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あとがき
 一九八一年は国際障害者年にあたる年でした。福祉を学ばせて頂いている柏朋会(会長、寛仁親王殿下)の例会で、身体に重度の障害を持つ一人の女性から、「就職したいがとてもむずかしい」「仕事がしたい」「仕事場が欲しい」との発言があり、それが私の心をとらえ、一九八三年六月一日、発言者の小高恵子さんと現藍ハウス(自主運営)の六帖一間から二人で歩き始めました。「仕事を持って世界へ出よう」「ゆるぎないものを持とう」全くの無から藍を選び、学び、彼女の夢と希望を確実に形にして実現して歩いて来ました。
 二年後、ニューヨーク・カーネギーホールの舞台衣装製作依頼の仕事があり、障害が異なる三人の人たちが衣装を作り、その晴れの舞台も製作者と一緒に見て感動を分かちあったのが、世界への発表の第一歩でもありました。藍工房に集まって来る障害を持つ方々の夢を、ひとつひとつ実現化して歩いて、それが藍工房グループの道になりつつある今日です。
 その夢や希望は、小さなものから大きなものまでテーマはさまざまです。時とじて「ウーン」とうなるような課題も起こって来るが、それもまた楽しい努力目標でもありました。ワクワクドキドキハラハラの日々の連続。綱渡りの資金・運営。その最たるものがアイコウボウ・USAでした。
 十三年前、私達十人(障害者五名、ボランティア五名)が「ツー・オー・ファイブ(205)」というモーテルに泊り込み、来る日も来る日も、私達の家を買うために、スタッフとしてアメリカで勤務する二十歳の横沢尚子さんの運転で走り廻っていた時のことを、今でもはっきりと憶えています。
 辞書を頼りにジィーン・レリーさんと各銀行に借り入れをお願いして廻ったこと。スプーン、皿、ベッドetc. 生活用品をご近所から貸していただいたこと。オレゴン州、ワシントン州の名所にドライバーとして協力して下さった方々。ベッドメーキングやオーブン料理の講師を、ボランティアで近所の方々が手を貸して支えて下さった日々。沖縄在住の不登校の生徒の夢をなんとか叶えるため、当地の教育委員会の扉を叩き、マウンテングビュー・ハイスクールの入学に漕ぎつけたこと。短大クラークカレッジの卒業生もアイコウボウ・USAから何人も出し、その卒業式に居合わせた障害者の方々と参列したこと。そんなことが懐かしく思い出されます。
 ポートランド国際空港は、アメリカで一番厳しいイミグレーション(入国管理)で有名でした。私達関係者も三名入国を許されず、出迎えの人と会うことも許されず、次の便で帰国を命ぜられたことが有りました。
 何も悪いことをしていないのに、福祉とか文化とかはうさん臭く見られました。私も別室に移され、「お前は何者だ?」「なぜ名前の違う障害者の人を連れているのか?」と何度もつるしあげにあいました。
 ほとんどをボランティアの手にゆだねての歳月を、ポートランドの歴代の担当領事は温かいまなざしで見守って下さり、励ましのためお寿司のレストランやコンサートにご招待下さったこともありました。
 ポートランド総領事、副島豊次郎氏に昨年暮ご挨拶に伺った折、当地の連邦移民局のトップが替わって、入国審査がずいぶん緩和されたことをお話し下さいましたが、この四月からはデルタ航空の直行便そのものが廃止となり、参加下さる方々は乗り継ぎの不便さを余儀なくされています。これまで通り参加者の希望に添って、ハワイ、ニューヨーク、ロスアンゼルス、サンフランシスコと大都会を楽しんでポートランドヘと思っています。
 どこを見廻しても、体験して下さったメンバーさんの姿がありありと浮かんで来ます。長期、短期と自費でボランティアさんが支えて下さった日々。ボランティアさん、スタッフに過重な仕事を押しつけざるを得なかった日々。暮らしを共にする上で、一度ギクシャクした人間関係に逃げ場のない日々。時として独善的に進めてゆく私に対して、周囲を怒らせることも多分にありました。
 自主運営の苦しさのなか、運営、福祉、文化をどう調和させ、維持発展させてゆくのか苦悩していた時、日本財団の三年間のご支援は、まさに恵みの雨でした。そのおかげで活動のまとめが出来、これからの活動の足元を見直す第二の出発点となる機会をいただけたことへの感謝を申し上げますと共に、外部からの構成で評価をまとめて下さった、「アイコウボウ・USA評価委員会」の各専門の先生方にお礼申し上げます。
 藍工房を設立して十八年、アイコウボウ・USAがもう十三年になります。こうしてまとめの本が出来たことを、これまで関わっていただいた多くの方々に感謝すると共に、新たにどなたかの目にふれ、何かのお役に立てることを願っています。
 すべての皆様に感謝をこめて。そして、三十代癌を病み、三度の再発(日本赤十字社医療センター)を乗りこえ、命ある今に感謝をこめて。
 
 二〇〇一年 五月三十一日 USAにて
NPO藍工房 理事長 竹ノ内睦子







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