大きくなる傾向が見られた。しかしながら、0%-100%では、圧力の立ち上がりの時間および、圧力のピークトップの時間の決定が難しいため、算出結果としては、10%-90%の平均速度を採用するのが望ましいものと考えた。今後は、さらにデータのバラツキを少なくするため、測定操作方法および条件の標準化を行うことが重要と考えられる。
 また、試料量の違いによる、燃焼速度の違い、および、試料容器の違いによる燃焼速度の違い、ともに差が少なく、さらにその違いに一定の傾向が見られないことが確認された。また、燃焼継続時間と試料量との間には、ある程度の相関が見られた。このことから、この装置を用いての線燃焼速度の推定は、十分に可能性があるものと思われる。
 
4.3.4.2 スクリーニングシステム
 これまでに、C80熱量・圧力測定装置による、熱量・圧力発生挙動と小型爆燃性試験装置による圧力発生挙動と爆燃および爆発威力に関する標準試験方法との比較を行い、主として爆燃試験、爆発威力試験についてのスクリーニング可能性について検討している。
 スクリーニング試験は、本来、標準試験の代替ではなく、標準試験の実施頻度を減らすための篩い分けとしての意味が大きいため、標準試験結果との比較において、「スクリーニング試験結果から、換算式を使用して、標準試験結果を精度良く予測する」というような、高度な相関性を有することは、理想ではあるが、必ずしも要求されるものではない。
 それよりも、簡易試験法で判定が可能な範囲を十分に把握して、標準試験の回数を減らす目的での適用性を確認すること、および、分類スキーム全体を見渡して、スクリーニング化の可能性を考えることが必要と考えられる。
4.3.5 結言
 
 国連勧告区分4.1自己反応性物質および区分5.2有機過酸化物の国連基準輸送要件判定において、「爆轟を伝播するか」、「爆燃を伝播するか」、「爆発威力はどの程度か」に該当する試験法のうち、ストシリーズ C :爆燃性試験について、密閉型爆燃性試験によるスクリーニング化について検討を行った。
 その結果、円筒形セルを用いた密閉型爆燃性試験では、小型爆燃性試験に比較して、バラツキの少ない結果が得られることがわかり、また、線燃焼速度の推定も可能と考えられ、スクリーニング化に向けて、更に検討を加える価値があるものと思われた。
 
謝辞
 本調査研究実施にあたって、ご助言を頂きました危険性評価委員各位、このような機会を与えて頂きました(社)日本海事検定協会、および資金援助を頂きました(財)日本財団に感謝の意を表します。
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図1-1 自己反応性物質および有機化酸化物分類スキーム(1)
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図1-2 自己反応性物質および有機化酸化物分類スキーム(2)







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