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イッツ・ア・ファッショナブル・ライフ
今年もファッションショーの季節がやって来た。ファッションショー−それは、バンクーバー市主催で毎年行なわれているイベントで、アイコウボウは昨年から招待を受けている。
今年、アイコウボウからの出場予定者は四人。昨年も出場した、知代ちゃんと宏美ちゃん。それに加えて、今年は遠藤くんと岩谷くんが出場することになった。
まず私たちはファッションショーに先立って、バンクーバー市長から市議会への招待を受けた。ファッションショーへの出場を市議会に報告するためである。
市議会ではいろいろな議題が討議されていた。そして、会議も終盤になって、ファッションショーの話題になった。ファッションショーに出場する四人がマイクの後ろに並ぶ。まず、英語が話せる知代ちゃんがマイクの前に立ち、市議会への招待に感謝を述べ、ファッションショーに出場することを報告した。続いて、宏美ちゃん、遠藤くん、岩谷くんもマイクに立ち、それぞれ自己紹介をした。会場からは大きな拍手が上がり、私たちを暖かく迎えてくれた。
翌日、会場となるループキー・シニア・センターで、ファッションショーのリハーサルがあった。
ファッションショーはいろいろな部門に分かれていて、アイコウボウの四人は、それぞれ別の部門に出場することになっていた。知代ちゃんと宏美ちゃんは、イブニングドレス部門。遠藤くんはカジュアル部門。岩谷くんはスポーツウェア部門である。
リハーサルはそれぞれの部門に別れて行なわれる。知代ちゃん以外は英語が話せないので、ついていくのが大変である。それでもなんとかコミュニケーションを取り、手順を頭に入れていく。遠藤くんのカジュアル部門の演出がなかなか凝っていて、何度も繰り返し練習をしていた。
さらにその翌日、当日着る衣装の衣装合わせが行なわれた。
ファッションショーで使用する衣装は、バンクーバー市内にあるいくつかのお店がご厚意で提供して下さっている。各部門ごとに扱うお店が違うため、四人はそれぞれの部門別に分かれ、衣装選びを行なう。
それぞれの店内には様々なドレスや洋服が用意されていて、その中から好きなものを選ぶことが出来る。しかし、他の人と同じデザインのものは選べない。そのへんは早い者勝ちになってくる。男性二名はあっさりしたものだが、女性二名はファッションショーに命をかけている。当然、衣装選びにも力が入る。
本番まであと三日。それを思うと胸が高鳴る四人であった。
さて、ついに九月二十五日、ファッションショー当日の朝がやって来た。ファッションショーは夜の七時から。しかし、モデルたちは朝から忙しい。髪をセットするために、まず美容院に行かなければならない。
髪のセットはバンクーバー市が指定した美容院で行なう。つまり、ファッションショーに出場するすべての人たちが、同じお店でセットをするということである。当然込み合う。そこで、私たちは九時の開店に合わせて美容院に駆け込んだ。
さて、ここでプロの美容師さんに髪をセットしてもらうわけだが、なにぶん英語が分からないため、なかなか要領を得ない。男性二名は髪が短いので、髪型のバリエーションも少ない。遠藤くんは髪を立たせ、岩谷くんはオールバックということで落ち着いた。問題は女性陣。ああでもない、こうでもないと、時間をかけてようやくセットが終わったが、結局二人ともイメージ通りにはいかず、いきなり朝からしょげ気味である。
美容院を出ると、ちょっと早めの昼食。お昼前から最後のリハーサルが始まるためである。泣いても笑っても今日で最後。リハーサルにも熱が入る。
ところで遠藤くんと岩谷くん、仲のいい二人だが、性格面では好対照。それが舞台の上でも現れる。活発で目立ちたがり屋の遠藤くんは、跳んだり跳ねたり、積極的に自分をアピールする。それに対し、真面目な岩谷くんは、あくまでスマート。そつなく無駄なく舞台をこなす。
リハーサルが終わると、知代ちゃんと宏美ちゃんはメイクの時間になる。女性陣二名はここでも時間がかかる。ああでもない、こうでもないと、スタッフのナオコさんに手伝ってもらいながら、どうにかこうにかメイクが完成。またまた早めの夕食を食べた後、ようやく衣装に袖を通す。あとは本番を待つばかり。
時刻は七時、いよいよファッションショーが始まる。
司会のコニーさんがファッションショー開会の挨拶をする。会場が拍手に包まれる。照明が落とされ、音楽が流れ出す。
まずは、子供服部門。小さな子供たちがわらわらと舞台に上がる。みんな司会者の話を聞かず、好き勝手に遊んでいる。
続いて、遠藤くんが出場するカジュアル部門。この部門は演出が凝っていて、出場者は全員客席の後ろから登場する。ファンキーな音楽が流れる中、客席を通り抜けて現れた遠藤くんは、舞台の上に跳び上がり、みごとにポーズを決める。黒いパンツに鮮烈な黄色のシャツが目に眩しい。リハーサルで練習した成果が、あますところなく発揮されたようである。
ファッションショーでのワン・シーン
次は、岩谷くんのスポーツウェア部門。真っ赤なTシャツに黒いパンツのサッカーウェアに身を包んだ岩谷くんが、舞台にさっそうと現れる。
そこであっと驚くことが起こった。岩谷くんが舞台の上で何かのポーズをとっているのである。よく見ると、バッティング・フォームである。なんと岩谷くんは、セントルイス・カージナルスのマーク・マグワイア選手の物まねをしているのである。実は岩谷くん、大の野球好き。特に大リーグの大ファンである。どうやら最初から、このパフォーマンスを考えていたらしい。みんなを驚かせるために、リハーサルではわざと見せずにいたのである。にくいぞ、岩谷。
さてここで、ティーンエイジャー部門が入る。おしゃれな出で立ちの中高生が舞台の上を軽やかに歩いていく。みんな楽しげに自分をアピールしている。
最後はいよいよイブニングドレス部門。知代ちゃんと宏美ちゃんの出番である。
先に登場したのは宏美ちゃん。タキシード姿の男性のエスコートで舞台に現れる。鮮やかな光沢のあるブルーのドレスが、スタイルの良さを強調している。男性からピンクの花を受け取り、晴れやかな笑顔で舞台を歩く。本人がしきりに「気に入らない!」と連発していた髪型も、とてもよく似合っている。
続いて、知代ちゃんの登場である。すそのやや膨らんだブルーのドレスに、同じくブルーのショールをまとって舞台に現れる。男性がピンクの花を差し出す。知代ちゃんは花を受け取ると、男性にエスコートされながら舞台をゆっくりと歩いていく。綺麗にセットされた髪が揺れ、笑顔がこぼれる。
こうしてファッションショーはひと通り終わり、最後に出場者全員で記念撮影が行なわれた。舞台の上は色とりどり。押し合いへし合い、大変な盛り上がりの中、今年のファッションショーは幕を閉じた。
今年もこの模様は、地元ケーブルテレビで放送された。そして、そのテープがテレビ局から出場者全員にプレゼントされた。
毎年恒例のファッションショー。さてさて、来年は誰が出場するのかな?
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