日本財団 図書館


○欲しい流量
 空堀川の上流部には水がありません。流れが砂ノ川橋まで続くには、200リットル/secほどの水量が欲しいものです。支流である奈良橋川にもう少し流れがあればと思います。最低でも東大和市内で150リットル/sec、東村山市内上流部で150リットル/sec、下流部で50リットル/secほどの水があれば水路は繋がっていくだろうと思います。現在流れている流量は、計算上では生活雑排水が9,500m3、工場排水が4,000m3、合計13,500m3ですが、蒸発量が約35%、浸透量が50%強あると考えられ、現在の3倍、約40,000m3が必要と思われます。
 
水量復活への提言
 空堀川の場合は新しく河道を掘って流路を作り出しています。それも今までの川幅を5倍から8倍以上の大きさに広げる工事です。当然ながら、既に造られている新しい河道に水が流れた場合は相当量の浸透が起こり、浸透量を上回る流量がなければ下流に水は流れません。このことは昔、野火止用水の経験からも明らかなことです。現在の河川工事はこの事態を予想しての漏水対策を講じてはいないようです。
 今までの調査で明らかなように、空堀川に流れている流水は工場排水だけが頼りです。河道は出来ても水の無い水路では、確かに治水上の安全性は高まりますが、本来の河川として何ら環境に配慮のない「地域の人と自然と共生した」川づくりに役立つものではありませんでした。前記の環境基本計画はありますが、市民の立場から次のことを念頭において、2、3提言したいと思います。
川本来の機能とは何なのか、流域連絡会で話し合って見ませんか。
水環境と河川のあり方
「流水の正常な機能の維持」とはどういうものか。
生物多様性と河川環境について、等々このようなことを念頭において。
 
○環境基本計画の全面実施を!
 東京都は「環境基本条例」の規定を踏まえ、分野別に施策目標が定められています。河川については下記の配慮指針が示されています。この指針に沿って実行されることが望まれます。
 この指針が本当に実施に移されれば、深刻な水不足の事態は次第に緩和されると思います。
 配慮の指針は以下のようなものです。
1. 水質汚濁については水質改善の効果ある手法の採用
2. 再生資材の活用
3. 水辺の緑化
4. 河川改修にあわせて緑の保全・創出、水と緑のネットワークの形成
5. 生物多様性に配慮。水辺生物の生息し易い護岸・水深・河床構造等の採用魚道の整備、生物棲息空間の確保
6. 河川水量の回復
7. 多自然型の河川整備、親水性の高い護岸の整備
8. 工事に伴う水質汚濁、騒音防止
等の具体的な事項が約束されています。
 
 石原都知事は「地球人類の存続にかけて」この基本計画を基軸にして実施していくと言明しています。
 私たち市民は、これからの河川工事は上記の指針に基づいてなされるか見守っていく必要があると思います。
 
河川工事への提言
 東京の中小河川はどこの河川でも深刻な水不足に悩んでいます。中でも空堀川の事態はより深刻です。河川工事はさらにこの事態に負荷を与えています。いくらかの配慮によって改善されるのではないでしょうか。
 
空堀川は堀割の河川ですので、溢水のほか護岸が決壊することはありません。護岸工事の材料には間隙の多い石や木材を使い、空石積みの護岸にした方が良いと思います。自然石固着金網工法(ストーンネット工法)等の採用を検討していただきたい。
 
護岸の基礎には、河川工事によって剥がした旧河道のコンクリート廃材を用い、透水性を高める護岸にした方が良い。(工事から発生するコンクリートは再生利用することになっている筈です。)
 
工事によって掘られる新しい河道内には横断する水路があるはずです。このような場所を少し掘り下げ、河道内湧水として確保して欲しい。メリハリのある工事を望みます。
 
地質調査によって、浸透地域の河床には防水対策を講じて欲しいものです。
 
落差工を造る場合は、前述のストーンネット工法を採用してもらいたい。コンクリート構造物より経費も安く、自然により近いものになります。(多自然型工法の採用)
 
流域各市が一体となった雨水浸透対策の実施。
縦割りで、自分たちの縄張り以外は関係ないという姿勢ではなく、プロジェクトチームを作って取り組む等、真剣な対策が望まれます。
 
雨水浸透ますの普及・助成措置の拡大。(現在は東村山市のみ一般への助成を行っている。)
 
流域各市が環境基本計画で具体的な施策の策定実施を。
 
河川管理用道路の浸透対策。メトロレンガから芝生・ウッドチップヘ。
 
河川管理用道路地下に貯留・浸透施設の整備。
 
管理用道路の緑化、高木を積極的採用、環境用水として地下水の注入。
 
河川を横断する地下構造物の設置は間隙を生み出し、浸透の原因になります。許可にあたっては十分な配慮を。
 
JR武蔵野線構内湧水を注入する。
 
雨水浸透対策によって地下水を涵養し、相当分の地下水を汲み上げて上流から流す。
 
廃河川・河道内調節池をビオトープ・貯留施設として活用し、川の正常な機能に活用する。
 
 以上のような対策を早急に検討・実施されるよう、提言いたします。
 
参考文献: 「河川の生態学」沼田真 監修、水野信彦・御勢久衛門共著 築地書館
「やさしい陸水学」飯田貞夫著 文化書房博文社
「東京都環境基本計画」東京都生活文化局広報部 平成14年2月発行
「陸水学」アレキサンダー・J・ホーン/チャールス・R・ゴールドマン著 京都大学学術出版会
「空堀川の流入水の総合調査」空堀川に清流を取り戻す会 平成11年3月発行
「柳瀬川流域水循環マスタープラン−中間とりまとめ」 柳瀬川流域水循環マスタープラン事務局
「東京都建設局北多摩北部建設事務所作成、柳瀬川・空堀川流域連絡会試料」から
 
おわりに
 永い間、空堀川の流量が減ってきているのは、下水道の整備によって生活排水が下水道に流れてしまうためと言われてきました。確かに流量が劇的に減っているのはグラフ(P.21−22)のように流域の下水道化によることは明確です。今回の調査で、河道から地下に浸透している分が流量の50%を超えていることがはっきりしました。
 川に水が流れるためには、漏れない河道を造ることと、雨水を河道内でゆっくり流すことを考えなければなりません。
 今回は日本財団から助成を受けて購入した流速計を使い、中学生と一緒に楽しい測定ができました。浮子を流すことで子どもたちには流れの実態も良く分かったようです。けれど、実際の断面積の測定、その場に応じた面積計算方法が必要です。また流量を調べる方法についても出来るだけ詳しく書きました。これを参考にして[総合学習]の時間で川をテーマに選んだ場合、一つの参考になったらと思います。この流速計を有効に利用して河川環境維持のために大いに役立てようと考えています。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION