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ハロウィンからクリスマスまで
 十月から十二月にかけてアメリカはお祭り気分になる。ハロウィン、サンクスギビング、そしてクリスマスと大きなイベントがめじろ押しになるのである。
 十月三十一日、といっても日本ではあまりピンとは来ないが、アメリカでは街中がハロウィンで賑わう。
 この日は街に出掛けると、街中のお店がキャンディーやチョコレートを配っている。しかし、これは誰もがもらえるわけではない。お菓子をもらうためにはひとつの資格が必要なのである。その資格とは、「仮装をしていること」である。
 
ハロウィンの仮装で集合
 
 アイコウボウの人たちも、この日のためにみんなそれぞれ衣装を用意する。安楽さんと健くんは魔女、杏ちゃんはシンデレラ、セーラはミツバチ、見帆さんはクマのプーさん、などなど。そうしてみんなで街に出掛ける。
 「トリック・オア・トリート」これが合言葉。「お菓子をくれないと、いたずらしちゃうよ」この一言で誰もがお菓子をくれる。
 街中のお店でお菓子をもらいながらメインストリートを端まで歩いていくと、バトルグラウンド駅では幽霊列車が待っている。ここで約十分間、ハロウィン名物幽霊列車に乗ることが出来る。
 幽霊列車を楽しんだ後は、アイコウボウに戻ってハロウィン・パーティー。アイコウボウの食卓の上では、いつものアレがみんなの帰りを待っている。いつものアレとは、アイコウボウ自家製のパンプキンパイとアルバートソンのサンドイッチである。
 アルバートソンというのは近くのスーパー。毎年そこでサンドイッチを買う。しかし、サンドイッチといってもあなどってはいけない。このサンドイッチ、なんと五フィートもある。五フィートといえば一・五メートル。これを崩さないように車で運び、みんなで切り分けるのである。
 パーティーではみんなで楽しく歌ったり、踊ったり。この日ばかりはちょっと夜更かしがゆるされる。暖かな窓からはいつまでも笑い声が聞こえ、窓の外からはその様子をジャコランタン(カボチャで作ったランプ)が大きな口を開けて笑いながら見ている。これぞアメリカの風物詩である。
 
 さて、ハロウィンが終わり、十一月二十五日のサンクスギビングが終わると、いよいよクリスマスの準備が始まる。
 アイコウボウのクリスマスは飾りつけが凝っている。というのも、ボランティアの見帆さんが大のクリスマス好きだからである。見帆さんがアイコウボウに滞在して今年で五年目。その間、クリスマスの飾りつけはずっと彼女に任されてきた。
 まず見帆さんがするのは、屋根に登って家中に電球をつけること。これは大変な作業である。一人ではとても無理なので、ボランティアの宮前さんの手を借りながら冬の寒空に屋根に登り、長く連なった電球を屋根や壁に取り付けていく。そして、それが終わると家の周りの樹にも同じように電球をつけていく。
 それだけではない。高い樹と樹の間にワイヤーを張り、大きなそりに乗ったサンタさんの人形をぶら下げ、サンタさんが飛んでいるように見せる。ここまで凝ったことをする人はそうそういない。
 家の中はというと、各部屋のドアにリースを飾り、玄関にはひときわ大きなライトつきのリースを取り付ける。
 それから、テーブルクロスをクリスマス用に取り替え、真ん中に天使の形をしたキャンドル台を置き、家中の要所要所にクリスマスのミニチュアセットや雪に見立てたわた、キャンドルなどを置いていく。
 しかし、これらはほんの小手調べ。メインはクリスマスツリーである。
 アメリカではどの家庭も本物のツリーを飾る。本物のもみの木に飾りつけをするのである。
 この時期になると、あちこちのスーパーでツリーが売り出される。しかし、スーパーで売っているのはみんな小さい。大きくて二・五メートルほど。それより大きなものが欲しい場合は自分で切りに行かないといけない。見帆さんは毎年ハイウェイ沿いのツリー屋さんまでチェーンソーを持って出掛けていく。
 昨年までのバンクーバーの家は天井が低かったので三メートル程度のツリーでよかったが、新しい家は天井が高いので六メートルのツリーを買わなければならない。見帆さんは宮前さんといつものツリー屋さんまで出掛け、たっぷり四時間かけてツリーを選び、二人掛りでチェーンソーで切り倒して車に乗せて帰った。
 家に着くと、もちろん玄関からは入らないので、裏のスライディングドアを二枚はずし、みんな総出で引きずり込んで立ち上げた。
 いよいよツリーの飾りつけをするわけだが、ここで見帆さんはうっかりしていたことに気づいた。昨年まではツリーが小さかったので、その分の飾りしかない。大きくなった分飾りが足りないのである。
 そこで思いついたのが白いスプレーを使うこと。白いスプレーを雪のようにツリーに振りまいて、飾りが少ないのをごまかすわけである。何とかカッコがついたところで、仕上げにツリーのてっぺんに天使の人形を立てて出来上がり。
 ちなみにこの天使の人形には意味がある。日本ではツリーのてっぺんに星をつけることも多いが、本当は天使じゃないといけない。なぜなら、この天使が子供たちをずっと見ていて、誰がいい子で誰が悪い子かをサンタさんに知らせるらしい。
 さてこれで準備はOK。あとはクリスマスを待つばかりである。
 
 十二月二十四日の夜はみんな早く寝る。日本では普通イブにクリスマスパーティーをするが、アメリカでは簡単な食事を摂ってさっさと寝てしまう。遅くまで起きているような子には、サンタさんはプレゼントを持ってきてくれないのである。
 もちろん何が欲しいかは、すでにサンタさんに話してある。毎年サンクスギビングが終わると、みんなでサンタクロースに手紙を書く。書いた手紙はノース・ポール(北極)のサンタクロース宛てでポストに投函する。あとは郵便局の人がサンタさんに手紙を届けてくれるのである。
 みんな翌朝を楽しみにし、ワクワクしながら眠りに就く。
 あ、そうそう。暖炉の横にクッキーとミルクを置いておくのを忘れてはいけない。夜の間中働いて、サンタさんもお腹がすくからである。
 
 翌朝はみんな起きるのが早い。いつもはいくら声を掛けてもなかなか起きないメンバーも、この日ばかりは自分で起きてくる。
 まずみんなが発見するのは、それぞれの靴下に入ったたくさんのお菓子。そして、リビングのツリーの下にはサンタさんからのプレゼントが置かれている。もちろん手紙に書いた通りの物が。
 みんなそれぞれサンタさんからのプレゼントを開けて大騒ぎ。そんな中誰かが、暖炉の横に半分食べかけのクッキーとミルクが残っているのを発見する。サンタさんは確かにやって来たのである。もし夜なかに起きている人がいたなら、きっと窓の外から聞こえる鈴の音に気づいたことだろう。
 クリスマス当日はけっこう忙しい。朝からターキーを焼き始めないと夜のパーティーに間に合わない。キッチンはパーティーの準備でてんやわんやなので、朝食も昼食も簡単に済ませる。
 午後からはみんな正装し、教会のミサに出掛ける。教会にはたくさんの人たちが集まっていて、牧師の話を聴いている。そしてミサから戻ると、いよいよクリスマスパーティーが始まる。
 ターキーをメインにテーブルいっぱいに料理が並び、みんなシャンパンで乾杯する。おいしい料理を食べ、サンタさんからもらったプレゼントの話をし、ゲームやトランプをして夜遅くまで過ごす。一年でいちばん楽しい日。クリスマスの夜がこうして更けていく。







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