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4.2.4 考 察
 
4.2.4.1 昇温速度が測定値に与える影響
 昇温速度が速いと電気炉温度と試料温度の熱遅れ及び温度分布に差を生じる等の意見があるが、分解速度の緩やかな物質では、2.5K/minでは測定値が低下する傾向にあり、測定時間等を考えると、本測定での条件である昇温速度10K/min が有益との結果を得た。昇温速度によって測定値が変動する物質もあるので判定結果に及ぼす影響が大きいと思われる。昇温速度については今後更に調査して決定する必要がある。
 
4.2.4.2 サンプリング取り込み速度が測定値に与える影響
 BPOやBronopolのような、分解速度が早く圧力上昇速度の高い物質では、サンプリング速度の差により測定値に影響があることが認められた。最大圧力に差は認められないが、サンプリング間隔の短い方が最大圧力上昇速度が高い値を示し、サンプリング速度1msecが推奨出来ると考える。
 
4.2.4.3 圧力センサーの径の差による空間部の影響
 圧力センサータイプにおける径の相違による影響調査では、空間部、継ぎ手部及び圧力導管からセンサーへの広がり幅等による影響はそれ程認められなかった。各物質の圧力上昇速度に対して圧力センサーの径の差による空間部の影響は無視出来ると考えられ、若干の径の相違に影響されず再現性の良い測定値が得られることが確認された。
 この結果で、圧力センサー選択の幅が広がったと考える。
 
4.2.4.4 従来試験方法との比較
 従来試験方法との比較では、最大圧力上昇速度が200MPa/sec付近以上になると、Mediumの上位ランク径に属するか、又はViolentに属する判定となり相関性が認められた。
 特にケーネン試験との相関性が良く、MCPVTの電気炉加熱の状況とケーネン試験の4方向からのバーナー加熱の状況が類似しているからと考える。
 定量値での判定を試みる本測定法が有効であることが確認されたと考える。
4.2.5 結言
 
4.2.5.1 成果の概要
(1)圧力試験容器、データの取り込み方法、解析条件等の統一により国内クロスチェック体制が整い、整合性のあるデータが得られるようになった。
(2)OECD-IGUSワーキンググループミーティングで提案された試料と測定条件の調査とデータ収集により、検討目的である国連ラウンドロビン試験に対応出来る機器整備と試験手順の習熟が計られた。
(3)MCPVTの試験結果に与える昇温速度の影響は大きい。
 速度が大きくなる程、電気炉温度と試料温度の熱遅れ及び温度分布に差が生じることになるので昇温速度の決定は重要課題である。
(4)サンプリング取り込み速度については1msecが推奨出来る。
(5)本試験装置においては圧力センサーの径の差による空間部の影響は無視出来る。
(6)従来試験方法とMCPVT圧力容器試験を比較した場合、特にケーネン試験に対して良い相関性が認められた。
 
4.2.5.2 今後の課題
 海外、特にヨーロッパにおける圧力容器試験の昇温速度はこれが速いと電気炉温度と試料温度の熱遅れ及び温度分布に差を生じるため2.5K/minが推奨されている。
 MCPVT圧力容器試験を国連に提案するためには昇温速度2.5K/minの条件でラウンドロビン試験用試料のデータを採取する必要がある。
 
謝辞
 本研究は2年目を終了して大きな成果を上げたと思っております。
 危険性評価委員会の各委員の方々から多くの御助言を頂きましたことに厚く御礼申し上げます。また、試験の機会を与えて頂きました消防研究所及び社団法人日本海事検定協会、日本財団に厚く御礼申し上げます。







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